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5☆s 講師ブログ

円安でボロ儲け(2)

なぜ今回だけ、財務省はマスメディアを使って「7.6兆円の税収減」を大々的に喧伝したのでしょう。
おかしな話です。

そもそも、減税すると確かに税収は減りますが、その一方で消費が増えることで経済は活性化し、法人税や消費税、消費税の税収が増えます。
つまり、減税は税収にとって、マイナスとプラスの両方の面があるということです。

では、経済が活性化するメカニズムを見てみましょう。
今、ある人が減税による臨時収入を使って、何か商品を買ったとしましょう。
すると、その商品を売った人の収入が増えます。

次に、その収入が増えた人が何かを買うと、それはまた別の誰かの収入になります。

その人がまた何かを買うと・・・。
このように、消費は連鎖的増えていきます。
こうやって世の中の消費がどんどん増えていくことで、法人税や所得税、消費税などの税収が増えるのです。

でも、問題は消費が増えることで、経済がどのくらい活性化するかということです。
それは、「乗数効果」がどのくらいかによります。

「乗数」とは、最初の臨時収入の何倍の経済効果があるかを示す値です。
経済学のテキストには、「乗数」は人々の「追加的所得に関する限界消費性向」により決まると書いてあります。

難しい専門用語に聞こえますが、簡単に言うと「臨時収入のうち何割を消費に回すか」ということです。
具体的には、1から「限界消費性向」を引いた逆数が「乗数」になります。

早速、計算してみましょう。
人々が臨時収入の5割を消費に回した場合の乗数は「2」、8割を消費に回した場合は「5」になります。
「5」の方が大きいので、できるだけ消費に回した方が景気はよくなるということがわかります。
当たり前と言えば当たり前ですが、重要なことは数字で「見える化」したことです。

今回野党から提出された、103万円の壁を178万円まで引き上げる案に関して、財務省は「7.6兆円の税収減になる」と発表しましたが、これは乗数効果を全く無視した数字です。

どうして無視したのでしょう?
それは、乗数効果が得られないケースが、理論上はあり得るからです。

どんなケースかというと、「臨時収入を1円も消費に回さず、全額貯蓄する」場合です。
おそらく、財務省はこれを前提にしたのでしょう。

でも、この物価高の中で果たしてこの前提は現実的と言えるでしょうか。

なぜこんな乱暴な試算結果が世の中に出回ったかというと、マスメディアが一切検証しなかったからです。
というより、検証する能力がなかったという方が適切でしょう。
だから、こんなバカげた「大本営発表」が堂々とまかり通ってしまったのです。
マスメディアが、もう少し真面目に経済学を勉強していれば、この“誤報”は避けられたはずです。

加えて、7.6兆円という数字の根拠が、非常にラフなものだったことも明らかになりました。
そもそも、野党が要求した178万円という数字は、48万円だった基礎控除額を75万円ほど引き上げて103万円に設定し、その103万円に多くのサラリーマンが適用されている、給与所得控除の適用額55万円を加えたものです。

財務省が発表した7.6兆円という数字は、現在の48万円の控除で失われたと思われる税収額を48で割り、それに単純に75を掛けただけのものでした。
随分ラフですよね。
まるで小学生の算数みたいです。

当たり前の話ですが、日本が経済成長すれぱ税収は増えます。
財務省は「税収減となる7.6兆円の財源を示せ」と言いますが、そもそも日本の経済成長こそが財源にならなければいけないのです。
財務省の主張は、日本の経済が1ミリも成長しないことを前提としています。
そんな議論に果たして意味はあるのでしょうか。

ここからは少し専門的になりますが、実質的に経済が成長しなくても、税収が増えることはあります。
それは、「名目成長率」がプラスになる時です。

要するにインフレです。
インフレ率と同じだけ給料が上がっても、実質的な給料が増えたことにはなりませんよね。
でも、名目所得が増えるので、取られる所得税は増えます。
ねっ、実質的には1ミリも経済成長しなくても、国の税収は増えるでしょ。

GDPの名目成長率の伸びに対して、税収がどれくらい増えるかを「税収弾性値」といいます。
具体的には、税収の伸び率を名目GDP成長率で割って算出します。
もし、名目GDP成長率が1%伸びた時、税収も1%増えていれば「税収弾性値」は「1」です。

では、日本の税収弾性値は、どれくらいなのでしょう?
第一生命経済研究所の長濱利廣によると、2021年度は「4.2」、翌22年度は「3.0」だったそうです。
年度により結構差がありますが、経済学者の分析は概ね「2~3」の間に集中しています。
今、日銀はインフレ目標を「2%」に設定していますので、たとえ実質成長率がゼロであったとしても、税収は4~6%増えるという計算になります。

ところが財務省は、この税収弾性値を「1.1」という異常に低い数値に設定しています。
なぜでしょう?
どうせマスメディアや国民は「税収弾性値」など知らないから、低めに設定して税収を少なく見積もってもバレないと踏んでいるのでしょうか。

財務省が手取り増のメリットには一切言及せず、ただただ「7.6兆円の財源を示せ」とデメリットだけを主張しているのは、もしかしたら日本が再びデフレになると予想しているからかもしれません。
デフレにするのは簡単です。

財務省が日銀総裁をコントロールして、金利を大幅に上げさせればいいだけです。
でも、住宅ローンを組んでいる人は大変です。

自己破産者が続出し、街には失業者が溢れるでしょう。
これはあり得ない話ではありません。

というのは、金利が上がれば銀行の儲けが増えるからです。
意外に思うかもしれませんが、財務省は国民の利益より、銀行の利益の方を優先して考える傾向があります。

ウソではありません。
その謎解きは後半でします。

さて、財務省の“狂信的”とも言える「財源論」は論外としても、日本を豊かにすることが仕事であるはずの政府までが、一緒になって「財源論」を唱えているのはあまりに無責任です。
政府が野党に「財源を示せ」と要求する行為は、自分たちが無能であることを認めることに他なりません。
しかし、そうは言っても現実問題として、国の予算を作る時に収入見込みが7.6兆円も減少するのは確かに大変なこと。
でも、本当にそうでしょうか?

視点を変えて、予算ではなく「決算」の方に目を向けてみましょう。
2023年度の国の決算を見ると、「余剰金」が計上されています。

所謂「遣い残し」ですが、これが12兆6千億円も計上されています。
百歩譲って予算が7.6兆円減ったとしても、決算で12兆6千億円も余っているわけですから、何の問題もないではありませんか。

実は、決算では毎年これくらいの遣い残しが生じています。
現在は、財政法第6条で遣い残しの半分は国債などの償還に回すことが決められていますが、必要ならその法律を改正すればいいだけの話。
財源は結構あるのです。

もし、財務省のスタンスが「国民が貧しくなっても国が儲かればいい」というのであれば、それはまるでどこかの国と同じですよね。
それとも財務省には、国民の生活がどんなに苦しくても、減税だけはしてはならないという「教典」でもあるのでしょうか。

実は、円安で国がボロ儲けするタネは他にもあります。

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