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村上 徹

戦争か? 食料自給か?

小泉内閣の「痛みを伴う構造改革」の実態が明らかになるにつれ、改革の影の部分について言及する政治家が増えました。格差是正のために地方、とくに農業への支援を積極的にすべきと主張する政治家もいます。そもそも「ばら撒き」以外の何者でもないこの政策が、それなりに説得性を持つのは日本の食料自給率があまりに低いからです。現在の日本は、食卓に上がる食品のかなりの部分を輸入に頼っています。つまり食料自給率はかなり低いのです。ですので、もし戦争や不測の事態がおこった時には、すぐに深刻な食料不足に陥ります。だから、万一の事態に備えて食料生産の担い手である農業を保護しようというのが、この論の趣旨です。一見リスクマネジ…

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歴史という名の法廷

小泉内閣も浜口内閣も、痛みを伴う改革により深刻なデフレに陥ったり、あるいはデフレをさらに悪化させてしまいました。ところが、当時の日本と現在の日本とでは、決定的に異なるところが2つほどあります。ひとつは経常黒字です。優秀な日本製品が世界中で認められているのです。私たちはもっと自信を持ってもいいのではないでしょうか。そしてもうひとつ。それは家計部門の貯蓄額です。当時は、どこの家庭もほとんど貯蓄などできない状態でしたが、日本の貯蓄額は今や1400兆円という天文学的な数字に達しています。問題は、それが一向に消費に向かおうとせず、塩漬けになっていることなのです。まるで、消費を切り詰めて一生懸命貯蓄するこ…

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そしてみんな暗殺された

浜口内閣の悲劇的な結末を述べる前に、この経済政策により何が起こったかを見てみましょう。まず失業者が急増しました。大卒の就職率はなんと40%台でした。また、深刻なデフレにより農産物の価格は1/3にまで落ち込み、農村部では身売りまで行われたといいます。全国各地で労働争議や小作争議が勃発し、右翼ファシストによるテロが続発しました。そして1930年、浜口首相はテロリストに狙撃され致命傷を負い、大蔵大臣の井上準之助もまた暗殺されました。これが「痛み」の内容です。前回お話ししたように、小泉内閣の誕生により治安が劇的に悪化するという私の予想は大きくはずれたのです。ではなぜ小泉内閣のときにはテロが起きなかった…

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小泉内閣と浜口内閣

小泉内閣が誕生したとき、私はある予言をしました。それは『治安が劇的に悪化する』ということでした。たしかに犯罪件数はうなぎのぼりに増え、一方で検挙率は戦後最低となってしまいました。しかし、それでも私の予言は大はずれだったのです。というのは、もっと深刻な事態を予想していたからです。私は、1920年代に小泉首相とまったく同じ経済政策を実行した、浜口雄幸内閣の頃を予想していたからです。まず、当時の時代背景をご説明しましょう。第一次大戦後に訪れた好況はやがてバブルの様相を呈し、1920年には台湾銀行や鈴木商店の破綻によりバブル崩壊を迎えました。そして、銀行の取り付け騒ぎにまで発展したため、日銀は特融を実…

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小泉改革はどこが誤りか

小泉氏以来、政治家はこぞって「改革」「改革」と叫んでいますが、今一度「改革」の意味を考えてみる必要があります。「改革」とは一体何のことを言い、それにより私たちはどんな恩恵を受け、私たちの生活はどんな風に豊かになったのでしょうか。誰に聞いても、みな口をつぐんでしまいます。ただ、はっきり発言する人々がいます。それは地方に生活する人たちですが、彼らの評価は非常にきびしいものです。彼らは、はっきりと「小泉改革により生活は悪くなった」と言います。公共事業の中止により、まず雇用が失われました。そして、規制緩和による価格競争の激化により、賃金水準も低下しました。今や、タクシー・ドライバーの年収が100万円台…

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「改革」のどこが誤りか

まず、企業にとって小泉改革がどのような影響を与えたか見てみましょう。新規参入を認めて業界の競争を激化させると、一体どのようなことが起こるのでしょうか。新規参入企業が増えて競争が激化し出すと、まず、価格が焦点になりました。世の中は将来不安から、少しでも安いものを求める風潮にありましたので、今までより安い品物が受け入れられました。すると、既存企業もそれに対抗するため、徹底的なコストダウンに取り組まざるを得ませんでした。企業コストの最たるものは、もちろん人件費です。この小泉改革をきっかけにして、世の中の企業はリストラ一色になりました。では、つぎに、もうひとつの改革である、公共事業について見てみましょ…

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小泉さんが学生だったら・・・

小泉さん以来、政治のキーワードは「改革」になってしまった感があります。当時の小泉首相は、バブル崩壊後なお低迷が続く日本経済に対して、「痛みを伴う構造改革」をテーマに掲げました。構造改革というのは、業界ごとの規制を撤廃し、新規参入をしやすくしたことです。小泉さんの論に従えば、このような新規参入業者がもたらす競争こそが、景気を回復させる鍵になるということでした。だから彼は自信満々にこう言い放ったのです。「改革なくして成長なし」はたして、彼の主張は正しかったのでしょうか。経済学的には、完全な誤りでした。もし彼が、経済学部の学生なら、彼の答案はこのように直されていたことでしょう。「成長なくして改革なし…

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人々はなぜ貯蓄に励むのか?

少し公共事業のことに話しがそれてしまいました。この辺で本題に戻して、なぜ人々が貯蓄に励むのかについてみていきましょう。問題となるのは90年代後半、小渕内閣が大規模な財政出動をしたにも関わらず、その効果がほとんど見られなかったことです。これは様々な論文で、乗数効果が小さかったことが検証されています。つまり、人々が財布のヒモを固く締めて貯蓄に励んだということです。では、なぜ、このとき人々は財布のヒモを固く締めたのでしょうか?私の答えは『不安』です。大銀行の破綻が相次ぎ、人々はいつリストラされるかわからないという恐怖に襲われていました。年金生活者は、支給水準が引き下げられるのではないかという強い懸念…

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でも、やっぱりムダな工事は・・・

前回、「乗数効果」を分かりやすく解説しました。このとき、人々があまり貯蓄せず、どんどんお金を使ってくれる人ばかりだと乗数効果は大きくなります。専門的に言いますと、「乗数は限界貯蓄性向の逆数」と定義されていますので、貯蓄に励む人が多いほど乗数は小さくなり、経済効果は期待できません。ただ、だからムダな工事をどんどん発注しろと言っているわけではありません。乗数効果だけに期待する公共事業は、経済政策としてはやはり間違っているからです。なぜなら、それだったら公共事業を行わずに、労働者に給料相当分を「施し」として手渡しても同じだからです。「ムダな工事」でもある程度は経済効果はありますが、一番いいのは「ムダ…

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穴を掘って埋め戻す工事でも意味がある

穴を掘ってすぐに埋め戻すような公共事業でもムダではありません。なぜかというと、「乗数効果」というものが期待できるからです。いま、国から道路工事の仕事が発注されたとしましょう。工事業者はその仕事を請け負って、国から工事代金を受け取ります。この工事代金は、給料として労働者に支払われます。すると、彼らは夜になると町に出かけ、毎晩焼鳥屋で散財したとしましょう。焼鳥屋は儲かります。焼鳥屋のおかみは次の休日にデパートへ出かけ、欲しかった洋服をまとめ買いします。するとデパートが儲かり・・・・昔から「金は天下の回りもの」というように、このようにお金が社会を駆け巡ります。つまり、国から工事業者に支払われたお金が…

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