株式会社ファイブスターズ アカデミー
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「鮮度保持剤」の開発のためにマグロ漁船に乗船した齊藤は、漁師のコミュニケーションの取り方についても、自分の職場との違いを思い知らされます。 中でも印象的だったのが、漁師の「叱り方」でした。 マグロ漁の延縄には、時々サメが掛かります。 サメは非常に獰猛なので、すぐにナタで頭を半分くらい落とさなければなりません。 なぜ全部落とさないかというと、胴体と切り離された頭だけでも噛みつくほど生命力があるので、頭が甲板上をゴロゴロ転がる方が危ないからです。 ある日、水揚げ作業中に「おわぁ!」という大きな叫び声が上がりました。 声の方向に目をやると、マグロの内臓を捌く作業に当たっていた若い…
齊藤正明はバイオ系企業の研究所で、冷蔵マグロの「鮮度保持剤」の開発を担当するサラリーマンでした。 現在はマグロの冷凍技術が進歩したため、冷蔵ものと比べてもほとんど遜色はなくなりましたが、かつては雲泥の差があったそうです。 片道9日間もかけて遥々赤道直下まで出掛けて行くマグロ漁船にしてみれば、30日間という冷蔵保存の限界が少しでも伸びれてくれれば、その分長く漁場に留まることができます。 しかし、鮮度保持剤の開発はなかなか進まず、暗中模索の日々が続いていました。 ある日の研究報告会議の席上、突然上司から齊藤に命令が下ります。 「マグロの全てを知るために、一度マグロ漁船に乗ってこい…
準備万端な態勢で臨んだのに、当日の異様な雰囲気に飲まれてしまい、緊張して「あがる」ことがあります。 この時、多くの人が間違った対処法をとっています。 それは、「大丈夫!大丈夫!」とか、「落ち着け!落ち着け!」と心に念じることです。 いくら念じたところで、それでパニックが治まった試しはありません。 この対処法は「回避的コントロール」と言って、有効なのはあくまで予防的段階までです。 つまり、「なんだかパニクりそうだな」と感じた時点なら有効ということです。 でも、一度パニックが始まってしまうと、もうダメです。 人は、シロクマを忘れようとするとすればするほど、シロクマを思い出して…
テレビでお馴染みの心理学者植木理恵は、1987年にアメリカで行われた「シロクマ実験」に最初に注目した研究者のひとりです。 まずは、シロクマ実験についてご説明しましょう。 被験者をA、B、Cの3つのグループに分けた後、とりあえずシロクマの1日を記録した50分のビデオを観てもらいます。 なぜシロクマかというと、心理学的に見てシロクマは何かの象徴ということがなく、いわゆるイメージが固定されていない動物だからだそうです。 ビデオを観終わると、それぞれのグループはこのように告げられます。 A「シロクマのことを覚えておけ」 B「シロクマのことは考えても考えなくてもお好きなように」 C…
20世紀になると、「徴税請負人」に代わる夢のような制度を考えた天才が現れます。 その制度とは「源泉徴収」。 これなら、税金を取りっぱぐれることはありません。 しかも、権力者にとって都合がよかったのは、納税者に税金を負担している実感がほとんどないことです。 現在でも、自分の払っている税金が一体いくらなのか、正確に答えられるサラリーマンがどれくらいいるでしょうか? しかもこの天才は、「扶養控除」という制度を導入して大衆の税金を安くしました。 さらには、企業や富裕層の税金を増やすことで、大衆から熱狂的な支持を集めることにも成功します。 もう、お分かりですよね。 その権力者の名…
世の中に「税金」というものが出現して以来、権力者を悩ませ続けたのはその徴収方法でした。 大村大二郎の『脱税の世界史』を読むと、税金をどうやって徴収するかは権力者にとってきわめて重要な政策だったことがわかります。 なぜなら、民衆の支持を得られるかどうかを決定する要素のひとつだったからです。 古代ローマの共和制が崩壊したのも、税金の徴収方法が原因でした。 教会が勢力を持つ以前のローマでは、市民は直接税を払っていませんでした。 行政官などは市民が無報酬で務めていたし、最低限の経費は関税と奴隷売買の際の奴隷税で賄うことができたからです。 その後、ローマの勢力範囲が拡大していくと、占…
大航海時代以前のヨーロッパは、教会の蓄財がどんどん増える一方で、戦争に明け暮れる国王の財政は逼迫していきます。 14世紀初頭のフランスでは、カペー朝フィリップ4世が国家統一まであと一歩のところまで漕ぎ着けていました。 フィリップ4世は、軍費調達のためフランス領内の教会領に課税しようと画策します。 これに強く反発したローマ教皇ボニファティウス8世は、国王に課税禁止を通達します。 激怒した国王は、フランス国民がローマ教会に納めていた1/10税の支払いを停止するという強烈なしっぺ返しに出ました。 これに対して教皇は教会からの破門をちらつかせて国王を脅しにかかります。 国王も黙って…
学生時代、世界史は大嫌いな科目のひとつでした。 ひたすら年号を暗記する行為は、苦痛以外の何者でもありませんでした。 西暦何年に何が起こったかを一生懸命覚えたところで、それが私の人生にとって一体何の役に立つというのでしょう。 そんな世界史嫌いの私が、あっという間に引き込まれたのが元国税調査官、大村大二郎の『脱税の世界史』。 税金というキーワードで歴史を読み解くという、実に面白い本です。 例えば、中世ヨーロッパの国王などは絶対王政を敷くくらいですから、さぞや財政力があったのだろうと思いきや、その経済力は非常に脆弱なものだったそうです。 この時代に税金を取り立てていたのは、意外な…
マリス博士の大発見を世界は見逃しませんでした。 最初の朗報は日本からもたらされます。 1992年(平成4年)、日本の国際科学技術財団が、マリスの研究を「日本国際賞」に選出したのです。 賞金は5千万円。 マリスの大発見に、ついにスポットライトが当たった瞬間でした。 授賞式で当時の天皇、皇后両陛下に面会したマリスが、皇后に向かって発した最初の挨拶は「スウィーティ(かわい子ちゃん)」。 こんな不謹慎な男は、後にも先にもマリスだけでしょう。 「他の国の皇后とはお知り合いですか?」と尋ねるマリスに、「世界に皇后の称号をもつ方は私を含めて3人しかおりません」と答える皇后。 あとの2…
その夜、シルバーのホンダ・シビックは、週末を過ごす予定のアンダーソン渓谷に向けて、ハイウェイをひた走っていました。 トチノキの花の香りを乗せた乾いた風が吹く、5月のカリフォルニア。 暗闇の中に、ヘッドライトに照らされた道路沿いの木々が次々と浮かび上がりますが、夢想に時を委ねるドライバーの目には全く別のものが映っていました。 それは、DNAがほどかれていく様子です。 彼の頭の中は、DNAの暗号をどうやって解読するかでいっぱいでした。 すると突然、あるアイデアが舞い降りてきます。 慌ててカーブの路肩に車を停車させますが、助手席の恋人であり職場の同僚でもあるジェニファーは相変わら…
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