株式会社ファイブスターズ アカデミー

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5☆s 講師ブログ

ソニー・ロリンズ

題名は忘れてしまいましたが、倉橋由美子の小説に、「毎日ジャズ喫茶に通っているうちに、『モリタート』のアドリブまですっかり覚えてしまった」という一節がありました。それくらい、ソニー・ロリンズの『サキソフォン・コロッサス』は、空前の大ヒットを記録したアルバムです。当時のジャズ喫茶で、このアルバムがリクエストされなかった日は、一日たりともなかったと言っても過言ではないでしょう。しかし、私はあまり好きではありませんでした。明るすぎるのです。このアルバムの代表作である『モリタート』といい、『セント・トーマス』といい、まるで太陽が燦々と降り注ぐカリブ海の砂浜で、陽気においしいカクテルでも飲んでいるかのよう…

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ルイス親方

最近、世間ではリーダーシップ論について、ずいぶんと喧しい議論が湧き起こっています。リーダーというと、力強くメンバーを牽引していく姿を思い浮かべてしまいますが、本当にそうでしょうか?今回紹介する人物は、チリのコピアポ鉱山の現場監督ルイス・アルベルト・ウルスア、みんなからは「ルイス親方」の愛称で親しまれていた人物です。2010年8月5日、鉱山の落盤事故により、地下700mの避難所に33人の男たちが生き埋めになったことが報道されました。しかし、このニュースが世界中の人々の耳目を集めたのは、その18日後のことです。地表からドリルで穴を開けて調べたところ、なんと全員の生存が確認されたのです。この間、絶望…

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免疫の意味論

自己とは何か?長年、哲学が探し求めていたテーマに、完璧な答えを提示したのは、意外にも「免疫学」でした。多田富男の『免疫の意味論』は、科学者だけでなく文系の人間にも大きな衝撃を与えた書です。特に強烈だったのが、「キメラ」の話でした。キメラと聞いて、その語源となったキマイラを連想した人は、間違いなく文系人間です。キマイラとは、頭がライオンで胴体がヤギ、そして尻尾が毒蛇というギリシャ神話に登場する想像上の動物です。しかし、生物学では想像上の動物ではなく現実のものです。とは言っても、異なる種類の動物の一部分を組み合わせることなんて本当にできるのでしょうか。できます。具体的な例で説明しましょう。まず、ニ…

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サラリーマンの「生きざま」

20代の頃、毎日のように“業務として”連れて行かれた酒の席で、上司が熱く語る先輩達の武勇伝の締めくくりは、いつも決まって「サラリーマンの生きざま」という文句でした。感心したような表情を装いながらも、私は内心辟易していました。なぜなら、その多くは長時間労働の話だったり、朝まで上司の酒に付き合った話だったり、あるいは寝る間を惜しんで資格試験の勉強をした話だったからです。「生きざま」なんて言葉を聞くと、ついつい幕末の志士達を連想してしまう私にとって、それらはあまりにスケールの小さな話に思えてしかたありませんでした。しかし、すぐに私の考えが誤りであることに気付きます。サラリーマンの武勇伝なんて、所詮そ…

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ケニー・ドリュー

木全信の本を読んでいたら、見覚えのある人の名前を見つけました。その人物、木全と同じジャズ・プロデューサーであるKさんと、銀座の泰明小学校近くにある古ぼけたジャズ喫茶で会ったのは、今から5年ほど前の事でした。夜はバーとしてウィスキーを出すその店で、私の隣に座っていたのがKさんでした。私は、酒を飲む時は大抵一人なので、ママが気を遣って紹介してくれたのです。彼は、その世界ではとても有名で、アート・ブレイキーのアパートによく遊びに行っていたという話には、時の経つのも忘れて聞き入ってしまいました。そして何より驚いたのは、日本のクラブなどに出演した時のギャラが、たったの2~3万円だったということです。今と…

