株式会社ファイブスターズ アカデミー

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村上 徹

六邪(2)

太宗は、トップとして耳の痛い話を聞くことに抵抗はなかったのでしょうか。また部下の方も、勇気を持って意見具申するときに、何の躊躇もなかったのでしょうか。実は、太宗はその辺にも十分配慮していたようです。自分の顔が強面であることをよく知っていたので、部下と接する際は常に温顔を心がけていました。また、話す時はできるだけ彼らを近くに座らせるようにしたそうです。笑顔で接することと、部下との物理的な距離を縮めることの科学的な効果は、最近になって心理学によって解明されました。いつの時代も、組織のトップになるということは重大な責任を負うことです。しかし一方では、同時にとんでもなく大きな権限を手に入れることでもあ…

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六邪(1)

中国の唐の時代、太宗(たいそう)という非常に人望の厚い皇帝がいました。この皇帝の言行録として編纂されたのが『貞観政要(じょうがんせいよう)』で、組織のトップに必要とされる心得が全て網羅されていることから、帝王学の教科書とも言われているそうです。中国には古くから「諫臣(かんかん)」という職制がありました。その主な仕事は皇帝の政治に対して意見をしたり、忠告したりすることです。目上の人の過失を指摘して忠告することを「諫言(かんげん)」と言いますが、おそらくその語源とも関係しているのでしょう。昔の皇帝は意外にも謙虚な人が多かったのかと思いきや、そうではありません。正直に意見具申した諫臣はほとんどが左遷…

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ヒューマンな男

グリニッジ・ビレッジにあるジャズクラブ「カフェ・ボヘミア」にいた客は、突如ステージに上がってきた大男を見て驚きます。なにせ、ついさっきフロリダからアムトラックに乗ってニューヨークに着いたばかりの無名のアルト・サックス奏者が、事もあろうに今をときめくオスカー・ペティフォード率いるグループに飛び入り参加しようというのですから。迎え撃つホレス・シルヴァーや、ケニー・クラークといった錚々たるメンバーの中には、この田舎者を一丁揉んでやろうと意地悪な薄ら笑いを浮かべる者さえいました。案の定、ペティフォードのカウントで始まった『四月の思い出』は、とんでもなく速いテンポ。ところが、ソロの順番がその飛び入りに回…

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会議の前に手を洗え

ビジネスでは、素早い判断を求められる場面が多々あります。この判断で本当に良かったのかと、後から不安になることもしばしば。でも、自分の判断が間違いだったとは認めたくないので、「これでよかったのだ」と正当化したい心理がどうしても働いてしまいます。このことを心理学用語で、「認知バイアス」と言います。この認知バイアスを回避して、客観的に振り返るにはどうしたらよいのでしょう。ミシガン大学のリーとシュバルツによれば、手を洗うことが認知バイアスのリセットに有効なのだそうです。彼らは、40人の大学生に30枚のCDからベスト・アルバムと思うものを10枚選ばせ、ランクづけさせました。その際、5位か6位のどちらかの…

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帰っていいよ

「仕事がないなら、残業しないで帰っていいよ」新入社員の頃、先輩からかけられた優しい言葉を今でも覚えています。私には、その先輩が神様のように見えました。仕事がないからといって一人だけさっさと先に帰ったりしたら、「“組織人”としての自覚が足りない」と上司から延々と説教された頃の話です。だから、みんな自分の人事考課に悪影響を及ぼさないようにと、仕事がなくてもとりあえず居残っていたものです。ところが、時代は変わりました。最近の新入社員は、上司や先輩から「仕事がないなら、残業しないで帰っていいよ」と言われると却って帰れなくなるのだそうです。どういうことでしょう。どうやら、「仕事がないなら」という前提条件…

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老害ニュートン(2)

ニュートンとフックの遺恨試合の第2ラウンドは、悪意に満ちたフックの言いがかりから始まります。惑星の円運動について、意地悪な質問をしつこく吹っ掛けたのです。随分と粘着質な性格ですよね。このとき、まだ発表はしていないとは言え、すでに「引力の逆2乗法則」を完成させていたニュートンは、フックよりはるかに先を行く答えを知っていました。しかし、法則が未発表だったためやむなく逃げを打ちます。実験から遠ざかっていることを言い訳にして、「質問には答えられない」とかわそうとしたのです。でも、さすがにそれだけではまずいと思ったのか、ある思考実験を提案します。それは、「もし物体が地球の中を中心に向かって落下するとした…

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老害ニュートン(1)

科学史におけるニュートンの功績と言えば、何と言っても「微分積分法」と「万有引力」の発見ですが、彼がこの研究を完成させたのは、なんと24歳の時。ペストの大流行によりケンブリッジ大学が一時閉鎖されたため、やむなく故郷の田舎町ウールスソープに戻っていたわずか2年余りのうちに、彼はこの世紀の大発見をすべて完了してしまいます。1666年のことでした。ところが、なぜかニュートンはこの発見を論文として発表することはしませんでした。これが後の大混乱の原因となります。世紀の大発見を発表しないなんて、「落体の法則」の時のガリレオと同じですよね。そもそも「万有引力の法則」というのは、ほとんどガリレオとケプラーが発見…

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空腹の時は叱るな!

部下を叱っているとき、ついつい感情が高ぶってしまい、大きな声を出してしまった。そんな経験はありませんか。「叱る」ことは、管理職として必要なマネジメントではありますが、相手が脅えてしまうような大声はパワハラだと訴えられても文句は言えません。そこで、いい方法をお教えしましょう。叱る前に食事をして、腹を満たしておいて下さい。2011年に、シャイ・ダンチガーらの驚くべき論文が発表されています。イスラエルで、犯罪者の仮釈放を認めるか否かを決めている数名の判定人に、1000人以上の犯罪者の仮釈放の認否判定をしてもらいました。作業を開始した直後の平均は、仮釈放が認められる確率が65%。結構、甘々ですよね。と…

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トヨタの「改善」

トヨタのグループ会社が、ビジネス書を何冊か出版しています。様々なエピソードを紹介してくれるのはトヨタの元社員ですので、トヨタ自動車という会社がどんな姿勢で仕事に取り組んでいるのかがよくわかる本です。例えばこんなエピソードがあります。工場のオペレーターが作業に不慣れなため、ラインの作業効率が上がりません。やむなく管理職が自らラインに入り、なんとか滞りなくラインを動かしていた時です。たまたま通りかかったその上司が、こうつぶやきます。「ラインに入るならずっと入っておけ。どうせ楽したいんだろ」言われた管理職はムッとします。「オレが入らなかったらラインは最悪ストップしてしまう。そうしたら今日の生産目標は…

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金持ちになるコツ(2)

空腹感と、がめつく稼ぐことがどのような関係にあるのかを調べた研究があります。2005年にバーバラ・ブライアーらは、空腹の度合いが、募金する時の金額にどのような影響を及ぼすかを調べました。すると、普通に食事した人たちに比べ、4時間も食事をしなかった人たちの募金額が激減したのです。どうやら人は、腹が減るほど募金したくなくなるらしいのです。わかりやすく言うと、「腹が減るとがめつくなる」。なんとなくわかるような気もしますが、彼らはこの法則の“逆もまた真なり”についても証明してしまいました。まず、AとBの二つのグループに1000円でくじを買ってもらいますが、それぞれのグループに伝えられている当選金額が異…

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