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村上 徹

笑顔は心を明るくする

前回は、うれしいから笑うのか、笑うからうれしいのか、というお話をしました。今回は、後者(=笑うからうれしい)のジェームス=ランゲ説を弁護したいと思います。かつて心理学の実験で、つくり笑顔で心理テストに回答させると、真顔でやったときよりも明るい方向に回答する、という傾向が見られました。ストラックの実験でも、つくり笑顔でコミックを読むと、無表情で読んだときより面白く感じるという結果が得られました。まさに、「笑うから、より面白くなる」ということです。トムキンスという人は、顔面フィードバック説というのを唱えています。生体のフィードバックというシステムは、こんなことを言います。例えば、赤いランプが点いた…

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笑うからうれしいのか?

人はうれしいから笑うのか?それとも笑うからうれしいのか?えっ?うれしいから笑うに決まってるだろうって?実は、正直どちらとも言えないのです。これって、脳科学の世界では、結構大真面目に考えている問題なのです。うれしいから笑う。これは、キャノン=バード説と言います。一方、笑うからうれしい。これは、ジェームス=ランゲ説といいます。今のところ、キャノン=バード説の方が有力です。というのは、ジェームズ=ランゲ説の場合、その表情を作ったときの感情をいかにして知るのか、という点が解明されていないからです。しかし・・・・最近の研究では、ジェームス=ランゲ説も見捨てたものではなくなってきているのです。詳しくは次回…

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6種類の表情

前回、笑顔は遺伝であると話しました。そもそも表情というのは、動物の中で人間だけが持っているものです。池谷裕二氏の「進化しすぎた脳」(講談社)によれば、人種を超えて世界共通な表情というのが6つあるそうです。それは、喜び、悲しみ、怒り、驚き、不安、嫌悪です。さあ、そこで問題です。皆さん方の中で、「喜びを感じたときはこういう表情をするのよ」とお母さんから教えてもらった人はいますか?もちろんいませんよね。そうなんです。ヒトの赤ちゃんは、人種を問わず、誰からも教えてもらっていないのにこの6つの表情ができるのです。ということは、笑顔も含めて表情というものは、遺伝子に書き込まれた情報なんです。ほら、やっぱり…

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笑いは遺伝?

赤ちゃんが微笑むのはなぜか?という研究があります。どうも赤ちゃんは、微笑むとかわいがってもらえるということを良く知っていて、わざとやっている節があるらしいのです。ですので、アイブル・アイベスフェルトという人は「微笑みは完全に生得的な行動」だと言っています。ところが、最近、どうやら遺伝ではないかという説も浮上してきました。というのは、生まれつき目の不自由な子どもでも、2~3歳になるとにっこり微笑むということがわかったからです。私は、こちらの説を支持します。なぜなら、私たちの表情には、じつは深い意味があるからです。詳しくは次回で・・・・

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笑いのルーツ

「うちのワンちゃんは笑うのよ」という飼い主がいますが、残念ながら犬は笑いません。動物の中で笑うのは人間だけです。ただ、チンパンジーやニホンザルは「グリン」といって、笑いと似た表情をします。この表情の意味するところは、相手に対する服従です。つまり、「私の負けです。あなたとは戦いません」という意思の表明なのです。恐らく、人の笑顔も「あなたに悪意はありません」という意味として広がったものと思われます。というのは、チンパンジーやニホンザルといった真猿類が系統発生したあたりからいわゆる社会というものが形成されたと考えられるからです。そうです。笑顔は、社会生活や集団生活を円滑にするための重要なツールなので…

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医療費対策に笑いを

ロマリンダ大学のリーバーグとスタンリー・タンの研究です。ユーモアビデオを患者に見せただけで、NK細胞が活性するたげでなく、Bリンパ球の活性やガンマ-インタフェロンの活性も上がったそうです。アメリカの病院では、ユーモアセラピーといって医療現場でも笑いを積極的に取り入れようとしています。特に有名なのは、パッチ・アダムスという医者です。彼は小児病棟などを回診するときには、ピエロの格好をして出かけます。そしてずっこけたりして、子どもたちを笑わせています。映画にもなったほどの有名人ですが、日本では、まだまだしかめっ面した先生の方が多いですよね。ピエロはいかがなものかと思いますが、笑いで免疫が活性化するな…

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笑いはリウマチにも効く

笑いの医学的な効果については、様々な研究が進んでいますが今回はリウマチ患者の話です。このシリーズの最初に紹介した、日本医科大学の吉野槙一氏の研究です。リウマチ患者に落語を聞かせたところ、痛み物質であるインターロイキン6の数値が減少し、正常値になったそうです。その結果、26人中20人が痛みがかなり少なくなったと感じました。これは、薬ではあり得ない即効性だと先生は言っています。ただ、問題は持続しないことだそうです。ということは、いつも笑ってなきゃダメってことですよね。体の痛みも、心の痛みも、笑うことこそが処方箋なんですよね。

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笑いはガンを予防する

笑いが健康にいいという論文は掃いて捨てるほどありますが、健康によくないという論文はひとつもありません。まず今回は、NK細胞の話です。これは、ナチュラル・キラー細胞といって、比較的古くからある原始的な免疫細胞です。そして、この細胞がすごいのは、ガン細胞を食いちぎってくれるのです。まず、ガン細胞のどてっ腹に穴をあけてしまいます。それだけではありません。その穴が塞がってしまわないように、穴の周りをパーフォリンというタンバク質で固めてしまうのです。なんと念入りな攻撃なことか・・・・これにより、ガン細胞の中身はどろどろと溶け出して、死んでしまうというわけです。うーん、なんとも頼もしい免疫細胞ですね。とこ…

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心で泣いている

情動により流れる涙が、気持ちをすっきりさせる効果があることはわかりました。ところが、涙が出ない人もいます。リウマチ患者などは、シェーグレーン症状といって、一般に涙が出にくい人が多いのです。落語では、客が思わずもらい泣きしてしまうようなしんみりした噺を「人情噺」と言いますが、これをリウマチ患者に聞かせた研究者がいます。さぁ、どうなったでしょうか?他の患者や看護師は大泣きしているのに、シェーグレーン症状の患者は一滴の涙も流れていません。しかし、なんと抗ストレスホルモンであるコルチゾールなどは、他の人と同じように低くなったそうです。この研究の第一人者である、日本医科大の吉野槙一氏はこう言っています。…

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エモーショナル・ティア(3)

情動の涙に含まれている物質の3番目は、プロラクチンという女性ホルモンです。このホルモンは、「いとおしさ」を感じる物質です。皆さんもご経験があるかもしれませんが、昔わが子が生まれたという知らせを聞いて病院に駆けつけた私はびっくりしてしまいました。なぜなら、生まれたばかりの赤ちゃんの顔は、サルそっくりだったからです。ところが、もっと驚いたのは、そのサルそっくりの赤ん坊を胸に抱いた母親が、しきりに「かわいい」を連発することでした。正直言って私には、この感性が全く理解できませんでした。今から思えば、これはプロラクチンのなせる業だったのですね。母性本能をくすぐるなんていうのは、このホルモンがあるからです…

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