株式会社ファイブスターズ アカデミー

あなたは、デパートなどで初めての売り場に足を踏み入れたとき、
直進しますか？　それとも左手の方向に進みますか？　右手の方向ですか？

空間心理学者の実験では、多くの人が左手の方向に、壁づたいに歩くようです。
おそらく、心臓のある左側を守ろうとする意識が働くためと言われていますが、
たしかにエレベーターのボタンも、入って左側に回り込んだ位置にあります。
地下道などで自由に行きかう人々を観察すると、ほとんど左側通行です。
やはり人間は、心臓のある側を無防備にさらけ出すことには抵抗があるようです。

しかし、このことは、売り場づくりにとって大きな問題を生じます。
なぜなら、左手の方向へ回り込んで買い物をした場合、壁面のゴンドラ(壁面棚）
には左手が近くなり、右手が遠くなります。

壁面ゴンドラは最大の売れ筋場所で、売り場の真ん中あたり（中島）に置かれている
ゴンドラの2倍以上売れると言われています。
来店客の多くは右利きですから、壁面ゴンドラに対して右手が遠くなることは
売り上げが伸びないことを意味します。

そこで、多くの店では、来店客を右手方向に誘導するしかけがされています。
スーパーを見てみましょう。
まず、果物売り場を右手方向に設けます。
鮮やかな色と香りで、買い物客は自然とこちら側に向かいます。
そして、背の高い中島ゴンドラを置くことにより、心臓の側が守られているという
安心感を与えて奥へと誘います。

毎日何気なく買い物をしている売り場にも、人間の心理を科学的に研究し
尽くした、さまざまな秘密が隠されているのですね。