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5☆s 講師ブログ

為替レート決定のメカニズム(2)

アベノミクスの場合はちょっと違いました。
金利がほぼゼロ水準だったため、これ以上金利を下げられなかったのです。
そこで、日銀が国債を大量に直接買い入れることで、市場に供給するマネタリーベースを増やす方法をとりました。

これが「異次元の金融緩和」です。

でも、マネタリーベースや金利水準だけで、為替の動きが100%説明できるわけではありません。
説明がつくのは大体7割くらい。

残りの3割は、投資銀行やヘッジファンドといった、所謂「投機筋」の動きが関係してきます。
彼らは、常に市場の動きを先読みすることで利益を上げます。
だから、実際に金利が動く前に資金を動かします。

投機筋の資金は株式市場にも投入されていますが、為替市場の場合は規模が桁違いに大きいのです。
貿易品の輸出入に伴う「実需」の取引など足元にも及びません。

そのため、為替マーケットは投機筋の資金の動きに大きく影響されます。
そのことを踏まえて、2024年8月初めに1ドル160円から一気に141円まで動いた急激な円高について解説しましょう。

アメリカがコロナ禍収束後に高インフレに見舞われたため、FRBが強烈な金融引き締めに転じたことはすでに説明しましたよね。
つまり、金利を大幅に引き上げることで、マネタリーベースを減らしたわけです。
でも、高インフレは収まりませんでした。

そのため、FRBは継続して金利を引き上げざるを得なくなり、最終的にアメリカの金利はかなり高くなってしまいました。
一方、日本は低金利のままだったので、両国の金利差はかなり広がりました。
そこで、投機筋は一斉に「円キャリー・トレード」に走ったのです。

ここから、いよいよ「円キャリー・トレード」の説明に入りますので、あなたも投機筋の人間になったつもりで聞いて下さいね。

まず、資産運用するためには資金が必要です。
資金を借りる時、金利はできるだけ低い方がいいですよね。
金利が低いのは日本です。

当時は約1%。

日本で調達するとなると、当然「円」で借りることになります。
でも、その円で日本国債を買ったとしても、国債の利回りも約1%。

これでは利鞘が稼げません。
そこで、国債の金利が高い国を探すとしましょう。
とは言え、いくら国債の金利が高くても、財政破綻しそうな国はやめておきますね。

候補に上がったのは、アメリカ国債。

当時のアメリカ国債(ドル債)の利回りは約4%。
借金の金利が1%ですから、差し引き3%が手元に残る計算です。

つまり、3%の利鞘が稼げるのです。
ドル債でなくても、配当の高いアメリカ株でもOK。

このように日本円で資金を調達し、それをドル債などの外債で運用することを「円キャリー・トレード」といいます。
この取引では、途中で円をドルに換える必要がありますが、その際「円売り=ドル買い」が生じます。
なので、円キャリー・トレードが増えれば増えるほど、「円安ドル高」が進むことになります。

今回は、この円キャリー・トレードがとんでもない暴走をしてしまいました。
強欲な投機筋が、調子に乗ってこの取引をやり過ぎたのです。
彼らがあまりに大量の円をドルに換えたため、為替レートは理論値からどんどん離れていきました。
さすがにこれはちょっとやり過ぎかなと不安が芽生え始めた時に、日銀の利上げ発表があったのです。

しかも、直後にはアメリカの失業率がはね上がったことが発表され、投機筋の間でFRBが利下げに転じるだろうという予測が広がります。

日本では利上げ、アメリカでは利下げ。
そうなると、日米の金利差は縮小します。
3%あった利鞘も当然縮小します。

そのため、投機筋は慌ててポジションの解消に走りました。
今までの「円売りドル買い」とは逆に、「ドル売り円買い」が急増したのです。
ドル売りはドル安(=円高)をもたらします。

このドル売りがあまりに巨額だったため、一気に141円まで円高が進みました。
そして、この急激な円高ドル安が二次災害をもたらします。

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