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5☆s 講師ブログ

笑顔細胞

脳の側頭葉に、笑顔にだけ反応する特殊な細胞があることを発見したのは、
京都大学霊長類研究所の所長を務めた久保田競です。

彼はそれを『笑顔細胞』と名付けました。

なぜ、そんな細胞があるのでしょう?

その謎を解き明かすためには、まずサルの話から始めなければなりません。

大変不思議なことですが、サルは生まれて初めてヘビを見ても必ず逃げます。
生まれて初めてクモを見ても必ず逃げます。

変だと思いませんか?

なぜなら、「ヘビは危険だ!」、「クモは危険だ!」と学習していないのですよ。
それなのに、なぜそれらが危険な生き物だとわかるのでしょうか。

実はサルの脳の中の、好き嫌いを決める「扁桃核」という神経核に、
ヘビにだけ反応する「ヘビ細胞」やクモにだけ反応する「クモ細胞」というのが存在します。

なぜ、そんな細胞があるのでしょうか?
その理由はこうです。

もし、危険な生物を知る手段が学習しかないとすると、ちょっと困った事態が起こります。
「変な生き物がいるなぁ」と毒ヘビを手に取った瞬間に、ガブリと噛まれて一巻の終わりとなってしまうかもしれません。

そこで、ヘビ細胞とかクモ細胞といった特殊な細胞が、警戒警報のサイレンの役割を果たしていると考えられます。

サイレンが鳴るので、ヘビやクモの危険性を学習していなくても、サルはとりあえず逃げるのです。
いわゆる「本能」というやつです。

私たちは先祖代々、生き延びるために様々な知恵を生み出してきました。

おそらく、この特定のものに反応する細胞というのも、私たちの先祖がDNAを通して語り継いできた、
生き延びるための貴重な情報なのでしょう。

もちろん大昔は、この細胞を持っていないサルもいたことでしょう。

しかし、それは生存競争においては不利に働きます。
ですので、自然淘汰の原則に従い、そういうサルは進化の途中で絶滅してしまったと考えられます。

ところで、ヘビやクモといった危険なものに反応する細胞はわかりますが、
笑顔に反応する細胞というのは一体どんな意味を持つのでしょう。

もし、笑顔に反応する細胞がなかったら、それは生存競争において不利なことなのでしょうか。

その疑問に答える前に、「笑う」という行為について考えてみましょう。

人間は笑いますが、人間以外の動物は笑ったりするのでしょうか?

時々、「うちのワンちゃんは笑うのよ」という飼い主がいますが、これは間違いです。

笑うのは人間だけです。
喜びの感情表現は動物でもしますが、それは笑っているのとは違います。

でも、笑うのとよく似た表情をする動物はいます。

チンパンジーです。

人間の笑顔というのは、必ず唇の端すなわち口角が上がります。

ニコニコマークがそうですよね。
この口角を上げるという動作をチンパンジーもするのです。

2014年9月のブログ『ヒト科4属』で書いたように、驚くなかれチンパンジーはヒト科に属しています。
ヒト科というのはヒト属、チンパンジー属、ゴリラ属、オラウータン属の4属からなっています。

つまり、チンパンジーやゴリラ、オラウータンなどは、“ほぼヒト”なのです。

その中で、チンパンジーだけが口角を上げるという動作をします。

これを、専門用語で「グリン」と言います。
笑っているのでないとしたら、このグリンには一体どんな意味があるのでしょう?

一般にチンパンジーは極めて好戦的な動物です。

ボノボという種はとても平和的でめったに喧嘩しませんが、この種はチンパンジー全体の1割くらいしかいません。
9割は、必ず戦って優劣を決める種です。

群れをつくる動物には必ず序列という格付けが存在しますが、
チンパンジーの場合は戦い、すなわち喧嘩によってその序列を決めるのです。

しかし、喧嘩するには大変なエネルギーを使います。

怪我をするかもしれません。

でも時には、相手の体型を見ただけで、明らかに負けることがわかる場合だってありますよね。

実は、グリンをするのはその時です。

すなわちグリンとは、「私はあなたに屈します。あなたとは戦いません」という降伏のサインを意味するのです。

口角を上げる動作は、和平のしるしだったのです。
「私はあなたには敵意を抱いていません」、「私はあなたの味方です」という無言のサインなのです。

そして、そのサインを認識するために笑顔細胞があるのです。

笑顔がもたらす情報は、生存のためには極めて有益な情報です。
なぜなら、喧嘩による怪我や体力の浪費を避けられるからです。

しかも、DNAから直接もたらされる本能に近い情報ですので、
理屈抜きで相手への警戒心がなくなり好意さえ生まれます。

また、笑顔は伝染することがわかっています。

モニター画面に様々な人の表情を見せて、それを見ている被験者の様子を調べた心理学実験があります。

まず、被験者の顔に電線をつけます。

そして、表情筋に生じるわずかな電位変化を読み取って、その数値から被験者の表情を解読したのです。
その結果わかったことは、笑顔は伝染するということでした。

いや、笑顔だけではありません。

怒り顔も不満顔も、ありとあらゆる表情がすべて伝染するのです。

これも細胞の仕業です。

ミラー・ニューロンという細胞が、目にしたものをまるで鏡のように真似せよと命ずるのです。

もし、あなたが管理職なら肝に銘じるべきです!

あなたの表情が、職場の雰囲気を作ってしまっていることを。

メンタル不全者が多発している職場なら、その原因のひとつは管理職の表情かもしれませんよ。

いくらビジネスの戦場とは言え、笑顔が全く見られない職場が多すぎるような気がしてなりません。

さらに、笑顔はその人の心を明るくする作用があるということが、ストラックらの実験で証明されています。

この研究の面白いところは、“作り笑顔”でも効果があるということです。

私たちは今まで、楽しい事やうれしい事がないと笑顔になれないと思っていました。

逆なのです。
笑顔でいることで、楽しい事やうれしい事が起きるのです。

あなたが笑顔になることで、あなた自身の考え方も前向きになるし、
その笑顔が伝染した周りの人もまた、笑顔になって心が前向きになるのです。

最近は、医学的にも笑顔の効用が明らかになっています。

よく笑う人は免疫系が非常に活性化するので、病気にかかりにくいことがわかっています。

まずNK細胞です。

ナチュラルキラー細胞といって、ガン細胞をバリバリ食べてしまうとても心強い細胞ですが、
これが非常に活発に動き出します。
ですので、よく笑う人はガンになりにくいと言えます。

あとは、免疫グロブリンのIgG やIgM、さらにはγインターフェロン、補体など
数多くの免疫系細胞が活性化することもわかっています。

しかも、リウマチの痛みの原因物質を少なくしたり、血糖値の上昇を抑える効果も確認されています。

いいことばかりではありませんか。

笑顔は強力な「健康サプリ」なのです。
しかも、うれしいことにお金がかかりません。

でも、楽しい時に笑うのは誰でもできます。

そうではなく辛い時、苦しい時にこそ笑うことが大事なのです。
作り笑顔でいいから、とにかく笑うのです。

作家の浅田次郎は、「なぜ笑うかというと、それは笑っていないと泣いてしまうからだ」と言っていますが、その通りです。

まずは今日から、職場で笑顔を意識してください。
きっといいことありますよ。

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