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5☆s 講師ブログ

スターリングブリッジの戦い(4)

実は、アメリカ軍が日本語を廃止しようとしていたことが、近年になって明らかになりました。

厚木基地に、コーンパイプを咥えたマッカーサーが降りたってから3日後の1945年9月2日。
全権代表の外務大臣・重光葵(まもる)は、東京湾に停泊する戦艦ミズーリ号の艦上で降伏文章にサインしました。

ところがその夜、GHQの東京移転に関する打合せをしていた横浜終戦連絡事務局長・鈴木九萬(ただかつ)は、リチャード・J・マーシャル参謀次長から驚くべき情報を聞かされます。

翌3日の朝10時をもって、日本国民に宛てた「布告」が発布される予定だというのです。
布告には「円表示B型軍票」、俗称「B円」と呼ばれるアメリカ軍発行の紙幣が発行されることが記載されていました。

もしそうなれば猛烈なインフレが起こり、日本経済が大混乱に陥ることは、かつて日本陸軍が中国や東南アジアの国々で軍票を発行した経験からも明らか。

さらに布告の第一号には、「日本国並びに住民全てに対して軍事的統制権を樹立する」という、「直接軍政」の意向が示されていました。
そこには、「英語を公式語とす」という記載まであったのです。
なんと、アメリカ軍は日本語を廃止して英語に統一しようとしていました。
数時間後には、日本語は廃止されてしまう運命にあったのです。

鈴木はすぐにこの事実を重光らに報告し、外務省終戦連絡中央事務局長官の岡崎勝男と共に、日付の変わった深夜のGHQを訪ねます。
そして、寝ていたマーシャル参謀次長を叩き起して必死の説得を試みたのでした。

二人の熱意に圧倒されたマーシャルは、怒ることも忘れ話に聞き入ります。
30分後、マーシャルは取り敢えず布告の中止を約束してくれました。
しかし、安心はできません。

翌朝9時、重光外務大臣と岡崎長官はアポなしでマッカーサーを訪ねます。
そして、マッカーサーの口から「私の権限で布告を全て取り止める」という一言を引き出すことに成功したのでした。

布告を知らしめる10万枚のポスターは、人知れず密かに焼却されました。

しかし、沖縄だけは例外でした。

今、私たちが当たり前に使っている日本語は、岡崎や鈴木らの奮闘により辛うじて守られた言語なのです。

そんな歴史も知らずに、「美しい日本語」などと呑気に自画自賛している日本人は、なんともお目出度い民族です。
この国で、唯一「直接軍政」の苦しみを知っているのは沖縄の人たちだけです。

多くの日本人は、武力で征服された国民の、あの筆舌に尽くしがたい屈辱を味わっていないのです。
それどころか、むしろ占領されたことによって、軍部の圧政から「解放」されて「自由」を手に入れた感さえあります。

なにせ征服された側の子どもが、征服した側の兵士に「ギヴ・ミー・チョコレート」などと言って群がっていたのですから。

四方を海に囲まれた日本は、沖縄を除けば外国勢力によって武力征服されるという屈辱の歴史を持たない、世界的に見ても極めて稀有な国です。

私たち日本人は、建国以来「平和」と「祖国の自由」を天秤にかけなければならないほど、ギリギリの状況に追い込まれたことがありません。
そういう意味では、日本国の歴史は「楽園」の歴史と言ってもいいでしょう。

だから、どうしても「祖国」という意識が希薄になってしまいます。
日本人にとって「祖国」とは一体何でしょう?
命を懸けてまで、守らなければならない存在なのでしょうか?

考えてみると、太平洋戦争だって「祖国」のための戦いではありませんでした。
その証拠に、日本兵は皆「大君(おおきみ)の盾」にならんとし、「天皇陛下、万歳!」と叫びながら死んでいったではありませんか。

もし、太平洋戦争が祖国の自由を求める戦いであったならば、「一億総特攻」とか「一億総玉砕」といった発想は絶対に出てこないはずです。

ふと、寺山修司の短歌を思い出しました。
「マッチ擦る   つかの間の海  霧深し  身捨つるほどの  祖国はありや」
幸か不幸か、私たちはその問いを突きつけられることなく今日に至っています。

「和平を得るためにここに来たのではない」というウィリアム・ウォレスの言葉は、そんな私たち日本人に、何かとても大切なことを教えてくれているような気がしてなりません。

長い間イングランドに支配され続け、抑圧され続けた国スコットランド。
そのスコットランドが支配者に戦いを挑み、勝利したケースは数えるほどしかありません。
それはすなわち、勝利の美酒に酔いしれる機会も、極めて少なかったことを意味します。

もしかしたら、その数少ない甘美な思い出に浸るために、スコットランドの人々はわざわざ甘口のウィスキーを造ったのではないでしょうか。

 

 

 

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