株式会社ファイブスターズ アカデミー

まずはお気軽に
お問い合わせください。

03-6812-9618

5☆s 講師ブログ

スターリングブリッジの戦い(2)

戦闘態勢が整ったウォレス軍とは対照的に、イングランド軍は大混乱に陥っていました。
というのは、エドワード1世がフランス国王フィリップ4世と、ガスゴーニュで戦っている真っ最中だったからです。

あまりの混乱状態だったため、何をどう間違ったのか指揮官が2人並び立つ事態が出現してしまいます。
実戦経験豊富なスコットランド総督サリー伯ジョン・ド・ワレンの方はまだわかるのですが、不可解なのは戦闘の経験がなく、ただ単に苛烈で残忍な性格だけが取り柄の財務長官ヒュー・ド・クレッシンガム。
しかもこの男は、ひとりでは馬に乗れないほどの肥満体でした。
軍隊の指揮官として相応しくないのは誰の目にも明らか。

でも、そんな状況にあっても、イングランド軍には楽勝ムードが漂っていました。
なぜなら、戦いの趨勢に大きな影響を与えるはずのスコットランド貴族たちが、揃いも揃って傍観を決め込んでいたからです。
所詮はウォレスとモレーという、ニ人の“跳ねっ返り”が起こした反乱です。
イングランド軍が、苦もなく制圧できるだろうと考えていたのも無理はありません。
フォース川南岸にあるスターリング城を救援したイングランド軍は、次の目標をスターリングブリッジの確保に定めます。

橋を渡れば、ウォレスが陣取るオウキル・ヒルズは目と鼻の先。
この時のイングランド軍の陣容はというと、重装備の騎兵1千に加え、歩兵が5万。
しかもこれとは別に、第二軍として重装備騎兵3百と歩兵8千が、スターリングに向かって進軍を開始していました。
かなりの大軍です。

ワレンは慣例に従って降伏を勧告する使者を送りましたが、圧倒的な大軍を目の当たりにすれば簡単にひれ伏すだろうと読んでいました。

ところが、使者と対峙したウォレスは毅然とした態度でこう言い放ちます。

「帰って伝えよ。われらは和平を得るためにここに来たのではない。われらは準備ができている。汝らに復讐し、祖国の自由を取り戻すための戦いへの」(桜井俊彰訳)  

ウォレスの願いは平和ではなかったのです。

祖国の自由だったのです。

やむ無く使者たちは帰途につきましたが、彼らも手ぶらで帰ってきたわけではありません。
ウォレスたちの陣容をつぶさに観察し、敵の兵力を完璧に見抜いていました。

歩兵の数は約4万。

しかし、軽騎兵は2百にも満たず、しかもその装備は丸盾や短剣、槍程度といたってお粗末なもの。
元々ウォレス軍は民衆兵の集まりです。
数においても装備においても、イングランド軍とは比べるべくもありません。

ただ、イングランド軍にとって最大の問題は橋でした。
フォース川にかかるスターリングブリッジは、非常に幅が狭く二人並んで歩くのがやっと。

5万8千の歩兵と、1千3百の重装備兵の全てが橋を渡り切るまで、一体どれくらいの時間がかかるでしょう。
しかも、橋を渡った先に続く道も幅が狭く、縦長の隊形を取らざるを得ません。

もっと厄介なのは、道の両側に湿地帯が広がっていることです。
重装備兵が足を取られる恐れがあるため、隊を横に展開することができません。

数の上では圧倒的に優位ではありますが、大軍の強みを活かせない懸念があったのです。

この問題に気づいたワレンは早速軍議を開きますが、意見百出となり話し合いは二転三転。
ところが、紛糾する軍議にいきなり終止符を打つ者が現れます。
尊大にして粗暴、味方からも嫌われている財務長官クレッシンガムです。

「貴卿らはいったいいつまでここに長々と止まっているのだ!これではまったく国王陛下の国庫の無駄遣いではないか。すぐにでも全軍進軍し、われらの責務を果たすのだ!」  
戦場で「国庫の無駄遣い」という的外れな発言をするあたりは、いかにも財務官僚です。

でも、議論が堂々巡りを続ける中では、ワレンもこの案に同意せざるを得ませんでした。
翌9月11日の早朝からイングランド軍は渡橋を開始しますが、昼過ぎになっても対岸に渡ることができたのは半数ほど。

その時です。
突然、辺りに角笛の音が響き渡ります。
これを合図に、ウォレス軍の主力部隊が疾風のごとく丘を駆け下ってきました。

そして、橋の先に続く細長い小道を進んでいたイングランド軍の横っ腹めがけて、猛攻撃を仕掛けてきたのです。
慌てたイングランド兵たちは湿地に逃げ込みますが、案の定重装備のため泥濘に足を取られて身動きがとれません。

彼らの中には長弓を携えたウェールズ兵もいましたが、そもそも彼らが参戦している理由は、ウェールズがエドワード1世に征服されたためです。
士気は著しく低く、当たり前のことですがイングランドへの忠誠心など微塵もありません。
イングランド軍の大半は、武器を捨て橋を目指して一目散に逃げ出します。

この時ウォレス軍の別働部隊は、スターリングブリッジの梁の切り倒しに取りかかっていました。
橋が落とされると、もうイングランド軍は戻れなくなります。

初めての方へ研修を探す講師紹介よくある質問会社案内お知らせお問い合わせサイトのご利用について個人情報保護方針

© FiveStars Academy Co., Ltd. All right reserved.