株式会社ファイブスターズ アカデミー

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村上 徹

三つ目の山

ネットで田村翼や鈴木勲、今田勝らのCDを探していた時のことです。ふと、最も成功した日本人ジャズ・ミュージシャンは誰だろうという疑問が湧き起こりました。これはちょっと難しい問題です。「成功した」の意味を「稼いだ」と捉えると、マスメディアにうまく乗った人ということになります。テレビCMに出演しているタレントもいますが、実力的にジャズ・ミュージシャンと呼べるのかと言われると判断に迷います。「稼いだ」ではなく、「認められた」という意味で捉えると、これはもう穐吉敏子しかいません。なにせ、アメリカジャズ界最高の栄誉とされる、国際芸術基金のジャズマスターズ賞を日本人でただ一人受賞しているのですから。満州でク…

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エンガワ理論

思い込みというのは誰にでもあるものです。どんなに気をつけていても、知らず知らずのうちに思い込みに囚われていることが案外多いもの。ビジネスではロジカル・シンキングが絶対必要だと言いながらも、結構非ロジカルな根拠で判断してしまっていることはありませんか。有名な人事コンサルタントが講演で紹介したエピソードを聞いて、思わず笑ってしまいました。ある人事部長の思い込みです。新卒の採用がようやく終わり、さあこれから配属先を決定しなければという段階になって、人事部門は頭を悩まします。ついこの間面接しただけの学生の適性なんて、詳しくわかるはずありませんよね。特に、花形部門への配属を誰にするかは大問題です。優秀な…

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大人の武者修行

「大人の武者修行」とは、いわば社会人のインターンシップ制度です。受講対象者は中小企業の次期経営者や管理職などで、育成訓練体制がしっかりしている企業に2週間出向き、そこの従業員と一緒に働きます。経済産業省が費用の相当な部分を補助してくれるので、中小企業にとっては大変ありがたい人材育成プランでもあります。ただし、修行する企業はどこでもいいというわけではありません。「ハイ・サービス日本300選」や「経営品質賞」を受賞しているか、おもてなしに優れていると経産省が認定した企業・団体のうち、この制度に賛同してくれたところが受け入れ先となります。先日テレビで、このインターンシップに参加した、ある古紙問屋の札…

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200年先の評価

なんともしょっぱいスコッチです。キャンベルタウンで作られるシングル・モルト『スプリングバンク』。キンタイア半島の突端にあるキャンベルタウンは、かつて30を超える蒸留所が軒を連ねるスコッチの一大産地でした。近くにあるアイラ島を遥かに凌ぐほどの規模で、NHK朝ドラの『マッサン』のモデルとなった竹鶴政孝も、ここにあるヘーゼルバーン蒸留所で修行しています。それほどまでに隆盛を誇った名産地なのに、現在はたった3つの蒸留所を数えるのみ。しかも、当時から絶え間なく操業を続けているのは、スプリングバンク蒸留所だけです。人の世は栄枯盛衰と言うけれど、あまりにも急激な凋落ではありませんか。その原因は二つあります。…

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頭のよくなる薬

今回は、『IQ遺伝子』(2009年6月)や、『IQを高める食事』(2009年7月)の続編です。有力なIQ遺伝子が見つかりました。それは、delta-6desaturase(Δ6不飽和化酵素)という、体内の不飽和脂肪酸を増やす酵素の遺伝子です。不飽和脂肪酸というのは、健康食品のCMでお馴染みのDHAとかEPAとか言う奴です。この遺伝子を持っている人は、不飽和脂肪酸をたくさん作ることができるのです。ということは、この遺伝子を持っていない人は、いくら青魚を食べても効果ないってことでしょうか?あるいは、だからこそ食べなければならないということ?いずれにせよ、これからの研究でその辺が明らかにされると思い…

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心配ないさ

故郷に向かう列車がスピードを落とし、左に大きく弧を描いて、やがて青々とした森の中へと入ろうとした時でした。イヤホンから流れていた音楽が、明るい曲調に変わります。ウィントン・ケリーの『イッツ・オール・ライト』。ケリーは、15才でR&Bのピアニストとしてプロのキャリアをスタートさせますが、その後女性シンガーのダイナ・ワシントンの伴奏者やディジー・ガレスピーのバンドを経て、マイルス・デイヴィスに見出されます。「ケリーは煙草につける火のような存在だ。彼なくして煙草は吸えない」マイルスにそこまで言わしめたケリーは、ジャズ史を塗り替えるような数々の名アルバムに参加するうちに、やがてジャズシーンには欠かせな…

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サボっても降格しない

家電メーカーのシャープが経営難に陥り、台湾の企業に買収されました。しかし、これから軌道に乗るまでには、乗り越えなければならない壁がまだいくつもあるように思います。シャープの失敗を見ていると、成功体験が却ってマイナスに作用する怖さを思い知らされます。2011年7月の地上デジタル放送への切替に伴い、ほとんどの家庭がテレビを買い替えざるを得なくなりました。どのメーカーのテレビも飛ぶように売れたのは、当たり前と言えば当たり前です。中でもシャープは「世界の亀山モデル」を売りに、高画質の『アクオス』で一気に業績を伸ばしました。シャープでは、この大ヒット商品を開発した人物が功績を認められ社長に就任します。と…

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大いなる静寂の谷間

JR九州が、『ななつ星in九州』という超豪華な寝台列車の運行を開始したのは、今から3年前の2013年秋。当時メディアで盛んに取り上げられたのは、記憶に新しいところです。しかし私は、「夜行列車」という言葉にあまりいい思い出がありません。貧しかった学生時代、“寝台”などは夢のまた夢。固いボックス席で10時間以上も揺られて帰省するのは、苦痛以外の何ものでもありませんでした。それでも、座席に座れるのはまだましな方です。遠藤賢司が『夜汽車のブルース』でフォークギターを激しくかき鳴らすあのリズムは、かつて彼が夜行列車の固い床に新聞紙を敷いて寝たとき、一晩中鳴り響いていた蒸気機関車の鼓動をイメージしたものだ…

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残業が多すぎる

安倍政権が、「ホワイトカラー・イグゼンプション」の導入を検討しています。これは大雑把に言うと、一定要件を満たした場合、ホワイトカラーの残業には手当てを払わないということです。世の中では、労働強化に繋がると反対意見も多いようですが、この案の意図するところはある程度理解できます。というのは、日本が他の先進諸国に比べて圧倒的に劣っているのは、ホワイトカラーの労働生産性の低さだからです。まずホワイトカラーとの比較のため、一般にブルーカラーと言われる工場のオペレーターを見てみましょう。彼らは、その一挙手一投足まできめ細かく管理されています。ベルトコンベアーで流れてくる仕掛品について、どちらの手で何秒以内…

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肩書きより重いもの

中学校の理科の授業で、エンドウマメを掛け合わせる実験から遺伝の法則を発見したのは、メンデルという人物だと教わりました。この名前を覚えている人も多いのではないでしょうか。科学史に残る大発見をしたメンデルですが、驚くべきことに彼は学者ではありませんでした。いや、学者どころか学校の正式な教員にもなれず、アカデミックな肩書きとは生涯無縁の人だったのです。一体なぜなのでしょう。それは、彼にとっては肩書きよりもはるかに重いものがあったからです。「生物学」は、19世紀になってようやく産声を上げた比較的新しい学問です。それまでは「博物学」の時代でした。博物学とは、様々なモノを集めて比較し分類する学問です。言わ…

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