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5☆s 講師ブログ

マスメディアを信じてよいのか?(3)

高田文夫が、「放送」という漢字は「送りっ放し」と書くと言った真意は、終わった放送を反省している暇があったら、明日の放送のことを考えるべきだということです。
なるほど、だからこのワイドショーでは問題発言が後を絶たないのですね。

あるワイドショーの現役コメンテーターは、「ワイドショーは井戸端会議である」と断言しました。
このコメンテーターの職業は落語家。
つまりワイドショーというのは、専門的な知識を持たないタレントたちが集まって、まるで野次馬のように好き勝手な個人的意見を発信しているにすぎないのです。
論理的に正しい解説や分析などでは決してありません。

2022年2月にロシアがウクライナに侵攻を開始した時のあるワイドショーでは、コメンテーターの席に座っていたのはお笑い芸人とゲイバーのママでした。
もう少し真面目に番組作りができないものでしょうか。

でも、「送りっ放し」という高田の発言は、バラエティなどの「娯楽番組」に関するもの。
「報道番組」は違うはずです。
と、ここで問題になるのは、「情報番組」というのは「娯楽番組」なのか、それとも「報道番組」なのかということです。

今回の案件で譴責処分を受けた上司の肩書きは、「報道局情報番組センター長」でした。
ということは、ワイドショーは「報道局」で制作されていたことになります。
「情報番組」というのは「報道番組」に分類されるのです。
「報道番組」が、政治的な匂いを隠すよう巧妙に演出されていたというのは大問題です。

冒頭で、G7の各国では「マスメディアを信頼しない」が約7割を占めるのに、日本だけは逆で7割が信じているという話をしました。
もしかしたら日本以外の先進国では、マスメディアが政治的な演出をしていることをほとんどの国民が知っているのかもしれませんね。

一方で、テレビ局は熾烈な視聴率競争をしているので、ある程度独自色を演出するのはやむを得ないという意見もあります。
実際、新聞は政治的記事に関してそれぞれかなりの独自色を打ち出しています。

実は、テレビは新聞とは決定的に違うところがあります。
OECD加盟国のうち日本を除くすべての国は、電波帯というのはテレビ局が「入札」によって手に入れます。
これを「電波オークション」といいます。
テレビ局がお金を払って電波帯を落札したのであれば、もはや「公共の電波」ではないので、新聞のように独自色を出そうが、公平性に欠けようが文句を言われる筋合いはありません。

だから、他の先進国では「政治的に公平」であることを規定する放送法などないのです。
マスメディアを信じていない人が多いのは、このカラクリを知っているからです。
ところが、日本だけは大手新聞社が介入することで、公共財である電波帯が極めて不透明な形でテレビ局に割り当てられています。

総務省の「無線局免許人の電波利用料負担額」を見ると、各民放キー局が支払っている金額はNTTドコモの負担料の1/30にすぎません。
つまり、民放テレビ局は、公共財である電波帯をタダ同然で使用しているのです。

これを、新聞に例えてみましょう。
新聞社が書いた記事を工場が印刷したら、あとは自動的に家庭に配送されていきます。
しかも、朝、昼、晩と何回も何回も。
この時、新聞社が負担するのは記者の人件費と工場の建築費だけで、膨大なお金がかかる配送網のほとんどは国が負担してくれているのです。
どうです、こんなにおいしい商売が他にありますか?

日本国が、放送法で「政治的な公平性」を求めている理由はここにあります。
もし、どうしても「政治的な公平性」を確保するのが難しいのなら、日本でも電波オークションを実施すればいいのです。

そうすれば、新聞のように政治的意図を堂々と前面に出して報道できます。
テレビ局が、政治的意図がにおわないように苦労することもなくなるのです。

このコメンテーターの爆弾発言はネットではお祭り騒ぎになりましたが、テレビや新聞はほとんど報道しませんでした。
テレビ局とその親会社の新聞社は、これを取り上げることで国民の議論が電波オークションに及ぶことを恐れていたのでしょう。

テレビ局と親会社の新聞社にとって、電波帯をタダ同然で使っていることは国民には絶対に知られたくない事実です。

発展途上にあるのは、日本のマスメディアではありません。
このカラクリを知らない私たちの方です。
私たち視聴者こそが「発展途上」なのです。

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