株式会社ファイブスターズ アカデミー
まずはお気軽に
お問い合わせください。
03-6812-9618
まずはお気軽に
お問い合わせください。
03-6812-9618
木全信の本を読んでいたら、見覚えのある人の名前を見つけました。その人物、木全と同じジャズ・プロデューサーであるKさんと、銀座の泰明小学校近くにある古ぼけたジャズ喫茶で会ったのは、今から5年ほど前の事でした。夜はバーとしてウィスキーを出すその店で、私の隣に座っていたのがKさんでした。私は、酒を飲む時は大抵一人なので、ママが気を遣って紹介してくれたのです。彼は、その世界ではとても有名で、アート・ブレイキーのアパートによく遊びに行っていたという話には、時の経つのも忘れて聞き入ってしまいました。そして何より驚いたのは、日本のクラブなどに出演した時のギャラが、たったの2~3万円だったということです。今と…
1820年9月26日。ニュージャージー州セーレムの郡裁判所前は、黒山の人だかりでごった返していました。ある男の公開自殺を見届けようと集まった観衆は、およそ200人。これだけ人が集まった理由は、公開自殺というだけでなく、一風変わったその手段にありました。なんと、毒性の強い植物の果実をたらふく食べるというのです。当時のアメリカでは、その果実は肺炎の原因とも、胃癌の原因とも言われ、食べるどころか手にとることさえ憚られるほど忌み嫌われていました。地元のバンドがおごそかに葬送曲を奏でる中、駆けつけた男の主治医が必死の形相で翻意を試みます。「止めなさい!その果実をひとつでも口に入れたら最期、泡を吹いて虫垂…
アポトーシスという言葉を知ったのは、細胞死研究の第一人者、田沼靖一の書いた『アポトーシスとは何か-死からはじまる生の科学』でした。アポトーシスとは、細胞の自殺のことです。例えばオタマジャクシの尻尾は、成長とともに消えてなくなってしまいます。これは、尻尾を形作っている細胞が、自分の役割が終わる時を知り、自ら死のスイッチを入れるためです。これは人間にも見られます。胎児の手の指には、最初のうちは水掻きがついています。まさに、哺乳類が進化する過程で、水中で生活していた時期があったことの証拠です。しかし、やがてこの水掻きも消えてなくなります。水掻きの細胞が、アポトーシスを起こしたからです。もしアポトーシ…
竹内久美子の本で、アラビアヤブチドリのことを読んでいたら、シベリア抑留者のことを思い出しました。以前、石原吉郎の回で紹介しましたが、抑留者たちは毎日の作業地域への行き帰りは5列縦隊となって移動します。そして整列の際には、我先にと真ん中の3列に入ろうとします。なぜなら両端の列にいると、凍りついた雪道でうっかり足を滑らした拍子に、脱走と見做されてロシア兵に射殺されてしまうからです。ですので、ひとたび整列の号令がかかると血眼になって近くにいる弱い者を見つけては、力ずくで外側の列に追いやります。短い時間のうちに被害者と加害者が激しく入れ替わる、と石原は表現していました。今回は、この「列」の話です。竹内…
経営学の教科書や巷に溢れるビジネス書には、マネジメントの理論やスキルがこれでもかというほど記載されています。間違ったことは何ひとつないはずなのに、日本の職場は相変わらずどこもギスギスしていて、みんな不機嫌に仕事をしているのはなぜでしょう。そんなことを考えながら、土曜日の朝、ぼんやりNHKの『マッサン』を見ていました。ニッカウィスキーの創始者であり、正に“信念の人”竹鶴政孝がモデルというのは知っていましたが、それにしても寿屋(現在のサントリー)の人達も含めて、なぜあんなにも、みんな元気いっぱいなのでしょうか。ドラマだからとは言え、職場はいつも活気に満ち溢れ、まるで毎日がお祭りのような高揚感が伝わ…
