株式会社ファイブスターズ アカデミー
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好き嫌いは実に厄介です。
特にビジネスの場面では、人事考課に介入することさえあります。
これといった治療法のない“難病”ですが、思い込みと同じで脳内に作られた誤りの回路であることには間違いありません。
今回は、ハーモニカが大嫌いというだけで、取り返しのつかない失敗をしてしまった男の話です。
中山康樹著『ジャズメンとの約束』で紹介されているその男の名は、デイヴ・デクスター・Jr。
キャピトル・レコードで、誰もが一目置く敏腕プロデューサーでした。
彼が手がけるミュージシャンは、例外なくヒットを飛ばしました。
レス・ブラウン、スタン・ケントン、ジューン・クリスティ、ペギー・リー。
さらには、落ち目だったフランク・シナトラと契約するように進言したのも彼です。
シナトラはその後見事な復活を遂げ、キャピトル・レコードのドル箱となりました。
ジャーナリストとして活躍していた頃には、カウント・ベイシーの売り出しに一役買ったこともあります。
ジャズ専門誌『ダウンビート』の編集者だったことも、音楽界には広く知れ渡っていました。
キャピトル・レコード社長のアラン・リヴィングストンは、彼の「耳」に絶大な信頼を寄せ、新人ミュージシャンの発掘やデモ・テープの判断を一任していました。
そんなある日、デクスターのもとに、風変りな名前のグループからデモのシングルが送られてきました。
デクスターは無視しましたが、グループの執念はすさまじく、その後も再三にわたりデモが送られてきます。
それでも、デクスターは頑として取り合おうとしません。
時折、会議の議題には上るのですが、その度にデクスターの口から出る言葉は決まっていました。
「忘れろ!」
ところが、しびれを切らしたグループのマネージャーと称する人物から、今度は社長のリヴィングストン宛てに国際電話が架かってきます。
「なぜレコードを出してくれないのですか」
それは売り込みというより、むしろ抗議に近いものでした。
そこまで言うのならと、リヴィングストンは試しに三枚のデモ・シングルを聴いてみました。
たしかに「変わった」音楽でした。
デクスターが言うように、忘れたほうがいいような気もします。
でも、一方では「この音楽には何かある。それにどこか新しい」という感想も湧いてきます。
そこで、一体どこが気に入らないのかデクスターに尋ねました。
「ハーモニカだ」
デクスターは、大のハーモニカ嫌いだったのです。
でも、三枚目の曲にはハーモニカは入っていません。
「そのかわり、『ヤーヤーヤー』なんていうバカげた意味のないコーラスが入っている」
日本の諺に「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」というのがありますが、どうやらデクスターもその回路にはまっていたようです。
ところが、リヴィングストンの考えは違いました。
どうせ失うものは何も無いのだからと、デクスターの反対を押し切ってレコード化の決定を下します。
すると、予想だにしないことが起こりました。
一番新しいシングルを発売したところ、セールスが過去の記録を瞬時に塗り替えてしまったのです。
急いでボツにした三枚のレコード化に着手しますが、時すでに遅し。
なんと発売権を放棄したとみなされ、すでにヴィージェイ、スワン、トーリーといった誰も知らないようなマイナー・レーベルから、ひっそりと発売されていたのです。
その後キャピトル・レコードは、発売権を取り戻すために複雑怪奇な訴訟合戦に耐え抜き、さらには気の遠くなるような大金を払わざるを得ませんでした。
かくして、デクスターの評判は地に堕ちます。
ハーモニカ嫌いというたったそれだけの理由で、彼はそれまでの名声を全て失ってしまったのです。
もし、デクスターの脳内の誤った回路が発動しなければ、彼は間違いなく偉大なプロデューサーとして歴史に名を刻んでいたことでしょう。
笑い事ではありませんよ。
あなたの会社にも、デクスターのような間違いをしている管理職が大勢いるのではありませんか。
人事考課に好き嫌いを持ち込むのはご法度です。
人事の原則は、好き嫌いという思い込みを徹底的に排除し、謙虚な目で客観的な評価を下すことです。
ちなみに中山はエッセイの最後で、ご親切にもデクスターがボツにした三曲の曲名を紹介してくれています。
『ラヴ・ミー・ドゥ』、『プリーズ・プリーズ・ミー』、『シー・ラヴズ・ユー』。
どうです?
少しは事の重大さに気づいていただけましたか?
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