株式会社ファイブスターズ アカデミー
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京都産業大学教授の奥田らは、来週新幹線に乗るとしたらどんな行動をするだろうかを被験者に想像してもらい、その時の脳の活動をPET(陽電子放出断層撮影)で調べました。
すると、前頭葉の先端部、海馬周辺、楔前部の3ヵ所が活性化していました。
次に、過去の出来事を思い出してもらったのですが、不思議なことに全く同じ3ヵ所が活性化しました。
しかも、二つの画像は驚くほど似通っていたのです。
つまり、未来を考える時の脳の動きは、過去を思い出す時の脳の動きとほとんど同じだということです。
しかし、これも考えてみれば至極当たり前のことで、例えば富士山を見ながら駅弁を食べている姿を想像したとしても、それは全て過去に経験したことです。
つまり、私たちが未来について自由に想像を巡らしてみたところで、過去の記憶の制約からは逃れられないのです。
未来は、過去の延長線上にしかないのです。
そう考えると、AIが③の「革新的創造性」を手に入れるのは、時間の問題のような気がします。
AI研究の第一人者である松尾豊は、ディープラーニングの登場を、生物史における「眼の誕生」に例えました。
それほど革新的な出来事でした。
そして今、彼の弟子である今井翔太は、生成AIの誕生を人類史における「言語の獲得」に例えています。
ここ20年ほどの間に、とんでもないことが起きているのです。
こうなると、冒頭紹介した「歴史上で初めて人間より賢い存在を目撃する可能性がある」という今井の予言も、かなり真実味を帯びてきます。
もしかしたら、私たちは人類史上最も重要な局面に立ち会っているのかもしれません。
それにしても、こんな激動の時代に一体どうやって生きていったらいいのでしょう。
今井は、松尾に「ぜひ身につけておくべきスキルはありますか」という質問をしました。
ところが、極めて冷たい答えが返ってきます。
「人に教えを請うている時点でだいぶ出遅れていますね」
松尾は、これからどうすべきかは自分で考えるしかないと断言します。
AIの話になると、マスメディアは挙って国が果たすべき役割について論じますが、それは全く意味のない行為です。
なぜなら、未来は自分の手でコントロールするしかないからです。
「国がサポートしてくれない」などというのは、ただの言い訳にすぎません。
負け犬の遠吠えです。
自分の置かれた状況を憂いている暇があったら、「自分が活躍するためにはどうしたらいいか」を考えるべきだと松尾は訴えます。
そういう意味では、国の「べき論」ばかり論じているマスメディアは、これから淘汰されていく典型例でしょう。
主語は「国」とか「会社」ではありません。
「自分」です。
なぜなら、あなたの人生のオーナーは「あなた」だからです。
自分の人生をどう生きるかを決めるのは自分です。
他の誰かではありません。
ただ、松尾はひとつだけヒントをくれています。
博士課程時代の松尾はひたすら論文を読み、文献を読み、そして論文を書きまくっていたそうです。
こんな、「狂気」にも似た行動ができるのは人間だけです。
脳の腹側被蓋野から前頭葉の帯状回や側座核に軸索を伸ばしているドーパミン神経が、人間の「意欲」に関係することは以前から知られていましたが、最近の脳科学の研究によりこの神経は「狂気」にも関係していることがわかりました。
「意欲」と「狂気」は紙一重です。
「狂気」にも似た「意欲」こそ、人間だけが持つ能力です。
現代の若者たちはなぜか「タイパ」を重視します。
タイパとは他人が10の時間をかけて10のパフォーマンスをするところを、7の時間で8のパフォーマンスを発揮することです。
でも、未来のAIなら、0.01の時間で10のパフォーマンスを発揮することができるでしょう。
そうなると、ちょっとだけタイパのよい人間なんて必要ありません。
では、どんな人間が必要とされるかというと、20の時間をかけて20のパフォーマンスを発揮できる人間です。
「狂気」にも似た「意欲」を持った人間しか、必要とされない時代が来るのです。
現代は確かに大変な時代です。
でも、松尾は言います。
もし、私たちが3百年に渡って安定して変化がなかった江戸時代に生まれていたらどうだったでしょう?
私たちの一生は、生まれた時にほぼ決まっていたはずです。
それは、果たして幸せなことでしょうか。
そう考えると、私たちは最もエキサイティングな時代に生きていると言えるのではないでしょうか。
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