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5☆s 講師ブログ

人間がAIに勝てる能力

人間は、AIには到底かなわないだろうと思っていましたが、いろいろ調べているうちについに勝てる能力を見つけました。
それを説明する前に、脳科学者の池谷裕二が著書『夢を叶えるために脳はある』の中で、面白い心理実験を紹介していますのであなたも挑戦してみませんか。

まず、次の単語リストに目を通して下さい。
「タクシー、自動車、トラック、一輪車、スケボー、飛行機、ボート、馬車、バス、パトカー、救急車、消防車、フェリー、人力車、道、ヨット、機関車、バイク、電車、モノレール、新幹線、汽車、ヘリ」

さて、質問です。

次の3つの単語のうち、リストに含まれていたのはどれでしょう?
①道 
②マラソン 
③自転車

ほとんどの人は③の「自転車」と答えますが、残念ながら正解は①の「道」です。
どうです?
まんまと引っ掛かったのではありませんか。

リストにあった23個の単語のうち、「道」を除いた22個は乗り物の名前でした。
なので、つい③の「自転車」と答えてしまいがちですが、これが所謂「思い込み」というヤツです。

ヒトがAIと決定的に違う点は、この「思い込み」をすることです。
「思い込み」という言葉には良くないイメージがありますが、良い方に解釈すると「選択的に特徴を抽出する能力」と言い換えることができます。

実は、これはAIにはできないことです。
AIは「思い込み」ができないため、満遍なく漏れなく全てを見てから判断するしかありません。
だから、ビッグデータが必要になるのです。

どちらがいいとか悪いとかではなく、ヒトとAIではそれぞれ得意分野が違うということです。

「アルファ碁」というAIは、世界最強の棋士を打ち負かしましたが、強くなった理由は3カ月間で数百万回の対局をこなしたからです。
ヒトの場合は、最強になるまで20年以上かかりますが、こなした対局数でいうとたったの数千回。
AIに比べて随分少ないですよね。

AIの場合は、数千局程度の対局では初心者レヴェルにも到達しないそうです。
ヒトはかなり少ない対局数で成長できるのです。
つまり、ヒトは学習スピードが早いということです。
なぜ早いかというと、ヒトは選択的に特徴を抽出する能力があるから。

言い換えると、「思い込み」という能力があるからです。

「思い込み」はヒトの欠点ではありますが、同時にAIに勝てる数少ない能力のひとつでもあるのです。

ある研究者が、思い込みや勘違いを引き起こす「認知バイアス」をAIに組み入れたところ、少ないデータ量でも学習が可能になりました。
コスパは劇的に改善したのです。

でも、その代わりヒトと同じようなミスが増えました。
結果的に、この研究者はヒトの脳と同じAIを作ってしまったことになります。

そもそも、ヒトとAIのどちらが優れているかを議論すること自体、全く意味のない行為です。
何度も言いますが、ヒトとAIでは得意分野が違うのです。
ヒトは間違いも犯しますが、完璧でない分AIよりかなりコスパはよくなります。

コスパがいいということは、消費エネルギーが少なくて済むということです。
これは、「思い込み」がもたらす副産物です。

では、消費エネルギーがどれくらい違うのか比較してみましょう。
アルファ碁を3カ月間フル稼働させると、電気代だけで約2億円かかります。
一方、ヒトの脳を3カ月間使い続けた時の消費エネルギーを電気代に換算すると約1,200円。
AIがかなりの「電気食い虫」であることがわかります。

実は、AIだけではありません。
私たちが普段何気なくやっているネット検索も、かなりの電力を消費しています。
巷ではネット検索を1回やると、紅茶1杯分を沸かせるだけのエネルギーを消費すると噂されていますが、実際はそこまで酷くはないようです。
でも、検索サービス側では百台以上のサーバに振り分けていますので、かなりの電力を使っていることは確かです。
一体、どのくらいの電力を消費しているのでしょう。

国立情報学研究所教授の佐藤一郎の著書、『ChatGPTは世界をどう変えるのか』に詳しい記述がありました。

グーグルの場合、世界全体での検索数は1日で55億回、年間で2兆回にも及びます。
他に、サーバを冷却するための電力も必要になります。

そのため、グーグルのデータセンターが年間に支払う電気料金は、グーグル全社員の年俸合計を上回るそうです。
グーグルは博士号を持っている人の割合がNASA(アメリカ航空宇宙局)より多く、企業としては世界一と言われています。

なので社員は高給取りばかりなのに、電気代の方がそれより高いとは本当に驚きです。

検索でさえこんな状況ですから、これが生成AIになるととんでもないことになります。
生成AIの処理は「学習段階」と「生成段階」に分かれますが、佐藤の推計では、ChatGPTの初期の学習モデルであるGPTモデル3の構築に要した電力は、日本の平均的な世帯が年間に消費する電力量の3百年分くらいだそうです。

でも、それで終わりではありません。
実用に耐えるためには作り直しを繰り返さなければなりません。
なので、実際にはその数倍から数十倍の電力が消費されたと考えられます。
しかも、学習段階ではこれをチューニングする必要があるので、電力消費量はもっと増えることになります。

さらに、次の「生成段階」になると、「学習段階」よりも多くの電力が必要になります。

モデル3でこれですから、近い将来もっと優秀な生成AIが普及すると、電力消費量は想像を絶する規模になることは間違いありません。

ℂhatGTP3でも、1日運用すると1億円かかると言われています。

もしかしたら、原発を増設したくらいでは追いつかないかもしれません。

今でも電力需給は逼迫しているのに、一体どうなってしまうのでしょう?
最近はどこの企業も、ビル内移動の際にはエレベーターではなく、できるだけ階段を使うよう呼びかけています。

ヒトは究極の省エネマシーンですが、階段で済んでいるうちはまだ平和です。
佐藤はそのうち、「AIに頼らず、自分の頭で考えろ」と言われる時代が来るのではないかと危惧しています。

AIより出来は悪いですが、ヒトが考える分には電力を消費しないからです。
仕事に関して今後AIが脅威になることは間違いありませんが、ビビっていても何も始まりません。

ヒトがAIに勝てる部分が「思い込み」と「省エネ」であるなら、それぞれの得意分野を上手に組み合わせて、ヒトとAIが互いに協力する体勢作りを模索するしかないのです。

 

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