株式会社ファイブスターズ アカデミー
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2023年9月、政府は福島第一原発のALPS処理水の放出を開始しました。
中国や日本の野党の一部が、処理水のことを「汚染水」と呼んで非難しましたが、実際のところ処理水に含まれる「トリチウム」とはどのような物質なのでしょう?
私は典型的な“ド文系”人間ですが、それでも取り敢えず勉強だけはしてみました。
「放射線」と聞くとどうしても怖い印象を持ってしまいますが、そもそも放射線とは何なのでしょう?
勉強はそこから始まりました。
参考にしたのは、物理学者で高エネルギー加速器研究機構・素粒子原子核研究所の准教授、多田将が書いた『放射線について考えよう』という本。
まずは、「原子」についてのお勉強から。
原子の中には「原子核」があります。
原子核は「陽子」と「中性子」からできているのですが、この話は後で詳しく述べますので楽しみにしていて下さい。
今、あなたがいる部屋を原子に例えてみましょう。
原子核は、部屋の中に置かれた、人の髪の毛の直径より小さいそうです。
つまり、原子核の周りはスカスカの空洞なのです。
でも、モノを掴む時は、しっかり掴めますよね。
モノの中に、指がズブズブとめり込むことなんてありませんよね。
なぜでしょう?
それは原子の表面に、電子が雲のように広がっているからです。
電子は、すべて同じマイナスの電気(電荷)を持っています。
あらゆる原子は、その表面がマイナスの電気で覆われています。
モノもそうですが、私たちの指もそうです。
だから、電子同士が反発し合って、私たちはモノを掴むことができるのです。
なるほど、そういうことでしたか。
さて、いよいよ放射線の話に入りますが、その前に多田がとても不思議に思っていることを紹介しておきます。
それは、日本のメディアが、「放射線」のことを「放射能」と言うことです。
科学者は絶対言わないそうです。
このような言い間違いは他にもあって、例えば健康診断でお世話になる「レントゲン撮影」というのも俗称で、正式名称は「X線撮影」だそうです。
レントゲンはX線の発見者の名前ですので、「レントゲン撮影」と呼ぶのは、iPS細胞のことを「ヤマナカ細胞」と呼ぶようなものです。
そもそも「放射能」とは、放射性同位体や放射性物質などが持つ、「放射線を出す能力」のことを指します。
この能力は1秒間に出す放射線の数で表され、単位はベクレル(Bq)です。
例えば、100秒間に4,600個の放射線を出す物質があれば、その放射能は46ベクレルとなります。
もう一度言いますが、放射能とはあくまで放射線を出す「能力」のことです。
例えば、車はスピード(速度)を出す能力がありますが、車のことは「車」とか「自動車」と呼びます。
「速度能」と呼ぶ人はいません。
もし、そんな人がいたら、それは車に関する知識がゼロの人です。
だから、ワイドショーで「放射能」と言うコメンテーターを見かけたら、科学知識ゼロの“ド素人”だと思って間違いありません。
ただ、ここでよくわからないのが、「放射性同位体」という専門用語です。
一体何なのでしょう?
それを理解するためには、物理の基礎をおさらいしておく必要があります。
「原子核」は、「陽子」と「中性子」からできています。
今、例として「He(ヘリウム)」という物質について見てみましょう。
高校の化学の授業で、「周期律表」というのを教わりました。
原子番号の順番を暗記するために、「水兵離別僕の船」という語呂合わせを覚えた人も多いのでは。
原子番号1から10までを順に並べると、「水兵離別僕の船」の通り、H(水素)、He(ヘリウム)、Li(リチウム)、Be(ベリリウム)、B(ホウ素)、C(炭素)、N(チッ素)、O(酸素)、F(フッ素)、Ne(ネオン)となります。
He(ヘリウム)は、「水兵」の「兵」にあたり2番目ですから原子番号は2です。
と、ここまでは「化学」のお話。
これが「物理」の世界になると、ちょっとややこしくなります。
原子番号は、原子核の陽子の数を表しています。
だから、ヘリウムの陽子の数は2個です。
それに釣り合うように中性子というのも2個あって、それらはお互いに引き付けあっています。
陽子と中性子は、両方とも質量を持っています。
ヘリウムは[陽子2個+中性子2個]なので質量数は4です。
この時、電子に関しては質量が非常に軽いため無視して構いません。
ところが、ヘリウムにはちょっと様子の異なる仲間がいます。
同じヘリウムでも、陽子は2個なのに、中性子が1個しかないというヤツがいるのです。
これの質量数は3。
このように、原子番号は同じなのに質量数が違う仲間のことを「同位体」といいます。
区別するために、質量数4のヘリウムは「ヘリウム4」、質量数3の方は「ヘリウム3」と呼びます。
「ヘリウム3」のように、陽子の数と中性子の数が異なる原子は不安定です。
それが原因で、放射線を出すものもあります。
そのメカニズムは後で詳しく説明するとして、次に原子番号1の「H(水素)」について見てみましょう。
天然に存在する水素には、以下の3種類があります。
①水素1[陽子1個のみ]
②水素2[陽子1+中性子1]
③水素3[陽子1+中性子2]
②の別名は「重水素(デューテリウム)」で、記号はDで表します。
そして、③の別名こそ「三重水素(トリチウム)」なのです。
記号はT。
やっとトリチウムに辿り着きました。
①と②は安定していますが、③のトリチウムは中性子が1個多いので不安定な同位体です。
そこで、安定させるために中性子のひとつが陽子に変わります。
[陽子1+中性子2]だった「水素3」が、[陽子2+中性子1]に変わるのです。
[陽子2+中性子1]の原子というと、先ほど登場した「ヘリウム3」ですよね。
つまり、トリチウムがヘリウム3に変わるのです。
この時、電子と反電子ニュートリノがひとつずつ放出されるのですが、ニュートリノについてはあまりに専門的な話なので割愛します。
というより、正直私にはわかりません。
とにかく、このような現象のことを「β崩壊」といい、放出された電子、あるいは放出された電子が飛んでいる状態のことを、「β線」と呼びます。
β線は放射線の一種です。
放射線を放出するのですから、トリチウムは「放射性同位体」です。
「β崩壊」があるからには、もちろん「α崩壊」もあります。
では次に、α崩壊の説明に移りますが、これについてはある暗殺事件のお話から始めた方がいいでしょう。
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