株式会社ファイブスターズ アカデミー
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サラリーマンをしていた頃の話です。
高校時代の友人たちと蟹を食べに行った金沢のホテルのバーで、メニューリストの中にこの風変わりな名前のウィスキーを見つけてうれしくなりました。
『ウシュクベー』というゲール語は、ウィスキーの語源になったと言われる言葉です。
その意味はというと、なんと「生命の水」。
どうです?
飲んでみたくなりませんか。
ついでなので、「ウィスキー」という言葉の語源をちょっと辿ってみることにしましょう。
麦を蒸留した酒の記述が、スコットランドの記録に最初に登場するのは1494年。
「スコットランド王室財務記録帳」なるものに、「王の命令により修道僧ジョン・コーに8ボルの麦を与え、アクアヴィテをつくらしむ」という記述が出てきます。
「アクア・ヴィテ」はラテン語で「生命の水」、つまりはアルコールのこと。
1ボルは約63.5キログラムなので、8ボルというと5百キロくらいになる計算です。
結構な量ですよね。
その後、「アクア・ヴィテ」という言葉はヨーロッパ各国に伝わり、それぞれの国で微妙に変化していきました。
スカンジナビア諸国では蒸留酒のことを「アクアヴィット」、フランスではワインの蒸留酒であるブランデーを「オー・ド・ヴィー」と呼ぶようになります。
ロシアの「ウォッカ」は、ロシア語の「ヴァダ(水)」からきているそうです。
アイルランドやスコットランドでは、ケルト人のゲール語に訳されて「ウシュク・ベーハ」となりました。
12世紀にアイルランドを占領したイングランド軍には、これが「ウイシュギ」と聞こえたという記録が残っています。
この「ウイシュギ」が人から人へと伝えられていくうちに、「ウスケボウ」となり、さらには「ウスケ」、そして最後に「ウィスキー」へと変化していったようです。
“whisky”という文字が最初に登場するのは、1736年にスコットランド人のジョン・スチュワートが義理の兄弟に書き送った手紙。
1755年に、サミュエル・ジョンソン博士が編纂した英語辞典に掲載されたことで、世間に認知されるようになりました。
さて、今回紹介する『ウシュクベー』ですが、ブレンデッド・ウィスキーとしては際立った特徴があります。
それはモルトの比率が60%と、とんでもなく高いということです。
そもそも、1768年にロス&キャメロン社が製造を始めた頃はシングルモルトだったそうです。
ウェッジウッド製の陶器に入った『ウシュクベー・ストーン・フラゴン』は、今でもその名残を強く残す1本で、モルトの比率は驚くなかれ85%。
モルトの比率が高いと、どうしても「とんがった」感じが残ってしまうのですが、それでいて実に飲みやすい。
まさに絶妙なバランスの一品です。
それもそのはず、キーモルトはスコッチのロールスロイスと言われる『マッカラン』と、アイラ・モルトの『カリラ』。
おいしいはずです。
ライトな飲み口が好まれるはずのアメリカでも高い人気を誇っているのは、おそらくスコットランド移民たちのルーツを連想させるネーミングが、彼らの郷愁をくすぐったのでしょう。
有名人にもファンが多く、エリザベス・テイラーやロック・ハドソンも愛飲していたとか。
1969年にニクソンが大統領に就任した時のパーティーでは、公式スコッチに選ばれています。
実は、その前日も自宅でこのウェスキーを飲んでいたのですが、ホテルのバーでも迷わず注文しました。
酔うほどに、高校時代の思い出話に花が咲きます。
私たちは実に中途半端な世代です。
学生運動が華やかなりし頃はまだ中学生。
高校に入るとムーブメントはすっかり下火になっていて、社会に対する漠然とした不満はあるけれど、その情熱をどこにぶつけたらいいのかわからない。
高1の春、体育館での何時間にも及ぶ団交の末、制服が自由化されました。
ツメエリの学生服は翌日からジーンズに変わったけれど、ただそれだけのことでした。
私たちにとってはマルクス=エンゲルスでさえ、所詮書物の中で完結する「内的物語」にすぎなかったのです。
そして、ついにその時は訪れます。
寺山修司の言葉を借りれば、「ある夏まで、私を熱中させた言葉・・・革命」。
そうです。
やがて、怒れる若者たちは熱病から醒め、失意のうちに体制の内側に帰っていくしかないことを悟るのでした。
「カクメイ」という言葉は、その後の半世紀で見る影もなく劣化し、今やJ-POPの薄っぺらな歌詞の中にしか居場所を見つけられなくなりました。
それにしても、今でも不思議に思うのは、あの頃の私たちはなぜあんなにも「怖いもの知らず」だったのでしょう。
現代の若者たちが、将来に対して漠然とした不安を抱くのとは対照的です。
その答えは、「そういう時代だったから」と言うしかありません。
ところで、私が『ウシュクベー』を好きなもうひとつの理由は、ボトルの裏側のラベルにあります。
そこには、スコットランドの国民的詩人であるロバート・バーンズの肖像画とともに、彼の代表作『シャンタのタム』の一節が引用されています。
“wi usquae, we’ll face the devil”
(ウシュクベーさえありゃ、悪魔なんかもへっちゃらさ)
かつては怖いもの知らずだった若者も、いつの間にか「命の水」の力を借りないと、上司の愚痴一つこぼせないオジサンになっていました。
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