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5☆s 講師ブログ

二番じゃダメなワケ(1)

カール・フレイ博士とマイケル・オズボーン博士が2013年に発表したのは、将来AIが私たちの仕事を奪ってしまうという報告。
アメリカでは2033年までに702種類の職業のうちの、47%の労働者が70%の確率で影響を受けるという衝撃的なものでした。
しかし、現実問題として仕事というのは複数の作業から構成されています。

その辺を考慮に入れ、その後のAI活用研究は複数の作業を細分化した上で、それぞれの作業ベースでの自動化の可能性を分析する方向に修正されました。

2016年の経済協力開発機構(OECD)の報告書では、作業ベースでの解析で9%という結構低い数字になっています。
日本に関してはもっと低くて7%でしたが、それでもかなり深刻な数字であることには間違いありません。

特に、今後生成AIのブラッシュアップが進めば、その影響は甚大なものになるでしょう。
例えばコンサルタントの鈴木貴博は、今まで6人でやっていたコンサルティングの仕事は、2人で完結するようになるだろうと予測しています。

とりわけ、ホワイトカラーの仕事は大きな影響を受けます。
ChatGPTのような生成AIでも、ホワイトカラーの仕事の40%くらいはこなせるようになるだろうという予測さえあるほどです。

もしかしたら、仕事に就けるのは肉体労働者だけという未来が来るのかもしれません。
でも、それは人類にとって幸せなことでしょうか?

かつて、コンピューターの開発競争に関して、「二番じゃダメなんですか!」と言った政治家がいましたが、二番では絶対にダメです。
なぜなら、世界をリードする産業が変革期を迎える時は、「ヘゲモニー(覇権)国家」が交代するチャンスでもあるからです。

ちょっと歴史を振り返ってみましょう。
経済学者の井上智洋が上梓した『AI失業』によると、18世紀後半に起きた第一次産業革命では、蒸気機関をいち早く実用化したイギリスが覇権国家になりました。

ところが、19世紀半ばに第二次産業革命が起こると、今度は内燃機関を搭載した自動車の大量生産に成功したアメリカが覇権を奪います。
ドイツも少し遅れて量産化には成功しましたが、二度の世界大戦で物量に勝るアメリカ連合軍に敗れたことで脱落してしまいました。
第一次産業革命の覇者イギリスは、第二次では大きく遅れをとってしまったのですが、その理由については後述します。

時は進み、ITを中心とした第三次産業革命期が訪れます。
ここでは、GAFAMという巨大IT産業を抱えるアメリカが覇権を維持することに成功しました。
そして、現在進行中のAIを中心とした第四次産業革命においては、大国アメリカに中国が挑戦する構図となっています。

以上をまとめると、一次と二次の産業革命は「工業革命」で、三次と四次は「情報革命」と表現することができます。

前半の「工業革命」では、既存の産業を解雇された大勢の失業者が生まれました。
技術革新は効率化を推進するため、必ず仕事を失う人が出てくるのです。

一方で、既存の仕事を守ろうとする抵抗勢力も黙っていませんでした。
鈴木貴博の『AIクソ上司の脅威』に、詳しい記述があります。

第一次産業革命の時、仕事を失うことを危惧した職人たちは、「ラッダイト運動」と呼ばれる「機械打壊し運動」を始めました。
1779年頃から始まった破壊行動は、1811年にノッティンガムで一気に火がつき、やがてイギリス全土に広がっていきます。

しかし、時代の流れには抗えるはずもなく、やがて労働争議は下火になっていきました。
それでも、完全に終息するまでには、なんと40年の月日が費やされたといいます。

抵抗運動は、第二次産業革命でも起きました。
イギリスの馬車組合は、自動車を非常に危険な乗り物だと決めつけ、1865年に議会に働きかけて「赤旗法」を成立させます。

「赤旗法」とは、自動車がロンドンなどの市街地を走る時は時速3キロまで速度を落とした上で、車の前に赤い旗を持った人間が歩いて車が来たことを人々に知らせなければならないという、ほとんど冗談のような法律です。
それでも、この悪法は30年も続きました。

第一次産業革命で仕事を失った労働者たちの恨みが、いかに根深いものだったかが窺えますよね。
もしかしたら、現在の自動運転技術の進化に対しても、似たような動きが起こるかもしれません。

現にアメリカでは、生成AIに仕事を奪われる可能性がある脚本家や作曲家の団体が、政府に規制を求めています。

この悪法により馬車組合は一時的に権益を守ることができましたが、30年の遅れは致命傷となりイギリスが転落の道を辿るきっかけのひとつになりました。

しかし、一方ではサービス業という新しい産業が立ち上がったため、多くの労働者はそちらに移動することができました。
少々時間はかかりましたが、失業者たちは新しい職を得ることができたのです。

イギリス全体で見ると雇用は増え、賃金は上昇しました。
イギリスは豊かになったのです。

労働者にとって、「工業革命」は結果的にプラスに働きましたが、井上は「情報革命」では異なる結果になる可能性があると言います。
雇用全体が減ったり、あるいは格差が拡大するかもしれないと言うのです。

なぜ、「工業化」と「情報化」では異なる結果になるのでしょう?
それは、そもそも両者の性質が異なるからです。

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