株式会社ファイブスターズ アカデミー
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蓮月焼の儲けがどうなったかの謎は、嘉永3年(1850年)の飢饉の際に解き明かされます。 窮民の救済に当たっていた、京都東町奉行所の与力平塚表十郎の元に、蓮月の命を受けた鉄斎が包みを届けに現れます。 包みの中身は30両。 現在の価値でいうと1,000万円近い大金です。 蓮月はこれを匿名で届けるよう命じていたのです。 おかげで鉄斎は、奉行所から怪しまれて取り調べを受ける羽目になりました。 ところで、その蓮月の生い立ちはというと、これが結構複雑なのです。 天明8年(1788年)正月晦日、鴨川の東のほとり宮川町団栗辻子(どんぐりずし)の裏店から出火した「天明の大火」は、禁裏御…
億万長者になったベンチャー企業の社長が、メディアで盛んにもて囃されています。 まるで稼いだ金額が、そのまま人間の価値を示しているかのような大騒ぎ。 そもそも日本人というのは、昔から富める者は尊いと考える民族だったのでしょうか。 歴史学者の磯田道史は、その著書『無私の日本人』で、欲がなく自分を犠牲にしてでも、清貧の暮らしに生きた江戸後期の人々を紹介しています。 大田垣蓮月。 この尼僧の造る陶器『蓮月焼』は、安価なことも手伝って幕末の京都で大人気を博し、造る片端から売れていきました。 人気の理由は、急須や茶碗に釘で彫りつけた自詠の和歌。 次々と注文が舞い込み、蓮月は頼まれれば頼ま…
香月が画家であることを申告したとたんに待遇は劇的に変わります。 以降はプラカードやスターリンの肖像画を任されるようになり、屋外での過酷な重労働は免除されました。 収容所の応接間の壁掛けを任される頃には、食べるものに困ることはほとんどなくなっていたといいます。 横山操のように職業をひた隠し、黙々と厳冬の重労働に甘んじた画家もいましたが、だからと言って香月を非難することはできません。 なぜなら、私たちは極限状況を体験していないからです。 戦後、生まれ故郷の山口県三隅町に戻った香月は、まるで何かに取り憑かれたように、方解石の粉末と炭粉を混ぜた黒灰色のキャンパスの上に、さらに真っ黒な…
とにかく真っ黒な絵画でした。 でも、目を凝らして観ていると、暗闇の中に何かがうっすらと浮かび上がってきます。 それが幾つも幾つも描かれた人間の顔だと気づくまで、それほど時間はかかりません。 げっそり肉が削げ落ちた頬に大きく窪んだ目。 鼻筋が一本通っていることを除けば、髑髏にも似たそれは紛れもなく、シベリアの凍土に埋葬された兵士たちの顔。 耳を澄ませば、祖国に棄てられた者たちの、静かなる怨嗟の呻きが聞こえてくるようです。 今から30年ほど前、絵画に全く興味のない私が、時間潰しのためにふらりと立ち寄った絵画展で香月泰男の代表作『涅槃』を観た瞬間、私の脳裏に浮かんだのは詩人石原吉…
道子の父親渡辺錠太郎は、貧しい家庭に育ちました。 そのため勉学の道を諦め、学費を要しない軍関係の教育機関に進みます。 若い頃から、月給の半分を書籍代につぎ込むほどの学究肌で、天皇を神権化するグループとは一線を画していました。 それどころか、どちらかというと、美濃部達吉の「天皇機関説」を評価していたといいます。 そのような渡辺の理知的な振る舞いは、精神論を標榜する陸軍大臣荒木貞夫や、陸軍大将眞崎甚三郎らの皇道派の目には、実に目障りなものとして映っていました。 1936年(昭和11年)2月26日。 皇道派の影響を受けた陸軍の青年将校たちが、1,483名の下士官や兵士を率いてクー…
恐山菩提寺院代の南直哉(じきさい)は、「置かれた場所で咲きなさい」という言葉を初めて聞いた時、思わず笑ってしまったと言います。 置かれた場所が自分の望んだ場所ならともかく、誰かに一方的に置かれた場所であっても、ただそこで咲けばいいという論理には到底納得できなかったからです。 「たまたま置かれた場所」が理不尽なものであったとしても、それを運命として受け入れ、我慢して自己実現に努力せよという考え方は差別的であるとさえ南は言います。 彼によれば、仏教では置かれた場所や状況は一時的なものと考えるそうです。 だから、嫌なら別の場所を探してもいいし、もう少しその場所に居続けてもいい。 それは…
「思い込み」でもいいからアイデンティティを持つべきだと言っても、周囲の人にとっては迷惑なだけのアイデンティティだってありますよね。 正確に言うと、それはアイデンティティではなくて「独りよがり」です。 では、独りよがりから脱却し、ちゃんとしたアイデンティティを持つにはどうしたらいいのでしょう。 もう一度、脳科学者の池谷裕二の知見に耳を傾けてみることにしましょう。 アメリカの心理学者アール・ハントは、ヒトの知能を大きく「言語系」と「空間系」の2つに分けました。 後者は所謂「空間認知能力」のことで、IQのテストに空間物体の問題が含まれているのはこうした理由からです。 皆さんも脳トレな…
脳科学者の池谷裕二は、娘が産まれたのを機に、その発達過程を科学者の視点で観察することにしました。 通常、赤ちゃんは生後1歳半くらいで、自分という存在を認識できるようになります。 でも、一口に「自分を認識する」と言っても、事はそう簡単ではありません。 心理学では「鏡像認知」といって、鏡に映った姿は自分であると正しく認識できるかどうかが基準になります。 意外なことに、これがちゃんとできる動物はそれほど多くいません。 イヌやサルは、鏡に映った自分の姿を他人だと思って攻撃しようとします。 でも、鏡に映っている姿が自分のものだと正しく認識できているかどうかなんて、一体どうやって判定す…
国債の大量発行による深刻な副作用とは「ハイパーインフレ」です。 だから、インフレの可能性が高い時には、大量の国債を発行してはいけないのです。 今、財務省が陰で盛んに暗躍しているのは、これを恐れてのことなのです。 でも、現在の経済状態の中で、ハイパーインフレが起きる可能性は一体どのくらいあるのでしょう。 昨年11月の消費者物価指数の速報値はなんと▲0.9%。 インフレどころか深刻なデフレが進行しています。 私見ですが、この状況でハイパーインフレを心配することは、近い将来に地球が真っ二つに割れることを心配するに等しい行為でしょう。 しかも地球が割れるのを防ぐことはできませんが…
コロナの第3波が到来すると、科学的根拠がはっきりしないにも関わらず、マスメディアは一斉に「GoToトラベル元凶説」の大合唱。 それに押されて政府が一旦停止を決定すると、今度は掌を返したように「旅行関係者の悲鳴」を特集します。 彼らは一体何が言いたいのでしょうか? ただ単に誰かへの不満をぶちまけたいだけのように見えます。 他に伝えるべきことはなかったのでしょうか? 私が疑問に思ったのは、日本の感染者数は欧米に比べて桁違いに少ないのに、なぜ医療崩壊に直面しているのかということです。 しかも、人口1,000人当たりの病床数は、OECD加盟国の平均が4.7に対し日本は13.1。…
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