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5☆s 講師ブログ

円安対策は簡単!(1)

2022年春以降円安が進み、エネルギー関連や輸入品の値上げが相次ぎました。
マスメディアは、ここぞとばかりに連日に渡り「悪い円安」キャンペーンを繰り広げます。
「円安悪者説」を決定づけたのは、有名なアパレル経営者の放った一言でした。
「円安はひとつもいいことがない」

でも、円安はそんなにも悪いことなのでしょうか。
円安は輸出にはプラスに働きますが、輸入にはマイナスに働きます。
円安も円高もそれぞれいい面と悪い面がありますが、実は総合的に見ると円安はプラス要素の方が多いのです。

詳しい説明の前に、「国際収支」について経済学の基礎知識をおさらいしておきましょう。
「国際収支」、経済学では「経常収支」と言いますが、以下の3つの要素から構成されています。

①貿易収支
②貿易外収支
③移転収支

③の「移転収支」は外国への無償援助のことですが、少額なのでここでは無視します。
では、まず①の「貿易収支」から見てみましょう。
貿易収支とは、モノやサービスの輸出入に関する収支のことです。
円安は、輸出製品の価格を押し下げるので、輸出産業にとっては非常に有利です。

でも、日本の輸出はかつてほど盛んではないので、貿易収支上は大してプラスに働きません。
これだけ見ると、円安のメリットは薄いように思われます。

では、②の「貿易外収支」の方はどうでしょう。
貿易外収支とは実物の取引ではなく、お金の取引、所謂「資本取引」と呼ばれるもののことです。
具体的には、海外への投資から得られる利子や配当などが「貿易外収支」の収入に当たります。

かつての日本は、1ドル70円台という超円高に苦しめられました。
この時、多くの企業が海外に工場を建てるなどして、日本以外の国に生産拠点を移したのは記憶に新しいところです。
これが、日本の輸出がかつてほど盛んでなくなった理由です。
でも、海外で生産活動を行うと、海外で利益が生まれます。

その利益を日本に持ち込んだのが、「貿易外収支」における収入です。
2021年の国際収支統計によると、日本の貿易外収支はなんと20.5兆円もありました。
一方、貿易収支の方はわずか1.7兆円。

つまり、今の日本企業は製品を海外に輸出して稼ぐのではなく、海外法人から得られる配当や利子などの投資収益で稼いでいるのです。
日本のことを借金大国だと勘違いしている人がいますが、実は日本は世界一の「金貸し大国」です。

時々「貿易収支」が赤字になると、「貿易立国・日本の衰退」などと大騒ぎするマスメディアが出てきますが、それは日本企業の稼ぎ頭が投資だということを知らないからです。
幼稚な煽り記事を書く前に、もう少し経済の勉強をした方がいいでしょう。

海外での投資収益を日本円に換金する際、円安は極めて有利に働きます。
「円安はひとつもいいことがない」と発言した経営者の会社も、円安のおかげで2022年8月の第3四半期決算において1,100億円もの為替差益が発生し、過去最高益を叩き出しました。
これが資本収支における円安のメリットです。

でも、なぜかこの経営者にとっては、1,100億円の利益は「いいこと」ではなく「悪いこと」の部類に入るようです。
私には理解できません。
そこまで言うなら、為替差益はどこかの慈善団体に寄付したらいいのではないでしょうか。

このように、円安は本来、日本全体にかなりの好影響を及ぼすものです。
そのため、自国通貨安に誘導する政策のことを、経済学では「近隣窮乏化政策」と呼びます。
つまり、自国を豊かにして他国を貧しくする、「ズルい」政策というわけです。
だから、為替介入が非難されるのです。

でも、今回は日本が為替介入をしても、アメリカは非難しませんでした。
なぜなら、日本の円買い介入はドル安を意味するので、アメリカにとっては有利な介入だからです。

海外に進出している日本企業は、おそらく次の決算で多額の利益を計上するでしょう。
法人税の税収もハネ上がるはずです。
海外に進出している企業はエクセレント・カンパニーが多いので、円安は日本企業の国際競争力をさらに高めるでしょう。

一方、輸入をメインにしている企業は、輸入製品の価格が高騰して非常に困った事態に陥っています。
そしてそれは、そっくりそのままエネルギーや食料品の値上げとなって、私たち庶民の生活を直撃しています。
マスメディアの中には、日銀が金融緩和を止めれば円安は是正されると主張しているところもありますが、これは大変な間違いです。
なぜ、日銀が金融緩和を続けているかというと、景気が悪いからです。

金融緩和をストップすれば金利は必ず上がります。
住宅ローンの金利もハネ上がります。
それでもいいのでしょうか。
電気代や小麦粉の値段は多少下がるとしても、それと引き換えに日本中に住宅ローンの返済に苦しむ人が溢れるでしょう。

マスメディアの人は、本当にそれでもいいと思って原稿を書いているのでしょうか。
全国紙やテレビのキー局といった、大手マスメディアに勤める人の平均給与は大体1,200万円前後です。
このくらい高給を貰っていれば、住宅ローン金利の上昇など大した問題ではないのでしょうが、だからと言って財務省の下請けのような情報を発信するのはいかがなものかと思います。

では、現実問題として、政府はどのような対策を取るべきなのでしょう。
実は、答えは極めて簡単です。
円安は日本全体には有利に働きます。

なので、円安が不利に働く業界に対して個別に補助金を出せばいいだけの話です。
具体的には、電力やガス会社、それに食品などを輸入している会社に補助金を出して、消費者の負担を軽くするのがいいでしょう。

ただし、補助金政策には大きな欠点があります。
それは申請書類などの手続きが面倒だったりして、予算の執行率がそれほど高くないことです。
予算はあっても、遣い残しがどうしても出てしまうのです。
残ったお金はそのまま「埋蔵金」になってしまいます。

そこで、補助金以外の対策を考えてみました。
これなら、予算を余すことなく遣い切ることができるという方法がありました。
その話は次回。

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