株式会社ファイブスターズ アカデミー

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村上 徹

大いなる静寂の谷間

JR九州が、『ななつ星in九州』という超豪華な寝台列車の運行を開始したのは、今から3年前の2013年秋。当時メディアで盛んに取り上げられたのは、記憶に新しいところです。しかし私は、「夜行列車」という言葉にあまりいい思い出がありません。貧しかった学生時代、“寝台”などは夢のまた夢。固いボックス席で10時間以上も揺られて帰省するのは、苦痛以外の何ものでもありませんでした。それでも、座席に座れるのはまだましな方です。遠藤賢司が『夜汽車のブルース』でフォークギターを激しくかき鳴らすあのリズムは、かつて彼が夜行列車の固い床に新聞紙を敷いて寝たとき、一晩中鳴り響いていた蒸気機関車の鼓動をイメージしたものだ…

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残業が多すぎる

安倍政権が、「ホワイトカラー・イグゼンプション」の導入を検討しています。これは大雑把に言うと、一定要件を満たした場合、ホワイトカラーの残業には手当てを払わないということです。世の中では、労働強化に繋がると反対意見も多いようですが、この案の意図するところはある程度理解できます。というのは、日本が他の先進諸国に比べて圧倒的に劣っているのは、ホワイトカラーの労働生産性の低さだからです。まずホワイトカラーとの比較のため、一般にブルーカラーと言われる工場のオペレーターを見てみましょう。彼らは、その一挙手一投足まできめ細かく管理されています。ベルトコンベアーで流れてくる仕掛品について、どちらの手で何秒以内…

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肩書きより重いもの

中学校の理科の授業で、エンドウマメを掛け合わせる実験から遺伝の法則を発見したのは、メンデルという人物だと教わりました。この名前を覚えている人も多いのではないでしょうか。科学史に残る大発見をしたメンデルですが、驚くべきことに彼は学者ではありませんでした。いや、学者どころか学校の正式な教員にもなれず、アカデミックな肩書きとは生涯無縁の人だったのです。一体なぜなのでしょう。それは、彼にとっては肩書きよりもはるかに重いものがあったからです。「生物学」は、19世紀になってようやく産声を上げた比較的新しい学問です。それまでは「博物学」の時代でした。博物学とは、様々なモノを集めて比較し分類する学問です。言わ…

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ツイッター化する社会

最近、テレビ画面の一部に、視聴者のツイッターが流れる番組をよく目にします。どんなことをつぶやいているのか見ていると、ほとんどが感情的な内容でしっかりした論理を展開しているものは皆無です。そもそも140字という制約がある上、テレビに採用されるとなればせいぜい一行程度の短いもの。ですので、キチンとしたロジックを展開することは不可能です。しかし、中には感情論までにも至らず、まるで脊髄反射のような薄っぺらいものさえあります。ですので、ツイッターがきっかけで深く考えさせられたり、自分の意見を見直すなどということは絶対にありません。見ていて、「ああ、この人はこんな意見なんだ」と解釈すれば、それで終わりです…

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最弱と最強の分岐点

ある大企業の社長の訓示です。「予測不可能な時代だからこそ、私が目指しているのは最強の組織。すなわち軍隊だ!」この社長の頭の中には、軍隊とは完璧なトップダウン型の組織で、上官の命令一下、隊員が迅速に行動するというイメージが出来上がっているのでしょう。私もそう思っていました。ところが、部下が上官の命令に唯々諾々と従うだけという軍隊は、“最弱”なのだそうです。『アメリカ海軍に学ぶ最強組織のつくり方』の著者マイケル・アブラショフは、海軍で「最もダメな軍艦」という烙印を押された誘導ミサイル駆逐艦ペンフォルドを、わずか数ヶ月のうちに「アメリカ艦隊最高の艦」と言われるまでの地位に引き上げた奇跡の艦長です。一…

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浮気遺伝子

電車の中で、スーツを着たサラリーマンが、夢中になってコミックを読んでいます。しかも、週刊の少年マンガ。あまりカッコいいものではありませんよね。コミックというと、ウィスキーをテーマにした『BARレモン・ハート』ぐらいしか読みませんが、それでも『北斗の拳』のケンシロウの名前くらいは知っています。そのケンシロウが一度敗れたという、サウザーという敵役がいるそうです。なぜケンシロウが敗れたのかと言うと、サウザーの臓器が鏡に映したように、左右反転しているのだそうです。生物学の専門用語では『内臓逆位』と言うそうですが、これを引き起こすサウザー遺伝子なるものがショウジョウバエで見つかりました。「サウザー」と命…

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他責の人

課題が達成できなかった時や、プロジェクトが失敗に終わった時、必ず他人のせいにする人がいます。他人とはすなわち、自分の上司だったり部下だったり、ときには状況そのものが犯人にされるケースもあります。誰が見ても主たる原因はその人自身にあるような場合でも、自分のことは棚に上げて他人への不満や不平を言い募ります。これを「他責」といいます。一方、これとは反対に自分のことを責めすぎる人もいます。確かに責任の何割かは免れませんが、まるで自分がA級戦犯であるかのように反省し倒しています。こちらは「自責」といいます。ところが心理学では、「他責」「自責」という言葉ではなく、「他罰」「自罰」という言い方をします。そし…

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「元社長」という名刺

もう10年以上前のことですが、定年間近の先輩が老後準備の一環で、地域の写真サークルに入りました。そして、休日に参加した撮影会で、驚くべき名刺を受け取ったというのです。メンバーのほとんどは現役をリタイアした人たちですので、当然名刺など持っていません。しかし、新規にサークルに加入した参加者の中に、ひとりだけ自分の名刺を配りまくっている人がいました。驚いたのはその肩書きです。「○○株式会社 元社長」皆さんどう思いますか?私は大笑いしてしまいましたが、せっかくの機会なのでいま少し掘り下げてみましょう。現役サラリーマンにとって、名刺は自分の存在証明のようなものです。なかでもその肩書きは、“仕事人間”にと…

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腕時計はしない

最近、時間はスマホで見るからという理由で、腕時計をしない若者たちが増えています。しかし、打ち合わせ中や、客先での商談の場でこれをやると、そんなにメールが気になるのか、と周りから顰蹙を買うことがありますので気をつけましょうね。今回は、別の意味で「腕時計はしない」という人の話です。太平洋戦争真っ只中の昭和19年(1944年)2月、強権を振るう東条英樹首相は、陸相と参謀総長をも兼務するという暴挙に出ます。現代で言うと、原爆やミサイル実験を繰り返し、総参謀長でさえあっさりと粛清してしまう、あの国のトップのようなものでしょうか。この措置は、戦況が悪化した末の苦肉の策でしたが、政務と統帥を一元化するのは明…

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I was born

詩人とは、何と鋭い感性の持ち主なのでしょう。吉野弘の『Iwasborn』を読んだ時、改めて生命の何たるかについて考えさせられました。英語を覚え始めたばかりの少年が、ある夏の日の夕暮れ、父親と一緒に寺の境内を歩いているときに身重の女性とすれ違います。少年は、その大きなお腹の中の胎児を想像しながらこう言います。━━やっぱり Iwasborn なんだね━━ 怪訝そうに少年の顔をのぞき込む父親に、こう続けます。 ━━Iwasborn さ。受身形だよ。正しく言うと人間は生まれさせられるんだ。自分の意志ではないんだね━━ 父親は黙ったまま暫く歩いた後、突然蜉蝣(かげろう)の話をし始めます。━━蜉蝣という虫…

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