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5☆s 講師ブログ

サラチカ

学生が就活する際、面接で必ず聞かれるのが「ガクチカ」。
「学生時代に力を入れたこと」の略です。
コロナ禍ではサークル活動ができなかったため、企業がこの質問を控えた時期もありましたが、コロナが収束すると秒速で復活しました。

でも、この質問で企業が知りたいのは、学生がどんなことに取り組んだかではありません。
その活動を通じて、どれくらい積極性やリーダーシップを発揮したかです。

例えば、「英語の授業が難しかったので、予習と復習に力を入れました」と答えると、「それは授業だから仕方なくやったことだよね。そうではなくて、自分から進んで取り組んだことはないの?」などと切り返されたりもしました。

でも、この「ガクチカ」の質問は、果たして意味があるのでしょうか?
というのは、定年で会社をリタイアした人に「サラリーマン時代に力を入れたこと」、即ち「サラチカ」は何かと質問したら、一体どんな答えが返ってくるだろうかと考えたからです。

経理関係の仕事が長かった人は、おそらく「経理の勉強」と答えるでしょう。
でも、それってさっきの英語の予習・復習と同じで、積極性やリーダーシップを発揮したことでもなければ、自発的に取り組んだことでもないですよね。
その部署に配属されたから、仕方なく取り組んだことです。
いくら積極性やリーダーシップがあっても、いざ会社に入ると待っているのは、指示されたことをただひたすらやり続けるサラリーマン人生です。

それなら面接でチェックすべきは、積極性やリーダーシップや自発性ではなく、指示されたことを我慢強くやり続ける能力の方ではないでしょうか。
「今の若い人は指示がないと動かない」とボヤく管理職だって、上司の指示通りに動いているだけですよね。

日本の場合、組織運営の基本は「上意下達」。
上司の指示には逆らえません。
これがトップの命令ともなると、まるで憲法みたいなもので、もし逆らえば組織にはいられなくなります。

ですので、本来面接で問うべきは「従順性」のはずです。
でも、これからは指示されたことをひたすらやり続けるのは、AIやロボットの専管事項になります。
しかも、彼らはきわめて従順で長時間労働が可能な上に、正確性やスピードに関しては人間を凌駕します。
そうなると、人間は必要なくなるのでしょうか?

確かなことはわかりませんが、上司からの指示の内容が変わってくるような気がします。
今までは、上司の指示は「作業」でした。
でも、「作業」はAIやロボットが担当するようになるでしょう。
そうなると、上司の指示は「作業」ではなく、「課題解決」になるのではないでしょうか。

どうやったら課題を解決できるかを自分の頭で考えて、自分の体でそのプランを実行していく。
これが、人間の担当分野になるような気がします。

解決方法をAIに聞いても、おざなりな一般論しか出力されません。
しかも、AIの回答通りにやったとしても、結果が出る保証はありません。
結果が出ないと、責任を取らされるのは人間です。
AIは責任を取りません。
だから、人間は「失敗した時の責任取り要員」としてきっと職場に残ります。

そうなると、面接で確認すべきは「積極性」や「リーダーシップ」ではなく、「課題解決力」の方です。
学生時代何に力を入れたかよりも、どんな課題に直面し、その解決のためにどんな工夫をしたかが重要なのです。

つまり、「ガクチカ」ではなく「学生時代に課題解決のためどんな工夫をしたか」、略して「ガククフ」を聞くべきです。

でも冷静に考えると、課題解決力というのはビジネスマンなら全員持っていなければならない能力のはず。
それが今まで問われてこなかったということは、採用面接がいかに緩かったかの証左に他なりません。

でも、私が心配しているのは就活の学生ではありません。
「サラチカ」組の方です。
というのは、サラリーマンをリタイアすると、もう誰も課題を与えてくれないからです。
指示待ち習慣のまま定年を迎えると、待っているのは何をしたらよいのかわからないまま過ごす日々。

サラリーマンの時は、何が課題なのか、またどうやって課題を解決すればよいのか、それらはすべて組織が教えてくれました。
だから、組織の指示する通りにやっていれば、それで何の問題もなかったのです。

ところが、リタイア後はそうはいきません。

リタイアを機に、サラリーマンは生まれて初めて「組織」から離脱します。
物心ついてからずっと、私たちは学校や会社といった「組織」に所属していました。
しかし、現役からリタイアすることは、今まで過ごした「組織」という入り江を離れ、未知なる外洋にボートを漕ぎ出すことに他なりません。

私たちは、生まれて初めて「個人」として生きていくのです。

現役時代の入り江の方が波が高かったりもしますが、それでも何をしたらいいかは組織が教えてくれました。
でも、外洋に出ると誰も何も教えてくれません。
何もしなくても年金はもらえるので、とりあえずは生きていけますが、もしかしたら人はこうやってボケていくのかもしれません。

ボケないためには、自分で課題を見つけなければ。

リタイア後に必要となるのは、「課題解決力」よりも「課題発見力」の方です。
でも、考えてみると、この「課題発見力」だって元々ビジネスマンには絶対に必要な能力のはず。

そこで思い出したのが、トヨタのお家芸である「カイゼン」。
「カイゼン」は、「課題発見力」がなければ始まりません。
そもそも「課題発見力」というのは、企業が成長していくためのスタート地点みたいなもの。

この能力が最も必要とされるのは、学生ではなく会社員の方です。
でも、この能力を開発するためのプログラムを用意している会社は、一体どれくらいあるでしょう。
今回、「ガクチカ」を徹底的に考察した結果、根本にあったのは日本企業が抱える人材育成プログラムの問題点でした。
企業が人材育成に関するしっかりしたプログラムを持っていないから、採用の場面で腰がふらついてしまうのです。

学生に「ガクチカ」を問う前に、自社の「人材育成プログラム」の内容を厳しく検証すべきです。
そのプログラムを確立しない限り、新人を採用しても会社に定着しませんよ。
さらには、リタイア後に何をしたらいいのかわからず、路頭に迷う人も後を絶たないはずです。

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