株式会社ファイブスターズ アカデミー
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バリバリのエリートにビジネスの状況を尋ねると、口を揃えて「変化に対応しなければならない」と言うそうです。
ところが、部下のマネジメントに話が及ぶと、「褒められるためにお前は仕事してるのか」という言葉をよく聞くと、経営学者の中原淳がブログで嘆いていました。
確かに、若者たちの間に「褒められたい症候群」が存在することは認めます。
また、俗に「意識高い系」と言われる人たちの中には、「すごいね!」と称賛してもらうことがエンジンになっている人が少なからずいることも事実です。
でも、人はそもそも何のために仕事をしているのでしょう?
「褒められたいから」という理由がNGならば、やっぱり「お金のため」でしょうか?
まさか、「成長するため」といった、どこかのベンチャー社長が言い出しそうな空論を持ち出す人はいないでしょうね。
働く動機に関する、興味深い心理実験があります。
行動経済学者のダン・アリエリーが、2014年にNHKのEテレで放送された『お金と感情と意思決定の白熱教室』で紹介した実験。
まず、被験者に用紙を渡します。
用紙には連続した意味不明のアルファベットが9行ほど書かれています。
例えば“kassfadkaakssakska”といった文字列のように。
課題は、「隣り合う文字が同じだったら、二つの文字を丸で囲みなさい」というもの。
この例でいくとss、aa、ssなどが該当します。
被験者は、課題が終わったら用紙をスタッフに渡し、また別の用紙をもらいます。
報酬額は一枚目が3ドル。
でも、二枚目以降は30セントずつ段階的に下がっていきます。
そして、被験者が「報酬に見合わないからやめたい」と申し出たところで実験は終了となります。
被験者はA、B、Cの三つのグループに分けられるのですが、Aグループは用紙に自分の名前を書き、課題が終わるとスタッフに渡します。
スタッフはチェックしてから、用紙の山に積み重ねていきます。
いわば「認知」される条件。
Bグループは名前を書く必要もなく、終わった用紙はスタッフに渡すのですが、スタッフは中身をチェックすることもなくただ書類の山に積み上げていくだけ。
つまり、「無視」される条件です。
最後のCグループはもっとひどくて、渡された用紙をスタッフがそのままシュレッダーにかけてしまいます。
BとCのグループは用紙をチェックされることがないので、ごまかしがあったとしてもバレません。
特にCグループはすぐにシュレッダーにかけられるので、極端な話をすると課題を解かずに白紙のまま提出してもお金がもらえます。
さて、結果はどうなったでしょう。
一番早くやめたのは意外にも「シュレッダー」のCグループでした。
最後の報酬は平均30セント。
どうやら、人は「成果が破壊される」と意欲を失うようです。
次が、「無視」されるBグループで、26セント強。
最も頑張ったのは「認知」されるAグループでした。
最後の報酬の平均は15セント。
もし、仕事をする最大の動機が「報酬」だとするなら、ウソをついても楽にお金を稼げるCグループが早々にやめてしまうはずがありません。
人は金のためだけに働いているのではないのです。
働くことの最大の動機は、やった仕事が認知されたり評価されたりすることです。
アリエリーはこう結論づけています。
「人のやる気をとことん削ぎたければ、成果物をシュレッダーにかけるか、一切無視することである」
まさか、部下の報告書をそのままシュレッダーにかけてしまう管理職はいないでしょうが、「君の成果はしっかり見ているよ」というメッセージを、あなたはキチンと部下に伝えていますか?
それこそが、部下にとっては最大の動機づけになるのです。
「褒めるのが苦手」という管理職は大勢いますが、褒めることは別にマストではありません。
無闇に褒めろと言っているのではなく、キチンと「評価」しなさいと言っているのです。
評価自体はとても簡単な作業です。
まず最初に良くできた点、次に改善したらもっと良くなる点。
この二つを伝えるだけです。
ただ、この作業が簡単でないのは、評価するにはかなりの観察力が必要になることです。
部下の仕事をロクに観ていない上司は、部下の仕事の成果をシュレッダーにかけているのと同じです。
ビジネスの状況は日々目まぐるしく変化しています。
でも、働く人のモチベーションの源泉は昔から大して変わっていませんよ。
「褒められるためにお前は仕事してるのか」と叱る上司だって、苦労して仕上げた自分の書類が、目の前でシュレッダーにかけられたら一体どんな気分になるでしょう。
部下の仕事をチキンと評価しないのは、部下の成果をシュレッダーにかけているのと同じですよ。
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