株式会社ファイブスターズ アカデミー
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怪しげな金融商品を販売する詐欺事件が起きると、様々な意見が飛び交います。
多くは犯人を非難する人ですが、中には騙される方が悪いという人もいます。
さらには、警察や行政が防止策を講じるべきだと主張する人まで出てきます。
このように、特定の出来事に対する考え方は人によって違います。
これが多様性だという人がいますが、そんな簡単な話ではありません。
人間の思考を司るのは、言うまでもなく「脳」。
ということは、多様な考えが生じる源は、各自の「脳」ということになります。
脳科学では、人によって考え方が異なることを、「マインドセット」と言います。
専門的な定義では、「各自の脳の中に作られた、外界を解釈するための記憶をベースにした自分だけの世界」となるそうです。
もともとは心理学の用語で、簡単に言うと考えや行動を左右する判断基準のようなものをいいます。
巷では、「思考の癖」とか「脳の癖」という風に説明されることがあります。
また、ビジネスの文脈では、「組織の理念」というように随分堅苦しく使われたりもします。
一般にマインドセットは、新たな経験をしたり記憶することで変化していきます。
澤田誠著『思い出せない脳』によると、マインドセットが乏しかったり偏ったりすると、判断や行動が決まったパターンから抜け出せなくなり、合理的な選択ができなくなるそうです。
でも、マインドセットを形成するのは「知識」だけではありません。
「情動」も関係しています。
私たちは普段「感情」という言葉をよく使いますが、脳科学の定義によると、「感情」とは「情動」と「気分」を合わせたもののことをいいます。
「情動」と「気分」の違いは、心や身体反応が続く時間の長さにあります。
時間が短いのが「情動」で、長く続くのが「気分」です。
「気分」とは、具体的には「なんとなく楽しい」とか「なんとなく不安だ」というように、はっきりと言葉に言い表せない心の状態を指します。
脳科学の研究対象となるのは、主に「情動」の方です。
情動に関する神経伝達物質としては、ドーパミンやセロトニンなどがよく知られていますよね。
脳科学では、様々な記憶が関係しあったマインドセットが、「情動」を生み出すと考えられています。
つまり、マインドセットは心も作っているのです。
例えば、動物にとって最も重要なことは、食物を得ながら敵から逃げて子孫を残すことですが、これらの行動を起こすきっかけとなるシグナルが「情動」です。
だから、情動の優先順位はかなり高いと言えます。
動物たちは、情動を参照しながら記憶を構築することで生存確率を上げてきました。
「情動」は、進化を考えるずっと前から、動物を生存させる仕組みとして機能してきたのです。
ところで、心理学では「記憶」には次の三種類があると考えられています。
①意味記憶
②手続記憶
③エピソード記憶
それぞれの中身を見てみましょう。
①の「意味記憶」は、数学の公式や歴史の年号など所謂「知識」と呼ばれるもので、人の名前なども含まれます。
②の「手続記憶」とは、例えば自転車の乗り方など主に体で覚えるもののこと。
③の「エピソード記憶」は経験や体験に基づくもので、時間や場所、感情などを伴う記憶のことです。
三つの中で人類が生き残る上で最も優先順位が高いのは、③の「エピソード記憶」です。
例えば、自分を襲いに来る生き物の唸り声や匂い、あるいはシルエットなどは絶対に記憶しておくべき事柄ですが、一方でその生き物の名前といった「意味記憶」は優先順位が低くなります。
過去に会ったことのある人と再会した時、出会った場所や印象に関する記憶は蘇るのに、名前だけがどうしても思い出せない時がありますよね。
これは「エピソード記憶」が、「意味記憶」より優先する証拠です。
思えば、人類が狩猟採集によって食料を得ていた時代は、人々はいつ頃どこに行けばどんな木の実が採れるかということをちゃんと記憶していました。
でも、現代は昨日の夜に何を食べたかさえ思い出せない人が、私を含めて大勢います。
なぜ、覚えていないのでしょう?
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