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5☆s 講師ブログ

報道の脳死(5)

マスメディアの言う「権力の監視」に関しては、最近逆転現象が起こり始めています。

記者による質問の様子がネットで配信されるため、逆に市民が記者を監視することが可能になったのです。
これにより、記者たちの非常識極まりない質問までネットに晒されるようになりました。
時には実名を晒され、市民から監視される立場に立たされた記者たちは、今どんな気持ちでしょう。

いやその前に、そもそも記者が守らなければならない「原則」とは何なのでしょう?
烏賀陽は、記者の「原則」は何かについてコヴァッチに質問したことがあります。
彼の答えは、「客観、公平、独立」。

「具体的に?」と問うと、コヴァッチはこう言いました。
「報道を好き嫌いではなく事実によってのみ決める。報道がフェアである。誰とも資金関係がない。資格や免許は必要ない。合衆国で定義されている職業は報道記者だけである。民主主義にとって記者がいかに重要な仕事かを物語っている」
至極当たり前の発言ですよね。

でも、日本では「報道記者」の定義自体が曖昧だったため、「芸能記者」などという民主主義とは関係のない者まで出現してしまいました。

「報道がフェアである。誰とも資金関係がない」
この姿勢が貫かれていれば、報道の現場にスポンサーへの忖度が蔓延ることはなかったでしょう。

烏賀陽は言います。
「日本にあるのは『擬似報道』『報道もどき』なのではないか」と。
さらには、日本の報道は「ガラパゴス島の動植物のように、世界から切り離された島国で独自の進化を遂げた『亜種』ではないか」とも。

烏賀陽の言う通り、日本の新聞は明らかにガラパゴスです。
戦後の国有地の格安払下げ、日刊新聞法による株式譲渡制限、軽減税率の適用・・・。
これほど新聞社が規制で守られている国なんて、世界中どこを探しても見つかりません。

でも、今一度冷静になって考えてみると、「市民の自由」や「権力の監視」に役立つなら、新聞だろうがテレビだろうがインターネットだろうが、媒体は何だってかまわないはずです。
マスメディアが改めて問い直さなければならないのは、「ジャーナリズムが忠誠を誓うべき相手は誰なのか?」ということです。

私は「市民」だと思います。
もしも、「罵声を浴びようと、傷つけようと、悪者になろうと」、「憎まれ役を引き受ける覚悟」で取材することが許される場面があるとするなら、それは「市民を守る」という大原則を守っている時です。
逆の言い方をすれば、市民を傷つけたり、市民から憎まれるような取材は絶対に許されないのです。

業界内部の勝手な理屈で定義された「市民抜きのジャーナリズム」こそ、報道を「脳死」させる最大の原因です。
そもそも、テレビや新聞などの報道媒体が果たすべき役割は、視聴者や講読者に事実を知らせる「仲介役」だったはず。
事実に何の手を加えることもなく、そのまま伝えるのであれば脳など使う必要はありません。
「脳死」など起こりようがないのです。

もし、脳を使う時があるとするならば、仲介者が何らかの意図をもって世論を誘導しようとした時です。
それこそまさに、ナチスドイツがやったことではありませんか!

ところが、窪田順生は「情報操作」など大して恐ろしいことではないと言います。
本当に恐ろしいのは、スピンの存在すら知らずに、それが中立公平な報道だと信じ込まされることだと。

しかし、今ようやくニュースは民主化されました。
有益な情報はネット上にいくらでも転がっています。
マスメディアが取材する必要などなくなったのです。

夕方のテレビのニュース番組を観ていて驚くことがあります。
それは、放映される素材映像のほとんどが、ネット上に投稿された映像で構成されていることです。
すでに、マスメディアの取材スタッフは大幅に削減されています。

新聞社だって、ごく少数の記者で仕事を回すことができるはずです。
新聞の場合は、購読数と広告収入がダブルで激減しているため、近いうちに大幅な人員削減に着手せざるを得なくなるのは火を見るより明らか。
リストラされた記者は、再就職に苦戦することでしょう。
なぜなら、問題点を指摘するだけでその解決策を考えなくてよい仕事なんて、世の中には存在しないからです。

リストラ後の新聞社で、メインとして記事を書くのは生成AIになるでしょう。
テレビだって、「AIアナウンサー」がニュース原稿を読み上げている時代ですよ。
そのニュース原稿を、生成AIが書くようになるのは時間の問題です。

記事の執筆に関していうなら、生成AIにとっては朝飯前くらいの難易度の低いタスクです。
どうしても取材が必要な時は、契約記者や派遣記者が出向けばいいだけの話。
間違いなく、新聞業界はあと数年のうちに歴史的な局面を迎えるでしょう。

その際、新聞社には絶対に忘れないでもらいたいことがあります。
それは、AIに「市民を守る」というキーワードを入力しておくことです。
この大原則を入力しておかないと、AI新聞社も同じ轍を踏むことになりますから。

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