株式会社ファイブスターズ アカデミー

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村上 徹

3つの願い

ニカって誰?ホレス・シルヴァーに『ニカズ・ドリーム』という曲がありますが、ずっと気になっていました。不勉強な私に答えを教えてくれたのは、植草甚一のエッセイでした。パノニカ、本名パノニカ・ドゥ・コーニグズウォーターは、当時のジャズメンのパトロンとなっていたお金持ちの女性です。ロスチャイルド財閥のイギリス家系に生まれ、フランス人男爵と結婚するという、まさに絵に描いたようなセレブです。彼女がジャズの魅力にハマったいきさつというのが、またすごいのです。パノニカの兄ヴィクターは、第二次世界大戦中、チャーチルの個人的な密使として、たびたびルーズベルトの元に派遣されます。その都度、以前からピアノのレッスンを…

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空気の研究

ちょっと前のことですが、空気を読めない人間は“KY”などと陰口を叩かれました。“空気”について最初に論じたのは山本七平です。1977年に上梓された『空気の研究』は、今でも多くの人に読まれているロングセラーです。その冒頭に、戦艦大和の特攻出撃のことが書かれています。2014年7月の『戦艦大和』の回でも書きましたが、終戦の年である昭和20年4月7日に、撃沈されることが火を見るより明らかだったにもかかわらず、大和は連合軍に占領された沖縄を目指して出航します。予想通り、九州を出るや否や敵に発見され、わずか2時間ほどで海の藻屑と化しますが、この戦闘で3,000人以上が命を落としました。この時、片道分の燃…

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メンドリとサラリーマン

『ノブレス・オブリージュ』(15年2月)の回で、群れを作る動物は、ほとんどの場合序列があると書きました。人間だけは例外であってほしいと願っていましたが、廣中直行の本を読んでいたら、残念ながら見事にこの法則が当てはまることがわかり、思わず笑ってしまいました。今回取り上げるのはメンドリです。ニワトリも序列化する動物ですが、特にメンドリのそれは厳格だそうです。まず、上位のトリと下位のトリ、どちらも空腹のメンドリをセットにして、三セット用意します。最初は、普通にオリの中にエサを置いて二羽を同時に入れます。すると、上位ドリだけが食事します。下位ドリはそれを横目で見ながら、上位ドリが満腹になって食事を止め…

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自分らしく

いつの頃からか、若者達が「自分らしく」を主張し始めました。昔は、会社に入るということは、その会社の“型”に自分を合わせることを意味しました。一日も早く会社の一員になれとか、○○マンにふさわしい行動をとれとか、まずは組織に自分をアダプトさせることが最優先でした。しかし、バブルの頃辺りから、自分らしさが発揮出来ないと思われる会社は、学生から敬遠されるようになりました。滅私奉公の時代ではないので、自分らしさを大切にすることは重要です。しかし、私はあえて問いたいのです。「自分らしさ」って、一体何のこと?若者達は、自分らしくあるために、様々な労働条件をあげます。残業が少ないこと、休日出勤がないこと、職場…

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個人個人は優秀でも

誰もが知っている伝統ある大企業で、大規模な不正会計が行われていました。しかも、代々にわたりトップが直接指示していたと言うではありませんか。零細なオーナー企業ならまだしも、高学歴の人が大勢集まる優良企業で起こった不祥事に世間は大変驚きました。実は、優秀な人材が多く集まって議論をしても、必ずしも最適な決定を下すわけではないという研究があります。わかりやすく言うと、IQの高い人たちが集まっても、そのグループのIQが高くなるわけではないということです。カーネギーメロン大学のアニタ・ウーリーと、MITのトーマス・マローンの報告です。まず、18~60歳の男女699人に事前にIQテストを実施して、個人個人の…

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明日死ぬかのように

Jazzandfreedomgohandinhand.ジャズと自由は手をつないで行くセロニアス・モンクがそう表現したように、1950年代のアメリカでは公民権運動に代表される人種差別反対運動が盛り上がるのと機を一にして、それまで上流社会のダンスミュージックに甘んじていたジャズが、バップという新しい演奏手法を手に入れ、黒人の魂の叫びへと変貌を遂げました。しかし、60年代に入るとジャズは明らかに行き過ぎてしまいます。旋律やコード進行といった音楽の決まりごとをすべて無視した、あの忌々しいフリー・ジャズが始まったのです。フリー・ジャズは、例えて言うなら安部公房の小説のようなものです。翌日必ずお腹を壊しま…

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『白熱教室』に異議あり

Eテレがマイケル・サンデルの『ハーバード白熱教室』を放送して以来、日本を含め世界中の大学の『白熱教室』が紹介されました。しかし、講師の末席を汚す者として生意気なことを言わせてもらえば、何をもって“白熱”と言っているのか、全く理解できないものが結構ありました。全てを見た訳ではありませんが、ウォルター・ルーウィンの『MIT白熱教室』以外は、普通の授業とはちょっと違うというくらいのレベルでしかありませんでした。大学の普通の授業のような研修をすると、翌日から仕事を失ってしまう危険性の高い企業研修講師としては、この程度で話題になること自体が不思議でなりません。ところで、講師の力量とは全く関係なく、そもそ…

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情けは人の為ならず

最近、芸能人が出演するクイズ番組がよく放送されています。俗に“高学歴"と呼ばれるタレントやお笑い芸人が、様々なクイズに答えて、その意外な博識ぶりを披露しています。でも、本来の職業がタレントやお笑い芸人なら、なぜ本業で名を成そうとしないのでしょうか。プロのほうでは食えないので、セミプロの方で荒稼ぎしているというのは、私にはなかなか理解しにくい話です。さて、そんなクイズ番組に出てきそうな問題です。諺の「情けは人の為ならず」の意味は何でしょう?たいした難問ではありませんよね。他人に情けをかけることは、「その人の為にならない」という意味ではありません。情けをかけると、「やがて良い報いとなって自分に返っ…

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リトマス試験紙

売り上げがなかなか伸びません。一方で原材料費のコストはあがるばかり。しかし、製品価格を値上げする訳にもいかず、泣く泣く利益を削って対応しています。この状態が続くと、会社が潰れてしまうのではないかと、とても心配です・・・。多くの中小企業が抱えている悩みです。アベノミクスのおかげで、少しは景気が持ち直したとは言え、その恩恵を受けているのは大企業ばかり。中小企業にとっては、相変わらず気の抜けない状態が続いています。この先、会社が存続できるかどうかは、社長だけでなく社員だって心配なはず。以前、経営コンサルタントと話した時、会社が存続できるかどうか、瞬時にわかるリトマス試験紙があると聞きました。それは、…

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炎える母

40年以上、あえて読むことを避け続けてきました。理由は、あまりに凄惨な詩だからです。宗左近の『炎える母』は、たったひとつのテーマ、すなわち母親が生きたまま焼き殺されるというテーマで貫かれた、300ページにも及ぶ長編詩集です。敗戦が、誰の目にも明らかだった1945年3月10日。連合軍がこの日決行したミーティングハウス2号作戦は、それまでの東京空襲とは違い、極めて低い高度から大量の焼夷弾を投下するというものでした。わざわざ風の強いこの日を選び、しかも木造家屋が密集する下町をターゲットにしたのは、明らかに火災の延焼効果を狙ったものでした。作戦はものの見事に的中し、東京は見渡す限りの焼け野原となります…

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