株式会社ファイブスターズ アカデミー
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若者たちが将来の不安に備えてせっせと貯蓄すると、一体どのようなことが起こるか考えてみましょう。現在、車の販売台数が落ち込みはじめています。ということは、自動車産業を取り巻く環境は今後ますます厳しいものとなるでしょう。当然リストラが行われ、自動車産業全体で雇用できる規模はどんどん縮小していくことが予想されます。若者たちの買い控え行動は何も自動車だけではありませんので、あらゆる業界が販売不振に陥ります。すると、企業としては当然リストラに着手せざるを得なくなります。ということは、若者たちは自らの就職先を失うことになるのです。幸いにも職を得ることができた若者も安心はできません。買い控えの影響で、自分の…
前回お話した、「消費しない若者たち」を生み出した背景を考えてみたいと思います。彼らはバブル崩壊後の深刻な不況期に育ちました。もっとはっきり言いましょう。経済学的には、一生の間に遭遇するのが極めて困難な、『デフレ』の真っ只中で育ったのです。つまり、世界的に見ても、歴史的に見ても、彼らは非常に特殊な経済環境下で、お金に対する価値観を育んだのです。そう考えると、この特異な行動も納得がいきます。なぜなら、デフレ下では、お金を遣わないでいるとその価値が上がるからです。例えば1万円をそのまま持っていると、どんどん物価が下がっていくので、遣わない方が得をするのです。しかし、本当にデフレのせいだけでしょうか。…
少し前のことになりますが、テレビで「消費しない若者たち」をテーマに特番を組んでいました。若者といえば、以前はみんな車を欲しがったものですが、現在は全く違います。車は、若者には人気がないのです。自動車メーカーにとって、国内の販売台数の落ち込みは深刻な問題となっています。一方で酒を飲まないという若者も、3人に1人の割合でいるそうです。では、いまどきの若者は何にお金を使っているのでしょうか。なんと、「貯金」なのです。彼らはとにかく贅沢をせずに、せっせと小銭を溜め込んでいるのです。ちりも積もれば・・・のとおり、番組で紹介した若者などは、毎月結構な金額が預金通帳に印字されていました。なぜ彼らは貯蓄に走る…
格差社会のことを書いていたら、ちょうどポール・クルーグマンの新刊書「格差はつくられた」三上義一訳(早川書房)が出版されました。アメリカでも最近の格差拡大は深刻なようです。アメリカでは、1920年代初頭あたりまではかなりの格差社会でしたが、その後30年代からはニューディール政策の影響で格差は圧縮されていき、平等化への大きな流れができました。ところが、80年代半ばあたりから一転して、格差は拡大化の方向へと進んでいます。以前、日本の最高税率がどのように変化したかについてお話しましたが、アメリカの推移も見てみましょう。実は、日本とよく似た経過を辿っているのです。20年代、アメリカの最高所得税率はわずか…
マクロ経済理論の中に、ソロー残差とか、成長会計、あるいは全要素生産性といわれるものがあります。学術的に解説するとこうなります。ちょっだけがまんして聞いてくださいね。経済成長は、一般には2つの要素で説明がつきます。ひとつは労働人口の増加で、もうひとつは資本装備率の上昇です。しかし、それだけでは説明しきれない部分があり、それが「技術革新」だというのです。この専門用語だらけのむずかしい話を、クルーグマンが実にわかりやすい例え話にしてくれました。今、広い土地で、10人の建設作業員が、スコップを使って土木工事をしているとしましょう。あまりに工事がはかどらないので、作業員を2倍の20人に増やすとしましょう…
かつての日本は、高額所得者には大変過酷な課税を行っていました。累進課税と言って、所得が多くなればなるほど所得税率が段階的に高くなる制度です。この辺の分析は、橘木氏の本によく出てくるので少し詳しく紹介しましょう。1986年の所得税の最高税率は70%でした。しかも15段階とかなりきめ細かかったのです。その後1989年には最高税率は50%(5段階)に引き下げられ、1999年には現在の37%(4段階)にまで緩和されています。つまり、ここ20年間の税制の流れは、間違いなく『金持ち優遇』です。そして、これこそが格差を広げた原因なのです。この流れの背景には、高額所得者の税率を引き下げることによって、稼ぐ人に…
『格差社会』という言葉がメディアでもよく使われます。ちょっと前までは一億総中流社会と言われていたのですが まさに隔世の感があります。メディアでは、医療費が払えないお年寄りや、リストラで子どもの学費が払えなくなった親たちの話が取り上げられています。格差社会の下の方はなんとなくイメージが沸くのですが、では上の方、つまりお金持ちの人たちとはどのような人なのでしょうか。個人的には、ホリエモンのようにIT関係で若くして起業した、いわゆる”ヒルズ族”のイメージがあります。しかし、橘木俊詔氏と森剛志氏が執筆した「日本のお金持ち研究」(日本経済新聞出版社)を読んだら、ずいぶんイメージが変わりました。彼らは、高…
前回、生活者に学問の中心部分を譲ろうとしている学問があると述べました。それは『法学』です。ご存知のように、早ければ来年から「裁判員制度」がスタートします。もちろんこの制度は、学校で法律を学んだことのない人でも裁判員として指名されます。いわば法律のド素人でも、人を裁く側に回されてしまうのです。それどころか、「私は法律の知識がないからイヤだ」と拒否した人にはペナルティが課せられます。人を裁くとか、量刑を決めるというのは、この学問にとってもっとも重要な部分ではないのでしょうか。その部分を、法学という学問を一度も勉強したことのない一般市民に委ねるというのなら、この学問の存在理由は一体どこにあるのでしょ…
以前、酒の席のことでしたが、友人と口論になったことがあります。それは『インフレターゲット政策』の正当性について私が話したときでした。彼の意見は「インフレなんて絶対にイヤだ」の一点張りでした。平行線を辿る議論の中で、私は別のことを考えていました。それは、「もし、これが『量子力学』の話だったら、彼はこんなにも意見を言えないだろう」ということです。(もちろん、私もほとんど意見を言えませんが・・・)どういうことかと言うと、量子力学という学問の場合、あまりに専門的なためその学問を学んでいない人はほとんど発言できないはずです。しかし、経済学の場合は全く異なります。たとえその学問を学んでいなくても、今生活し…
それでは、日銀総裁としては一体だれが相応しかったのでしょうか?最近の日銀の審議委員の中で、もっとも見識が高かったのはまちがいなく中原伸之氏でしょう。彼の提案は、いつもいつも反対多数で否決されていました。しかし、その3カ月後、6カ月後には、ほとんどすべて可決に変わっていたのです。これは、彼に先見の明があったというより、むしろ他の委員の不明を指摘するべきでしょう。私はいつも、『正しいか正しくないかは歴史が判定をくだす』と言ってきましたが、3カ月や6カ月は歴史とは言いません。ただ単に、他の委員の見識が低すぎただけです。中原氏の著書をみても、時折植田和男氏が賛成票を投じるだけで、あとはほとんど孤立無援…
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