株式会社ファイブスターズ アカデミー
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松沢が紹介したのは、レオという男性チンパンジーの話です。
レオは脊髄の重い病気に罹り、寝たきり状態になっていました。
研究者や獣医がボランティアとして24時間のケア体制を敷きます。
その甲斐あって半年でかなり回復したそうですが、不思議なことにその間レオは絶望することが全くありませんでした。
口に水を含んでは、ケアしてくれる人に吹きかけるといういたずらをよくしたそうです。
なぜ、彼はこんな思い病気に罹っても絶望しなかったのでしょうか。
松沢の分析はこうです。
「チンパンジーには『今』しかないから」
つまり、将来のことを全く考えないから絶望しないというのです。
でも、チンパンジーに「過去」や「未来」という概念が全くないかというと、決してそんなことはありません。
けんかをしたら、仲直りするまではしばらく気まずそうにしています。
ちょっと痛い目にあった人や物には近づこうとしないか、最初から臨戦態勢を取ります。
だから、「過去」はちゃんと覚えているのです。
また、これから外の運動場に出られることがわかると、そわそわ動き出したりします。
「未来」もわかるようです。
しかし、彼らにとっては、「過去」や「未来」よりも、「今」の方の重みが圧倒的に大きいのです。
「今」が認識できるということは、極めて重要なことです。
認知症かどうかを調べるスクリーニング・テストというのがありますが、最初の質問は「今日は何月何日ですか?」で、次は「ここはどこですか?」です。
認知症になると最初に「時間」がわからなくなり、次に「場所」がわからなくなり、最後に「人」がわからなくなるそうです。
脳科学的に言うと、頭頂葉内側面の後方に位置する「楔前部」という部位が「今」を認識する脳内ネットワークの中心です。
ここに老廃物が溜まり機能が損傷を受けると、「時間」や「場所」だけでなく「私」という認識も失われてしまいます。
つまり、「今」と「ここ」の認識は、「私」という認識と密接に関係しているのです。
「今」と「ここ」を意識することは、取りも直さず「自分」を意識することに他なりません。
今ここで、自分がやるべきことを淡々とやる。
それこそが、自分という人間の存在証明なのです。
そもそも、将来のことを考える動物はヒトだけです。
脳生理学者で大阪大学大学院教授の北澤茂は、ヒトだけが将来に希望を抱いたり、反対に絶望したりすることができる動物だと言います。
ということは、もしかしたらヒトの進化は、先のことを考えるようになったことがきっかけなのかもしれません。
ところが、現代は将来の希望よりも、不安の方が上回ってしまう時代です。
特に日本人は、その傾向が強いように思います。
国連の機関が「世界幸福度ランキング」という調査を発表していますが、2023年の日本のランキングは47位で、先進国の中で見ると毎年最下位近くをウロウロしています。
上位はフィンランドやデンマークなど貧富の差があまり大きくない国ですが、日本より一人当たりGDPが小さな国でも幸福度が高い国はたくさんあります。
日本の幸福度が低いのは、もしかしたら日本人が先のことを気にする、所謂「心配性」の傾向が強いことが原因ではないでしょうか。
そういえば、ラテン系の人々などは生まれつき「今」を楽しむ術を知っていますよね。
政治の責任を云々する人もいますが、幸福かどうかを決めるのは最終的にはヒトの「心」です。
政府の仕事は政策を通じて経済をよくしたり、貧富の差を少なくすることです。
だから、経済政策を通じてある程度は幸福度アップに貢献することはできますが、政府がヒトの「心」の問題にまで介入することはできません。
現代は将来の不安が希望を上回ってしまい、不安によってヒトが痛めつけられる時代です。
今こそ私たちはチンパンジーを見習って、「今」のことだけを考えるようにした方がいいのではないでしょうか。
今この瞬間に起こっていることを、評価することなくありのままに受け止めること。
チンパンジーのこの教えは、最近「マインドフルネス」という名前で普及し始めました。
あなたも不安だらけの将来のことを考えるよりも、「今」やるべきこと、「今」できること、そのことに集中してみませんか。
だって、所詮「将来」なんて「今」の連続でしかないのですから。
どうです?
なんだか少しだけ、気が軽くなったような気がしませんか。
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