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村上 徹

情けは人の為ならず

最近、芸能人が出演するクイズ番組がよく放送されています。俗に“高学歴"と呼ばれるタレントやお笑い芸人が、様々なクイズに答えて、その意外な博識ぶりを披露しています。でも、本来の職業がタレントやお笑い芸人なら、なぜ本業で名を成そうとしないのでしょうか。プロのほうでは食えないので、セミプロの方で荒稼ぎしているというのは、私にはなかなか理解しにくい話です。さて、そんなクイズ番組に出てきそうな問題です。諺の「情けは人の為ならず」の意味は何でしょう?たいした難問ではありませんよね。他人に情けをかけることは、「その人の為にならない」という意味ではありません。情けをかけると、「やがて良い報いとなって自分に返っ…

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リトマス試験紙

売り上げがなかなか伸びません。一方で原材料費のコストはあがるばかり。しかし、製品価格を値上げする訳にもいかず、泣く泣く利益を削って対応しています。この状態が続くと、会社が潰れてしまうのではないかと、とても心配です・・・。多くの中小企業が抱えている悩みです。アベノミクスのおかげで、少しは景気が持ち直したとは言え、その恩恵を受けているのは大企業ばかり。中小企業にとっては、相変わらず気の抜けない状態が続いています。この先、会社が存続できるかどうかは、社長だけでなく社員だって心配なはず。以前、経営コンサルタントと話した時、会社が存続できるかどうか、瞬時にわかるリトマス試験紙があると聞きました。それは、…

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炎える母

40年以上、あえて読むことを避け続けてきました。理由は、あまりに凄惨な詩だからです。宗左近の『炎える母』は、たったひとつのテーマ、すなわち母親が生きたまま焼き殺されるというテーマで貫かれた、300ページにも及ぶ長編詩集です。敗戦が、誰の目にも明らかだった1945年3月10日。連合軍がこの日決行したミーティングハウス2号作戦は、それまでの東京空襲とは違い、極めて低い高度から大量の焼夷弾を投下するというものでした。わざわざ風の強いこの日を選び、しかも木造家屋が密集する下町をターゲットにしたのは、明らかに火災の延焼効果を狙ったものでした。作戦はものの見事に的中し、東京は見渡す限りの焼け野原となります…

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パワハラ考

ついこの間まで「セクハラ」対応で大騒ぎしていた職場マネジメントが、今度は「パワハラ」問題に振り回されています。遅刻した新入社員を怒ったら、「課長、それってパワハラですよね」と反撃され、すっかり及び腰になってしまった管理職もいます。その上、最近は「マタハラ」や「スメハラ」などの新種も出現し、管理職にとって職場は、さながら“地雷原”の様相を呈してきました。しかし、一体どこからパワハラになってしまうのか、その境界線は誰に聞いてもはっきりしません。厚労省のワーキンググループによれば、パワハラは以下のように定義されています。「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、…

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ビジョンとミッション

数年前のこと、ある人から勧められた本の表紙を見て、ちょっと困惑してしまいました。『英国海兵隊に学ぶ最強組織のつくり方』とあったからです。いまどき軍隊なのかな、と思う私の心を見透かしたように、その人は言います。「昔は作戦本部の命令に絶対服従でしたが、今はほとんどの決定権は現場の士官に委ねられているそうです」半信半疑でしたが、読んでみて本当に驚きました。今、ビジネスの現場で、とても曖昧になっていることが、実に明確に整理されていたからです。それは、ビジョンとミッションの違いです。管理職にビジョンを語らせると、多くの人が「今年度の予算を達成する」とか、「今のプロジェクトを成功させる」ことと答えます。し…

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瞬間湯沸器

あなたの会社に、“瞬間湯沸器”はいませんか?まあ、“瞬間”とまではいかなくても怒りっぽい人や、よく怒鳴る人は結構いるものです。私も昔はそうでした。その頃の言い訳はいつも、「俺って短気だから」でした。確かに気が長い方ではありませんが、本当に性格の問題なのでしょうか?ちょっと検証してみましょう。論理構成はこうなります。「短気」という性格が、「カッとなる」という感情を引き起こし、さらにその感情が「怒鳴る」という行動を引き起こす。つまり、性格(短気)→感情(カッとなる)→行動(怒鳴る)という連鎖です。一見説得力があるように思えますが、本当でしょうか?最近ブームになっているアドラー心理学では、この仮説は…

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最初から天才

「最初から最後まで天才だった男」レコード会社のキャッチですが、これに異論を挟む者は一人もいないと断言できます。卓越したテクニックと情緒たっぷりの演奏は、当時のジャズファンのみならず、トップミュージシャンすべての認めるところでした。ただ一つ、この不世出の天才にとって残念でならないのは、最初と最後の間がわずか4年間だったことです。ディジー・ガレスピーの独壇場だったトランペット部門に突如現れた超新星は、瞬く間にジャズシーンを席巻します。「もし僕が1952年にアメリカにいたら、何があったってNYに行ってクリフォードブラウンのライブを聴いていただろう」村上春樹は、『誰がジャズを殺したか』の中でこう絶賛し…

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心/理学

「心理学」という言葉を分解したらと聞かれ、「心理/学」すなわち「心理」を研究する「学問」だと答えたら、意外にも間違いでした。正しくは「心/理学」なのだそうです。これは、「心(ココロ)」の「理学」を研究することを意味します。理学とは、自然の原理を研究する学問のことを言います。大学の学部に理学部というのがありますが、「自然がどうなっているか」を研究する学問の総称が「理学」なのだそうです。ちなみに、「どうやって実現するか」を研究する学問が「工学」だそうです。ですので、物理学は当然「物理/学」ではなく、「物/理学」となり、物質の原理を研究する学問ということになります。実は、「心/理学」は「物/理学」の…

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会社の資産

少し前のこと、“工場萌え”というのがメディアで大きく取り上げられました。川崎の沿岸部にある工場群が夜ライトで照らされるのを、海から船で眺めるツアーが人気で、写真集も発売されました。昔、石油を精製する工場を訪ねたことがあります。無数に組み上げられたパイプと、それを繋ぐバルブたちが金属製の“異形の城”を築いています。近くには巨大なタンクもあり、まさに日常生活では目にすることのない異空間に迷い込んだ気分でした。この感覚を“萌え”というのかどうか私にはわかりませんが、コンビナート装置がこの会社の財産であることはよくわかりました。そうです。この会社の、貸借対照表の「資産」の部に記載される財産の大半は、コ…

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粘菌

世の中には、実に不思議な生き物がいるものです。今回紹介する「粘菌」は、その最たるものかもしれません。学術上「粘菌」と名前のつけられている生物は二つあります。南方熊楠が熊野の山奥で採集したのは、正式には「真正粘菌」と言います。アミーバ状の集合体が、一晩でキノコ状に変わるという実に不思議な生態に、熊楠はいっぺんに魅了されました。しかし今回は、残念ながらもうひとつの粘菌である、「細胞性粘菌」の話です。でも、こちらの方がもっと面白いのです。細胞性粘菌は、土の中の細菌を食べて生きている原始的な生物です。単細胞生物ですので、普段は細胞分裂によって増えます。移動する時は、アミーバ運動といって細胞内の原形質に…

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