株式会社ファイブスターズ アカデミー
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高度成長期の日本では、大量生産をサポートするために労働者にあることが求められました。
それは、決められた工程の中で、決められた作業を正確にこなすことです。
それができる社員を育成するために、企業は社員の「標準化」を進めました。
社員なら誰でも「普通」に仕事をこなすことができるよう、徹底した社員教育が実施されたのです。
「普通」の仕事をより上手にこなせる社員、つまり「平均」より上の社員は「優秀」と呼ばれ、「平均」に届かない社員は「落ちこぼれ」と呼ばれました。
つまりは「はずれ者」です。
そして、「なぜ皆と同じようにできない!」と叱責されたりもしました。
社員も、製品と同様「規格品」であることが求められたのです。
この「社員標準化システム」は、同質性を求める日本人の気質にマッチし、おかげで日本企業の生産性は飛躍的に向上しました。
しかし、当たり前のことですが、その後ビジネス環境は激変します。
変動相場制への移行により、円安の優位性は完全に失われました。
製造原価の引き下げ競争では、人件費の安い中国に太刀打ちできなくなります。
「価格」という競争フィールドでは、もう日本企業の勝ち目がなくなったのです。
輸出がダメとなると、企業は国内需要に目を向けざるを得なくなります。
ところが、日本企業は「価格」に拘り続け、それはバブルが崩壊した後も続きました。
そのため、利益を度外視した叩き売りが始まります。
誰もが「低価格」こそが勝利の条件だと信じ、挙って安売り競争に突入していったのです。
それに拍車をかけたのが、中央銀行の誤った金融引き締め政策でした。
その結果、それまでは経済学のテキストでしか目にすることがなかった、「デフレ」という歴史的な異常事態が発生します。
それでも日本企業は「低価格」という「価値観」に拘り、あくまで「価格」フィールドでの競争をやめなかったためデフレは常態化してしまいました。
人々がようやく価格競争の愚かさに気づき始めた頃、世界ではIT革命が始まります。
コンピューターの進化は、私たちの想像を遥かに超えていました。
近い将来、「普通」の仕事はAIやロボットが担うようになるでしょう。
彼らには、どんなに「優秀」な人間でも絶対に太刀打ちできません。
なぜなら、決められた仕事をミスなくこなすという「基準」において、彼らは人間よりはるかに「優秀」だからです。
彼らが労働を肩代わりするようになると、企業は従業員を大量に解雇することができます。
経理上大きなウェートを占める「人件費」が削減できれば、再び価格競争で優位に立てるかもしれません。
でも、どんなに価格を安くしたところで、大量に発生した失業者にはもはや商品を購入する余裕はありません。
これが、不毛な価格競争がもたらす残酷な結末です。
ところで、AIやロボットが人間の労働を肩代わりするようになると、人間は一体何の仕事を担当するようになるのでしょうか?
あくまで私見ですが、「考える」という部分ではないかと思うのです。
そもそも、力の弱いホモ・サピエンスが自然界で生き残ることができたのは、「考える」という点で他の動物より優れていたからです。
今までの「価値基準」とは違う、全く新しい「価値」を創り出せるのは人間だけです。
これからは、人と違うアイデアを出せるかどうかが勝負です。
AIは膨大なデータを学習していますが、そのデータは所詮今まで人間がやったことの集積です。
当然、前例のないデータは蓄積されていません。
AIは、標準化されたアイデアなら出せますが、標準化されていないアイデアは出せないのです。
これからは標準化された価値ではなく、今までにない全く新しい「価値」を形にできた企業が生き残るでしょう。
かつては、「なぜ皆と同じようにできない!」と叱られましたが、これからは「なぜ皆と同じようなアイデアしか出せない!」と叱られるようになるかもしれません。
そうなると、今までの「価値」とは縁のない「はずれ者」の出番です。
もしかしたら、これからは「はずれ者」がいない企業は生き残れないかもしれませんよ。
「多様化」は、実は企業の生き残りに影響するほどの重大問題です。
かつてのマネジメント手法が通用しない、などと嘆いている場合ではありません。
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