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村上 徹

円売り介入は効果がない?

過去にも、円高局面で日銀は何回か円売り介入をしました。ではそれは効果があったのでしょうか。日銀は、円売りの市場介入をしても効果は限定的だと主張しています。確かにその通りです。瞬間的に円高をストップすることはできても、持続することは困難でした。円売り介入は効果がないのでしょうか。たしかに、日銀が円売り介入しただけでは効果は限られます。為替市場に、新たな市場参加者がひとり増えただけですから。問題はその後です。マーケットに溢れた円を、そのまま放置するかどうかです。放置されれば、マーケットに円がジャブジャブの状態になります。当然、円の希少価値は薄れ、円安が進みます。これが大切なのです。中央銀行が、マー…

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劇的な効果

2012年2月に日銀が、1%のインフレ率をメドとすることと、国債の買い入れを10兆円から19兆円に一気に拡大すると発表した途端に、劇的な効果が現れました。低迷していた株価は、一気に急上昇に転じました。そして為替レートも一気に円安に向かったのです。リーマンショック以降、どうやっても歯止めのかからなかった株価の下落と円高がいとも簡単にいく止められただけでなく、劇的に反転したのです。株価の上昇と円安というのは、すべて岩田氏の予想どおりです。別に岩田氏が予言者だったわけではありません。経済学者にとっては、この説はきわめて常識的な理論です。今回の事態についても、日銀のこれまでの対応を「不作為」と批判する…

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デフレと円高はカンタンに修正できる

今回は、岩田規久男氏の説を紹介しましょう。彼は、インフレターゲット論の代表的存在でもあります。彼の説は、マネーサプライを増やすだけでは効果がなく、中央銀行が「インフレにすることに積極的にコミットする」ことが必要だというものです。しかし、日銀は反応しませんでした。先進国の中央銀行でインフレ率にコミットしないのは、わずか5カ国しかありません。日本の他は、アメリカ、フランス、ドイツ、イタリアです。アメリカは、インフレターゲット論の教祖的存在であるバーナンキがFRBの議長をしていたので、改めてインフレ率にコミットする必要もなかったわけです。しかし、2012年になって風向きは変わります。アメリカが、目標…

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お金が回転しない

M(マネーサプライ)を増やしたのに、インフレにならなかった理由は何なのか?6年前に、私はあるエコノミストに、その理由を説明する仮説を提示し、意見を求めました。それは、「MV=PT」の左辺のV(貨幣速度)が下がってしまったことが理由ではないかと。その時はエコノミストに否定されてしまいましたが、後に吉川洋氏や若田部昌澄氏などの著書でも同様の検証がなされていて、私は大変うれしく思ったことを覚えています。V(貨幣速度)が下がるとはどういうことか、わかりやすく説明しましょう。今日ATMからおろした1万円がなくなるのは、何日後ですか?バブルの頃は、お金に羽が生えているのかと思うくらい、あっという間になくな…

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素朴な貨幣数量説の敗北

今回はちょっとアカデミックな話になりますので、数学が嫌いな人は適当に読み飛ばしてください。今までお話した通り、景気をよくするためにはインフレを起こせばいいのですが、では具体的にどうすればインフレを起こせるのでしょう?今から6年ほど前に、私は「MV=PT」という「素朴な貨幣数量説」を基にこのブログでそのアイデアを説明しました。この式は、実物経済規模と貨幣経済規模は等しいことを表しています。右辺から説明しましょう。Pは物価です。Tは取引総数です。つまり、その年に取引された商品やサービスの価格をすべて調べ上げ、それがいくつ売れたかを掛け合わせれば、その国の実物経済の取引規模が分かります。次に左辺を見…

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デフレは決してあってはならないこと

前回、チョー円高は、デフレを放置したことが原因だとお話ししました。今回は、デフレの悪影響についてお話ししましょう。まずは、インフレとデフレの違いから説明しますね。インフレとは物価が上がることです。一方デフレとは、逆に物価が下がることです。お互いよく似た現象のように思えますが、経済に与える影響は天と地ほども違います。インフレは、世の中の物価が上がることです。一般にインフレは景気のいい時に起こります。もしあなたが社長だとして、インフレの時に自分の会社の製品を値上げしないで据え置いたらどうなるでしょう。当然、社員の給料も上げられません。他の会社は、製品を値上げした分、社員の給料も上げています。ですの…

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ハンバーガーで読み解く為替レート

前回、チョー円高の謎を、小学校の算数で解き明かすと予告しました。では早速はじめましょう。あまりに簡単な計算ですので、電卓も要りません。今、1ドル100円という為替水準だったと仮定します。そして、日本でもアメリカでも、同じ品質のハンバーガーが同じ価格で売られていたとします。では問題です。日本でそのハンバーガーが100円のとき、アメリカではいくらでしょうか?これはカンタン、1ドルですよね。次にその後10年間、日本ではデフレが続き、アメリカではインフレが続いたとしましょう。日本では毎年1%ずつ物価が下がり続けたとします。ザックリ言って、100円の1%、すなわち1円ずつ値下がりします。1円が10年間続…

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チョー円高の謎を解く

一時期は、1ドル70円と、とんでもないチョー円高が日本経済を苦しめていました。輸出産業がメインの日本にとっては、致命的な水準です。ある大学教授は、1ドル50円台までいくだろうと予想しています。どんなに景気が悪くなっても失業しない職業の人は、お気楽でいいなと思います。もし、本当に50円になったら、日本経済は壊滅状態になるでしょう。この教授の教え子は、ひとりも就職できないかもしれません。それでも給料がもらえる仕事はうらやましい限りですが、はたしてこういう職業が世の中のためになっているのか疑問です。それはさておき、なぜこんなにも円高が進むのでしょうか。日本の円が買われているということは、それだけ日本…

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マーケットが間違えているのか?

これまで日本の金融マーケットを、国債と株を両面から見てきましたが、両方ともきわめて異常な価格で取引されていることがお分かりいだたけましたでしょうか。日本国債は、日本が借金大魔王の国であるにも関わらずとんでもない高値で取引されていました。一方、日本株は、その会社の純資産総額を下回る株式総額で取引されていました。どちらも理論的には説明のつかない事態です。これは果たして、マーケットが間違えているのでしょうか?金融に携わる人で、「マーケットが間違えている」と断言できる人がいたらその人は大ウソつきです。なぜなら、現にそのマーケットが存在していることは否定のしようがないからです。でもご安心ください。マーケ…

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乗っ取れば大儲け

前回、発行済み株式総数が1億株で、純資産は金庫に入っている100億だけという会社があったと仮定しました。そして、このとき株価は100円を割り込まないはずだと言いました。これをわかりやすく解説しましょう。今、仮に株価が100円を割り込んで、80円にまで値下がりしたとしましょう。そして、ある投資家が、この会社の株の買い占めを企んでいるとしましょう。ちなみに彼はこの会社を経営する気などなく、単なる財テクと考えています。さて彼は、いったいいくらの資金があれば買い占められるでしょうか。答えは簡単、80円×1億株=80億円ですよね。そして80億円で手に入れた会社をすぐに解散します。この会社はすでに彼のもの…

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