株式会社ファイブスターズ アカデミー
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国民を洗脳する話はこれくらいにして、国家に並ぶほど強大な権力を持つマスメディアとは、本来どのような存在であるべきなのでしょう?
マスメディアの人間は「報道の自由」という言葉を頻繁に口にしますが、彼らの言う「自由」とは一体「何からの」自由を指しているのでしょう?
政治家からの自由でしょうか?
違いますよね。
なぜなら、メディアはすでに政治家からは完全に自由だからです。
その証拠に、政治家はメディアにとってもっとも叩きやすい対象のひとつです。
もし、報道されていないスキャンダルがあるとしたら、それは政治家からの圧力によるものではなく、メディア側が「自主規制」した結果です。
そうです。
「報道の自由」を妨げている圧力とは外部からのものではなく、あくまでメディアの内部に存在するのです。
ジャーナリストの窪田順生は、著書『スピンドクター』の中で、かつて雑誌の編集長をしていた頃の苦い経験を回想しています。
編集部員がある有名企業の大スキャンダルネタを見つけてきたのですが、印刷直前で営業サイドから「待った」がかかりました。
理由は、その企業が某コンビニチェーンと非常な親密な関係にあることがわかったからです。
雑誌の主な販路はコンビニ。
なんと売り上げの90%を占めているそうです。
これを敵に回したら、雑誌の出版社など生きていけません。
メディアが自主規制せざるを得ないケースは想像以上に多いようです。
もちろん、大きな広告枠を埋めてくれる大企業の批判などは絶対にタブーです。
また、バラエティなどの他の番組に多大な影響を与えるため、芸能人のスキャンダル報道が許されるのは所属事務所が弱小の時だけです。
2023年に明らかになった芸能事務所社長の性加害問題などは典型例でしょう。
でも、マスメディアが最も恐れるのは、国税庁を所管する「官」です。
なぜなら、ここを批判すると極めて厳しい税務調査が入るからです。
ちなみに「スピンドクター」とは、情報操作を行う人間のことを指します。
スピンを仕掛けるのは欧米では主に政治家ですが、窪田は日本の場合は政治家より高級官僚の方がその技に長けていると分析します。
彼らは省益のためだけでなく、出世争いのためにライバル官僚のスキャンダルをリークする際もメディアを利用するからです。
週刊誌も例外ではありません。
「官」とメディアが、いかにズブズブの関係にあるかよくわかりますよね。
上層部だけでなく、記者の側にも問題はあります。
それは、常に特ダネを追い求める取材姿勢です。
大手芸能事務所社長の性加害ネタを報じたところで、所詮は芸能界という特殊な業界の人権問題に過ぎません。
人権問題は、記者の手柄となるような「スクープ」には絶対にならないのです。
「報道の自由」は守られなければならないと主張しながら、何重もの自主規制で自らの手でその自由の範囲を狭めているのは実に滑稽です。
記者は、日常の取材活動では「記者クラブ」という「談合組織」のルールを厳守する義務を負いますが、一方では他社を出し抜くようなスクープが求められています。
そんな彼らにとって、大雨や地震などの自然災害はスクープが期待できる千載一遇の大チャンスです。
だから、我先にと被災地に押し掛けるのです。
烏賀陽が記者になった時、先輩から最初に叩きこまれたことは、「記者は人の不幸でメシを食う賤業だ」という意識でした。
かなり過激な表現ですが、彼はそのことを「人の不幸を他人に知らせるという卑しい仕事をするという自己犠牲」と表現します。
でも、果たしてこれは「自己犠牲」と言えるのでしょうか?
少なくともマスメディアの記者は、世間水準を大幅に上回る報酬を得ています。
本当に「自己犠牲」であるならば、無報酬でやるべきではないでしょうか。
少なくともそれで「メシを食っている」以上、絶対に「自己犠牲」ではありませんよね。
東日本大震災の時のメディアの対応について、メディア総合研究所がまとめた『大震災・原発事故とメディア』の中に、避難所の被災者へのインタヴューを命じられた、地元テレビ局の女性アナウンサーの葛藤が描かれています。
「泣いている人の心をえぐるような取材はしたくない」と主張する彼女に対して、デスクはこう言います。
「無理に話は聞かなくていい。それはお前の判断に任せる。無理をしない範囲で、どういう気持ちで来られたのかインタヴューを撮ってこい」
ところが、この文章を読んだ烏賀陽は大混乱に陥りました。
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