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5☆s 講師ブログ

スピークイージー(3)

なんと政治の中枢にいる者たちが、裏社会から酒を入手していたのです。
ワシントンでは、ホワイトハウスに持ち込まれるバーボンの大半はリーマスが出どころだという噂が立つほど。

しかし、悪事はいつか裁きを受けます。
リーマスは連邦大陪審によって起訴され、刑に服することになりました。

ところが、刑務所の中で妻の浮気を知って怒り狂ったリーマスは、仮釈放されるや否や妻を殺害してしまいます。
それでも、最終的に「心神喪失」で無罪判決を勝ち取ることができたのは、有力政治家たちと“お友達”だったからでしょうか。

しかし、そんなリーマスも、かつての商売に戻ることはできませんでした。
不在にしていた10年の間に、酒の密売に関するビジネスはすっかりギャングに握られてしまっていたからです。

つまり、ギャングが酒の密売を牛耳るずっと前から、アメリカの権力者たちは腐敗していたのです。

禁酒法は、裏社会と政治を結びつける役割を果たしてしまいました。
その切っても切れない関係は、後に大きな悲劇を生む火種となります。

その頃、儲け話に特別な嗅覚を持つ、ジョセフという一人の男がいました。
ジョセフは禁酒法の施行直前に、アメリカでもっとも収益の大きい三つの酒、すなわちゴードンズ・ジン、デュアーズ、ヘイグ&ヘイグの販売代理権を押さえます。

彼は、酒の密売ビジネスで巨額の富を築いたアル・カポネやラッキー・ルチアーノと同様に、一攫千金を目論んでいました。

ただ、彼らと違っていた点は、密売ビジネスで得た利益を株につぎ込んだことです。

1929年10月24日の「暗黒の木曜日」の直前、株式市場の暴落情報をキャッチしたジョセフは、全ての持ち株を売り抜いて巨額の利益を手にします。

もっとも、「インサイダー取引」という概念がなかった頃の話ですから、マトモな形でこの情報を入手したとは考えられませんが。
彼は、その薄汚れた手で築いた財産を、息子を政治家として成功させるために注ぎ込みます。

協力を求めた先には、もちろん裏社会も入っていました。

ジョセフのフルネームは、ジョセフ・ケネディ。
息子とは、43歳で第35代アメリカ大統領に就任したジョン・F・ケネディのことです。

しかし、このギャングの後押しにより当選した若き大統領は、ダラスの地で凶弾に倒れてしまいます。

実は、この暗殺事件も禁酒法と無関係ではありませんでした。
ジョセフが、密造酒ビジネスを通じて知り合ったシカゴの大物ギャング、サム・“ムーニー”・ジアンカーナが関わっているのです。

アンカーナはシカゴの貧しいイタリア街に生まれ、アル・カポネの手下としてあの「聖バレンタインデーの虐殺」にも関与した人物。
フランク・コステロから命を狙われたジョセフが助けを求めてきた時には、間に入ってジョセフに恩を売ったこともあります。

コステロとは、ニューヨークの五大ファミリーを束ねる「コーサ・ノストラ」のボスで、“暗黒街の首相”と言われた男。
と言うより、映画『ゴッドファーザー』でマーロン・ブランドが演じた、ヴィトー・コルレオーネ役のモデルと言った方がわかりやすいかもしれません。

この男は、議会公聴会から召喚され「善良なるアメリカ国民として、どんな行いをしましたか?」と質問された時、ふてぶてしくも「税金をキチンと納めました」と言い放った人物です。
なぜ、こんなにも議会を舐めていたかというと、政治のトップと繋がっていたからです。
禁酒法時代のジョージ・リーマスと同じですよね。

ジョセフから「息子を大統領にしてほしい」と懇願されたジアンカーナは、買収などあらゆる非合法工作を行いました。
その甲斐あって、ジョンは見事に大統領選挙に勝利。

ところが、その大統領は就任した途端に手の平を返し、まるで父親と裏社会との癒着の痕跡を消し去るかのように、ギャングに対して厳しい取り締まりを行います。

ジアンカーナの怒りは頂点に達しました。
サム・ジアンカーナと弟チャックの共著『アメリカを葬った男』の中に、ジアンカーナの手下がマリリン・モンローを自殺に見せかけて殺害した手口が、微に入り細に入り詳しく描かれています。
さらには、大統領暗殺作戦についても。

ジアンカーナが深く入り込んでいた組織は政財界、ハリウッド、ラスベガス、さらにはローマ・カトリック教会と実に広範囲に渡りますが、驚くべきはその中にCIAも含まれていたことです。

ジアンカーナは言います。
「コインには二つの面がある。それが俺たちさ。組織とCIA、つまり同じコインの表と裏だ」

キューバ侵攻作戦失敗の全責任を負わされたCIAの怒りと、暗黒街の思惑とが完全に一致したのです。
暗殺の単独犯として逮捕されたリー・ハーベイ・オズワルドは、かつて海兵隊に所属し、在日米海軍情報部基地で諜報員として訓練を受けていたCIAのスパイ。

そのオズワルドを警察署内で殺害したジャック・ルビーは、長年に渡りジアンカーナの「ダラスの手下」として、組織に麻薬や武器を流していた男です。
ジアンカーナの命令で、キューバからの亡命者に武器や弾薬を渡していたジャックに、愛国心などあるはずがありません。

この自伝に書かれている内容がどこまで本当かわかりませんが、真実というのは歴史の闇に葬られるのが相場。
ウォーレン委員会の報告書が公開されても、おそらく真相が明らかになることはないでしょう。

でも、不思議なことがあります。
なぜジアンカーナが、良好な関係にあったリチャード・ニクソンではなく、忌み嫌っていたはずのジョセフ・ケネディの陣営についたのかということです。

ジアンカーナによれば、「ニクソンにはすでにあちこちのボスが絡んでいたため、当選させても“うま味”が少なかったから」だとか。

アメリカの闇は、私たちの想像以上に深く、そして広いようです。
どこの国でもそうですが、裏社会は必ずエスタブリッシュメント(支配階級)と結びつきます。

もちろん日本も例外ではありません。
でも、両者の癒着がアメリカほど酷くないのは、日本では禁酒法が施行されなかったからかもしれません。

どうやら、酒に関する法律というのは、国のありようまで変えてしまうだけのパワーがあるようです。

 

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