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ロバート・ギボン・ジョンソン大佐

1820年9月26日。ニュージャージー州セーレムの郡裁判所前は、黒山の人だかりでごった返していました。ある男の公開自殺を見届けようと集まった観衆は、およそ200人。これだけ人が集まった理由は、公開自殺というだけでなく、一風変わったその手段にありました。なんと、毒性の強い植物の果実をたらふく食べるというのです。当時のアメリカでは、その果実は肺炎の原因とも、胃癌の原因とも言われ、食べるどころか手にとることさえ憚られるほど忌み嫌われていました。地元のバンドがおごそかに葬送曲を奏でる中、駆けつけた男の主治医が必死の形相で翻意を試みます。「止めなさい!その果実をひとつでも口に入れたら最期、泡を吹いて虫垂…

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アポトーシス

アポトーシスという言葉を知ったのは、細胞死研究の第一人者、田沼靖一の書いた『アポトーシスとは何か-死からはじまる生の科学』でした。アポトーシスとは、細胞の自殺のことです。例えばオタマジャクシの尻尾は、成長とともに消えてなくなってしまいます。これは、尻尾を形作っている細胞が、自分の役割が終わる時を知り、自ら死のスイッチを入れるためです。これは人間にも見られます。胎児の手の指には、最初のうちは水掻きがついています。まさに、哺乳類が進化する過程で、水中で生活していた時期があったことの証拠です。しかし、やがてこの水掻きも消えてなくなります。水掻きの細胞が、アポトーシスを起こしたからです。もしアポトーシ…

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ノブレス・オブリージュ

竹内久美子の本で、アラビアヤブチドリのことを読んでいたら、シベリア抑留者のことを思い出しました。以前、石原吉郎の回で紹介しましたが、抑留者たちは毎日の作業地域への行き帰りは5列縦隊となって移動します。そして整列の際には、我先にと真ん中の3列に入ろうとします。なぜなら両端の列にいると、凍りついた雪道でうっかり足を滑らした拍子に、脱走と見做されてロシア兵に射殺されてしまうからです。ですので、ひとたび整列の号令がかかると血眼になって近くにいる弱い者を見つけては、力ずくで外側の列に追いやります。短い時間のうちに被害者と加害者が激しく入れ替わる、と石原は表現していました。今回は、この「列」の話です。竹内…

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作田耕三

経営学の教科書や巷に溢れるビジネス書には、マネジメントの理論やスキルがこれでもかというほど記載されています。間違ったことは何ひとつないはずなのに、日本の職場は相変わらずどこもギスギスしていて、みんな不機嫌に仕事をしているのはなぜでしょう。そんなことを考えながら、土曜日の朝、ぼんやりNHKの『マッサン』を見ていました。ニッカウィスキーの創始者であり、正に“信念の人”竹鶴政孝がモデルというのは知っていましたが、それにしても寿屋(現在のサントリー)の人達も含めて、なぜあんなにも、みんな元気いっぱいなのでしょうか。ドラマだからとは言え、職場はいつも活気に満ち溢れ、まるで毎日がお祭りのような高揚感が伝わ…

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石原吉郎

私の不幸は、ヴィクトール・フランクルより先に、石原吉郎に出会ったことです。名著『夜と霧』を読んでも、『望郷と海』ほどの感銘は受けませんでした。「荒地」派の、スゥイートでセンチメンタルな現代詩を読み漁っていた高校時代、生ぬるい百年の眠りから目覚めるに十分な衝撃を受けたのが石原吉郎でした。その“孤高”としか言いようのない精神の高みは、想像を絶するシベリア抑留体験によってもたらされたものです。隣で寝ていた男が、目が覚めた時にはすでに冷たくなっている。そんな極限状態の毎日で、抑留者たちは、次第に人間としての尊厳を喪失していきます。そして、やがて動物の本能である生への執着のみに傾倒していくのです。抑留者…

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