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5☆s 講師ブログ

円安は国力を弱めるのか?(3)

「フィリップス曲線」が意味するところは、インフレ率と失業率にはトレードオフの関係、すなわち「負の相関関係」があるというものです。
簡単に言うと、インフレ率が高くなれば失業率は下がり、逆にインフレ率が低くなれば失業率は高くなるということです。

だから、世界の中央銀行は過度なインフレにならないように注意するだけでなく、インフレ率があまりに低くなりすぎないよう、つまり失業率が高くなりすぎないよう気をつけながら金融政策を行っているということです。
要するに、インフレ率と失業率がちょうどよくバランスする点を目指しているのです。

そのバランスする点のことを、「目標インフレ率」といいます。
現在、日本を含めアメリカやヨーロッパの目標値はだいたい2%です。

もし、「目標インフレ率」を大幅に下回ると、失業者が大量に出てしまいます。

失業者の増加は、自殺者の増加に繋がります。
これが、インフレよりデフレの方が深刻な理由です。

日本でも、デフレの時に自殺者が急増したことは、皆さんよく覚えていますよね。
ところが、この世界の中央銀行の常識である「目標インフレ率」の設定を、日銀は2013年まで頑なに拒み続けてきました。
これでは、人命よりもインフレ抑制を優先したと解釈されても、言い訳のしようがないではありませんか。

日銀は、自身の政策が人命に直結していることを肝に銘じるべきです。
日銀が失業率に責任を負わないのは、日銀法に書かれていないからだと言う人がいますが、アメリカだって法律には書かれていません。
でも、アメリカの中央銀行であるFRBはちゃんと対処しています。
要するに、日銀の意識の問題です。

こんなことだから、「デフレの原因は少子化である」などというトンデモ説に賛成する日銀総裁まで出現してしまうのです。
見苦しい言い訳をするにもほどがあります。

この発言をした総裁は、東大時代の恩師でもあるイェール大学名誉教授の浜田宏一からこっぴどく叱られましたが、いずれにせよ現実世界でデフレを引き起こしたことで、日銀のレヴェルがいかに低いかを世界にアピールしてしまった罪は重いと言えましょう。

ちなみに、この「デフレの原因は少子化である」というトンデモ説を、『デフレの正体』という本で唱えた藻谷浩介は、今まで経済学の本など一冊も読んだことがないと豪語していた人物です。

でも、この話が深刻なのは、過去の笑い話ではないということです。
というのは、藻谷は、今年9月に誕生した与党第一党の新総裁のブレーンを努めていると言われているからです。

政治家はなぜ、こんな経済学の知識のない人を重用するのでしょう?
その理由は、政治家にも経済学の知識がないからです。

日本の政治が問題なのは、経済学の知識がないのは与党だけではないことです。
野党も経済学の知識がありません。

先月の衆議院選挙の際、野党第一党が驚くべき公約を掲げました。

なんと、「2%」に設定されている目標インフレ率を「0%超」に修正するというのです。

どういうことでしょう?
「0%超」ということは、インフレ率が0.1%でも、逆に100%でもOKというです。
0.1%では、かなりの数の失業者が生まれてしまいます。
逆に100%というのは、物価が2倍になることです。
本当にこれでOKなのでしょうか?

おそらく、この党の経済ブレーンは、「フィリップス曲線」など見たことも聞いたこともないのでしょう。
もしかしたら、ブレーンを務めているのは中学生なのかも。

ちなみにこの選挙では、与野党の第一党がともに2020年代に最低賃金1,500円を実現するという目標を掲げましたが、これも経済学の知識がない人の発想です。
これを実現するためには、5年連続で7.4%のインフレを実現する必要があります。
それでもいいのでしょうか。

法律で強制することもできますが、そうすると大量の失業者が出ます。
例えば、現在時給1,055円のアルバイトを3人雇っている事業主の場合、時給1,500円を実現するためには3人のうち1人をクビにするしかありません。
これは、机上論ではありません。

文政権下の韓国で実際に起こった悲劇です。
政策ブレーンたちは、お隣の国の事情も知らないのでしょうか。

なぜ、政治家は経済学を学ぼうとしないのでしょう?
それは、どんなにポンコツな経済政策を発表しても、マスメディアから批判されないからです。

なぜ批判されないかというと、マスメディアも経済学の知識がないからです。
だから、『デフレの正体』というトンデモ本が、マスメディアで好意的に取り上げられたりするのです。

ちなみに、世界の歴史を見ても、少子化がデフレをもたらしたケースなど一例もありません。
後に日銀の政策委員会審議委員を努めた安達誠司は、2012年に出版した『円高の正体』の中で次のような指摘を行っています。

1988年以降生産年齢人口が減少しているグルジア、モルドバ、ブルガリア、日本、ウクライナ、ドイツ他東欧5ヵ国の状況を分析したところ、消費者物価がマイナスになっていたのは日本だけでした。

そうなのです。
デフレはあくまで金融的な現象なのです。
これは経済学の常識です。

金融的な現象には、金融政策で対処するしかありません。
その金融政策がアベノミクスでした。

黒田日銀が、異次元の大規模金融緩和へと大きく舵を切った結果、雇用は400万人も増えました。
失業率が低下したことで、自殺者も一気に減少しました。

一部で、平均賃金が減少したことを理由にアベノミクスは失敗だったと主張する人がいますが、これも経済学の知識がゼロの人です。

考えてもみて下さい。
新規雇用者の賃金は低い水準から始まるので、新規雇用が増えれば増えるほど平均賃金が下がるのは当たり前のことです。
これも経済学の常識です。

アベノミクスのおかげで、10年かかりましたがようやくデフレ脱却の目処がつきました。
この金融緩和によって為替レートも円安に戻り、120~130円台の水準で安定しました。

しかし、コロナ禍が明けると、アメリカは急激な高インフレに見舞われます。
インフレを抑えるために金融引き締めを行った影響で、160円を超えていたドル円レートは、一気に141円台へと急上昇しました。

もし、円高により国力が増すという説が正しいなら、日本の国力は3日間で10%も増した計算になります。
一方、4万円を超えていた日経平均は一気に3万1千円台へ大暴落。

この下落幅は史上最大です。
円高で国力が強くなるという理屈が正しいなら、なぜ株式市場は大暴落したのでしょう?

マスメディアは、「円安で国力が弱まる」というデマを、一体いつまで流し続けるつもりなのでしょうか。

そろそろ訴えられてもいい頃ですよ。

 

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