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村上 徹

エモーショナル・ティア(2)

前回は、「泣くとすっきりするのはなぜ?」ということについて、涙の成分にコルチゾールという抗ストレスホルモンが含まれている話をしました。でも、他にもいろいろな物質が含まれているのです。今回は、エンケファリンについてお話しましょう。エンケファリンとは、脳内麻薬のひとつです。脳内麻薬と言えば、β(ベータ)-エンドルフィンというのが有名ですよね。昔、春山茂雄氏のベストセラー本で知った方も多いと思います。まず、脳内麻薬から説明しましょう。末期ガンの痛みに耐えられない患者などに、モルヒネを投与をすることはよく知られています。モルヒネが効くのは、脳の中にモルヒネを受け入れる受容体という受け皿のようなものがあ…

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エモーショナル・ティア(1)

前回のセロトニンのお話で、感動の涙を流すのは人間だけだとお話しました。私たちは瞬きするたびに少量の涙を流して、目を保護しています。これは、生理現象として流す涙です。一方、感動したり、悲しんで流す涙は情動に基づくものとして「エモーショナル・ティア」といいます。最近の研究で、エモーショナル・ティアの成分が、生理的な涙とは違うことがわかってきました。まず、コルチゾール等の抗ストレス・ホルモンが含まれることが分かっています。抗ストレス・ホルモンとは、ストレス刺激にさらされたときに「負けるな!」とばかりに体を元気づけようとして脳が分泌を指令するものです。ステロイドなどもこの仲間です。たしかに、短期的には…

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幸せホルモン(7)

さあ、いよいよセロトニンシリーズの最終回です。セロトニンがドバドバ出れば、幸せになれることはわかりましたが、ではどうやって出したらいいのでしょう。以前お話しましたように、セロトニンの前駆体であるトリプトファンを含む食品を摂っても、脳の中には行かないということでした。今回のネタ元は、有田秀穂氏と中川一朗氏の共著「『セロトニン脳』健康法」(講談社)です。セロトニンはリズム運動によって分泌されます。ですので、ガムやスルメイカをかんだりするだけである程度出るそうです。昔、「幸福の黄色いハンカチ」という映画がありましたが、「幸せのスルメイカ」という映画ができそうですね。こんなことをテレビの情報番組で取り…

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幸せホルモン(6)

さあ、このシリーズもいよいよ終わりに近づいてきました。このシリーズの第1回目で、セロトニンは幸福感など様々なものに関係していると言いました。その秘密についてお話しましょう。ネタ元は、高田明和氏の「『うつ』依存を明るい思考で治す本」(講談社)です。セロトニンの受容体は、1A、2A、2Cの3種類あります。1Aは、前頭葉、扁桃体、海馬などに分布し、主に精神の安定に関係しているそうです。2Aは、帯状回に分布し、うつの進行に関与していると思われます。2Cは、視床下部に分布し、満腹感と関係があるそうです。この3つのうち、どこの受容体の感受性が高いかは個人差があるそうです。だから、セロトニンが増えても、どの…

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幸せホルモン(5)

幸せを感じるホルモン「セロトニン」が不足すると、キレやすくなるというお話の続きです。今回のネタ元は、田中冨久子氏の「脳とこころのしくみ」(アスペクト)です。セロトニンは、抑制神経系に働く伝達物質なので、攻撃性を抑制するという話でした。そもそも、この攻撃性ということですが、田中氏はドーパミンが関与していると指摘しています。ドーパミンは快感を感じるホルモンですが、過ぎたるは及ばざるがごとしというとおり、出すぎはよくないのです。脳の中の扁桃体で分泌されるドーパミン量を調べたところ、オスのラットはメスの2倍以上でした。だから、オスラットは小さなストレスで攻撃的になるというのが氏の説です。ということは、…

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幸せホルモン(4)

さあ、幸福のホルモン「セロトニン」の第4回目です。前回同様、ネタ元は有田秀穂氏の「セロトニン欠乏脳」(生活人新書)からです。セロトニンが欠乏すると、うつ的傾向になることはお話しました。しかし、なんとキレやすくなったりもするらしいのです。実験用のネズミには2種類ありますが、体の大きいほうがラットで、小さいのはマウスです。普段は、この2種類を同じ飼育箱に入れても、仲良く暮らしています。ところが、大型のラットのセロトニン神経を破壊して、その飼育箱に小型のマウスを入れてみます。すると、なんとラットは、マウスを殺して食べてしまったというではありませんか。話は少し脱線しますが、この行動はラットにマリファナ…

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幸せホルモン(3)

あなたの顔は引き締まっていますか?今回のネタは、セロトニン研究の第一人者、東邦大学の有田秀穂氏の「セロトニン欠乏脳」(生活人新書)からです。顔に締まりがあるとか、ないとか良く言いますが、もともと地球には重力が存在するため、ほうっておくと私たちの顔は締まりなくたれ下がってしまうのです。それを食い止めているのは、顔の抗重力筋です。この筋肉が興奮すると緊張が高まり、顔つきに締まりがでてきます。この興奮をつかさどっているのが脊髄の運動神経で、その運動神経を支配しているのはセロトニン神経です。つまり、セロトニン神経の活性が下がると、顔つきが締まりがなくなり、姿勢も崩れてだらしなくなるというわけです。とこ…

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幸せホルモン(2)

幸福のホルモン「セロトニン」の第二回です。セロトニンが注目されるようになったのは、うつ病で悩む人が増えたことと関係があります。と言うのは、うつ病の人の脳内では、セロトニンの量が少ないことがわかったからです。現在、うつ病への最も有効な薬はSSRIというタイプの薬ですが、これは脳の中のセロトニン量を増やす働きをします。これはサルでも確認されています。ボスザルはセロトニン濃度が高いそうです。しかし、いったん失脚すると濃度は低下します。ところが、ボスに復活すると、また高くなるそうです。母ザルで見てみましょう。濃度の高い母ザルは、子どもをしっかり抱いています。しかし、低い母ザルは行動が気ままで、自分の子…

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幸せホルモン(1)

快感を感じるホルモンはドーパミンでしたね。今回は、幸福感を感じるホルモン「セロトニン」のお話です。脳内の情報伝達物質はヤマほどありますが、最近特に赤丸急上昇中の注目物質がセロトニンなのです。セロトニンには、様々な作用があることが知られています。例えば、眠気を誘う睡眠物質「メラトニン」の素でもあります。睡眠物質については、以前候補は40種類くらいあると書きましたが、このメラトニンは候補ではなく当選確実です。メラトニンが睡眠を誘う物質であることに、異論を唱える学者はひとりもいません。ということは、セロトニンが不足すると、セロトニンから作られるメラトニンも不足し、結果不眠症になってしまうわけです。ち…

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しつこいタイプ(2)

マッチョマンは「しつこい」。その説を科学的に裏づけていたのは、須藤伝悦氏の「モーツァルトが求め続けた『脳内物質』」(講談社)という本でした。この本で須藤氏がスポットライトを当てている脳内物質というのは、快感ホルモンのドーパミンのことです。このドーパミンが作られる源となる物質のひとつに、カルモジュリンという物質があります。これは、カルシウム結合タンパク質です。骨粗しょう症というのは、骨からどんどんカルシウムが溶け出すため、骨がスカスカになる病気です。だから、予防のためには、一生懸命カルシウムを摂りましょうとなるわけです。一方、ここでいうマッチョマンとは、いわゆる「骨太の人」を言いますが、このタイ…

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