株式会社ファイブスターズ アカデミー
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ビジネスにおいて、プレゼンテーション能力は非常に重要です。
時には、その出来栄えが会社の命運を左右することさえあります。
そのため、書店の棚にはプレゼンのテクニック本がズラリと並んでいます。
ところが、1974年に行われた「伝説のプレゼン」は、それらのセオリーを全く無視した、実に破天荒なものでした。
馬場康夫の著書『ディズニーランドが日本に来た!』で紹介されているのは、ディズニーランド誘致のためのプレゼンです。
当時、ディズニーランドの誘致に関しては、三井グループの他に三菱グループも手を挙げていたそうです。
しかも、こちらはすでに表敬訪問を済ませており、三井よりも一歩リードした状態。
一発逆転を狙った運命のプレゼンが、年の瀬も押し迫った12月、ウォルト・ディズニーの幹部たちを招いた帝国ホテルの一室で始まります。
プレゼンターの大役を任されたのは、その直前に電通からオリエンタルランドに引き抜かれた堀貞一郎。
翌日には三菱側のプレゼンが控えており、失敗は絶対に許されません。
事前のリハーサルで、堀が日本語で説明した後、通訳がマイクを通して英語で伝えるという段取りが確認されていました。
冒頭、ウォルト・ディズニーのドン・テータム会長が挨拶に立ちます。
「本来ならば我々が日本語を勉強し、日本語を理解できるようになってから来るべきだったのに、その時間がなく英語でプレゼンテーションしていただくことを、最初にお詫びしたい」
見事としか言いようのない社交辞令です。
ところが、この言葉を聞いた堀が、何を思ったか突然シナリオにない行動に打って出ます。
通訳のマイクを奪い取るや否や、身振り手振りを交えて早口の日本語でまくしたて始めたのです。
「成田に旅客機がガーッと降りて、高速道路をビューッとクルマで都心まで飛ばすと・・・」
もう滅茶苦茶です。
日本語がわからないウォルト・ディズニーの幹部たちは呆気に取られ、鳩が豆鉄砲を食らったような表情を浮かべています。
慌てた通訳が必死に英語で追いかけますが、なにせマイクを奪われているため肉声を張り上げるしかありません。
でも、会議室にはマイクを通した堀の日本語がガンガン響き渡り、通訳の言葉が幹部たちに届いているようには見えませんでした。
ほどなく、テータムが立ち上がり叫びます。
「ストップ!!」
彼は堀の発言を制すると、こう続けます。
「我々はとんだ間違いをしていたようだ」
この言葉で、三井側は凍りつきました。
なんてことをしてくれたんだ。
きっとヘソを曲げたに違いない。
全員が堀に恨みの眼差しを向けつつ、ハラハラしながら事の成り行きを見守ります。
テータムはおもむろに口を開きます。
「さきほど日本語を勉強してくるべきだったといったが、訂正する」
会議室は水を打ったような静けさに包まれました。
わずか一瞬の沈黙でしたが、堀には数十分の長さに感じられたそうです。
テータムは、少し芝居がかった口調で沈黙を破ります。
「ミスター・ホリ、君の日本語はよくわかる。我々は日本語を勉強してくる必要はなかった」
その瞬間、それまでピンと張り詰めていた緊張が一気に緩み、どっと笑いが起きました。
なんと堀の熱意が通じたのです。
三井が先行する三菱を捉え、そしてついに追い抜いた瞬間でした。
その後、ヘリコプターで上空から候補地を視察した一行は、なんと翌日の三菱側のプレゼンをキャンセルしてしまいます。
堀のプレゼンが決め手となり、日本にディズニーランドがやってくることが決まったのです。
このエピソードは、ビジネスにとって重要なことを教えてくれているような気がします。
ウォルト・ディズニーの幹部たちは、どんな会社と組みたかったのでしょう?
プレゼンテーションの上手な会社でしょうか?
違いますよね。
彼らは、最もディズニーの誘致に熱心な会社と組みたかったはずです。
プレゼンは、まさにその「熱意」が伝わるかどうかの勝負です。
現に日本語が通じなくても、熱意は通じました。
単に理屈を説明するだけのプレゼンならAIにもできます。
でも、人の心を動かすことはできません。
人間がプレゼンテーションをする意味はそこにあります。
人の心を動かすのは、プレゼンターの熱意なのです。
スライドショーの出来映えを云々する前に、やるべきことはたくさんあるのではありませんか。
堀は、東京ディズニーランドが開園に漕ぎつけたのを見届けると、あとは若い人たちに任せたとばかりに会社に辞表を提出してしまいます。
なんともカッコいい引き際ですよね。
ちなみに、ホーンテッド・マンションの「部屋が伸びているのか、それとも諸君が縮んでいるのか」という名調子は、堀の肉声だそうです。
そんな美声の持ち主だったことも、勝因のひとつだったのかもしれません。
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