私の不幸は、ヴィクトール・フランクルより先に、石原吉郎に出会ったことです。名著『夜と霧』を読んでも、『望郷と海』ほどの感銘は受けませんでした。「荒地」派の、スゥイートでセンチメンタルな現代詩を読み漁っていた高校時代、生ぬるい百年の眠りから目覚めるに十分な衝撃を受けたのが石原吉郎でした。その“孤高”としか言いようのない精神の高みは、想像を絶するシベリア抑留体験によってもたらされたものです。隣で寝ていた男が、目が覚めた時にはすでに冷たくなっている。そんな極限状態の毎日で、抑留者たちは、次第に人間としての尊厳を喪失していきます。そして、やがて動物の本能である生への執着のみに傾倒していくのです。抑留者…
かつて、これほどまでに不遜な態度のミュージシャンがいたでしょうか。北の町にしては暑過ぎる真夏の昼下がり、ふらりと入った馴染みのジャズ喫茶で、壁いっぱいに映し出される8ミリフイルムに目が釘付けになりました。マスターが撮影してきたというモントルー・ジャズフェスティバル。まず、ニールス・ヘニング・オルステッド・ペデルセンの指運に言葉を失います。エレキギターよりも早くウッドベースを弾く光景を、生まれて初めて目撃しました。ジャズって、本当に凄い!画面が切り替わると、今度はサングラスをかけた、一癖も二癖もありそうな黒人が登場します。そして、次の瞬間、彼のテナーが火を吹くや否や、会場は静まり返ったのです。圧…
映画のストーリーは、事実ではありませんでした。高校生の頃に観た、ダイアナ・ロス主演の『ビリー・ホリデー物語』では、彼女は南部への演奏ツアーの途中、バスから降りた林の中で“それ”を目撃したことになっています。でも本当は、ある若い高校教師の綴った一編の詩によって、“それ”の存在を知ったのでした。日本では、女性ジャズシンガーという職業は、そこそこ美人で、英語のカラオケが多少上手に歌えるならば誰でもなれます。しかし、アメリカではそうはいきません。ビリー・ホリデーは、エラ・フィッツジェラルドやサラ・ボーンと並び称されるシンガーではありますが、彼女たちのように圧倒的な歌唱力や声量の持ち主ではありません。美…
今回はボトルについてのお話です。ユニークな形のボトルといえば、やはりデュカスタンのファーザーズ・ボトルに止めを刺します。スコッチではなくアルマニャック・ブランデーですが、なんとなんと”哺乳瓶”に入っているのです。1954年に、時のフランス首相ピエール・マンデス=フランスが「国民はアルコールを飲まずにミルクを飲め」と言ったことに対して皮肉をこめて発売されました。いかにもフランス人らしい発想ですね。ブランデーと言えばコニャックが有名ですが、これはコニャック地方で造られたブランデーを言います。ですので、アルマニャックは当然アルマニャック地方で造られたものとなります。他の地域でもブランデーは造られてい…
数えてみたことはありませんが、今まで結構な数の本を読んできました。私は題名ではなく著者名で本を選ぶタイプですが、その中で私の人生に影響を与えた人となると、たった二人しかいません。そのひとりが黒井千次です。黒井は芥川賞の選考委員も務めた人物ですが、大人気の作家というわけではありません。この作家の『時間』という小説を読んだのは学生時代。社会人になる直前でした。会社生活に対する漠然とした不安感に囚われていた時だったので、強い衝撃を受けました。それ以来、「今後、小説は絶対に読まない」と心に決めました。まあ、正直に言うとちょっとは読んだのですが・・・『時間』に描かれているのは、どこにでもいるようなサラリ…
初めての方へ|研修を探す|講師紹介|よくある質問|会社案内|お知らせ|お問い合わせ|サイトのご利用について|個人情報保護方針
© FiveStars Academy Co., Ltd. All right reserved.