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5☆s 講師ブログ

東洋人と西洋人(2)

アメリカ人やカナダ人に「属性」や「好み」を質問すると、他者との違いを過度に強調する答えが返ってくるそうです。
それだけ自己顕示欲が強いのでしょう。

また、「自己評価尺度」について聞くと、ほぼ全員が「自分は平均より上」と答えます。
一方、東アジア人の場合は正反対で、自分を低く評価する傾向があります。
「謙虚」を重視する文化が影響しているという説もありますが、回答の匿名性が保証されている実験でも同じ結果が得られていることから、この説は否定してもいいでしょう。

「個人目標」や「立身出世」についても、西洋人は関心が高いのに比べ東アジア人はそれほどでもありません。
ニスベットは、東アジア人は個人的な成功よりも集団目標や協調的な行動への関心が高く、調和的な社会関係を維持することを優先して考える傾向があると分析しています。

「出る杭は打たれる」という諺がありますが、これは個性に対する社会の偏見を表現したアジア特有のものだそうです。

ちなみに、この諺の続きとして、松下幸之助の「出過ぎた杭は打たれない」は有名ですが、トリンプ・インターナショナル・ジャパンの代表を長く務めた吉越浩一郎は、「出ない杭は地中で腐る」と言っています。

名言ですよね。

行動経済学者のドン・アリエリーらが、ビールを注文する際にどのような同調現象が起こるかを調べた実験があります。
バーを訪れたグループに、「ビールの試飲をしませんか。4種類用意しています」と声をかけ、それぞれのビールの特徴を説明した後で「皆さんどれがいいですか」と尋ねて順番に声に出して注文してもらいます。
各人に紙に書いてもらう方法も試しましたが、この場合は後で注文する人の銘柄が、先の人に左右されることはありませんでした。

面白いことに、アメリカでは後で注文する人は、先の人とは違うビールを選択する傾向がありました。
つまり、飲みたいビールがあったとしても、先に言われたので別の銘柄を選択したのです。
ところが、香港で同様の実験を行ったところ、ほとんど人が先の人とビールを注文しました。
どうやら、「同調圧力」は東アジアの方が強いようです。

さて、オランダの国際ビジネススクールの教授チャールズ・ハムデン=ターナーらが世界各国で開催している、中間管理職を対象にしたセミナーのアンケート結果もニスベットの分析を裏づけています。
このセミナーは参加者の総数が1万5千人という大規模なもの。

まずは「仕事」についての質問です。
「どちらのタイプの仕事が好きか?」
答えは、以下の2つのうちどちらかを選ばなければなりません。

①個人の独創性が奨励され、それを発揮できる仕事
②特定の個人に特権が与えられることなく、全員で一緒に働くことのできる仕事

①を選んだ人が多かったのは、アメリカ、カナダ、オーストラリア、スウェーデンなどで約90%を占めています。
これは「チーム力」よりも「個人の力」を重視する考え方です。

ところが、日本やシンガポールでは①を選んだ人は50%にも達していません。
この結果も何となくわかりますよね。

なお、このアンケート調査では新たな発見もありました。
ドイツ、イタリア、ベルギー、フランスなどの国が、両者のちょうど中間に位置する結果となったのです。

つまり、東アジアを一方の極に置き、もう一方の極にプロテスタントかつアングロ=サクソン文化の影響が強い国を置くと、ベルギーやドイツなど地中海諸国は両者のちょうど中間に位置していることになります。

一口に「西洋人」と言っても、中身は結構違うのですね。
十把一絡げに、「欧米」と呼ぶのは考えものかもしれません。

「企業」の捉え方に関する質問でも面白い結果が出ています。

①企業とは仕事を効率的にこなすためのシステムである。
従業員はそのために雇われており、自分が行った仕事に応じた賃金の支払いを受ける。

②企業とは人々が集まって共に働く集団である。
従業員は仲間や組織と社会関係を築いており、企業の仕事はそれらの社会関係に依存している。

①を選択したのはアメリカでは約75%で、オーストラリア、イギリス、オランダでは50%以上。
ところが、日本とシンガポールでは1/3以下しかいませんでした。
この結果について、ニスベットはこう解釈しています。

「西洋人にとって企業とは、別々の機能を発揮する人が集まった原子論的なモジュールの社会である。一方、東アジアでは企業自体がひとつの有機体と考えられている」

以上を踏まえて、東アジア人の特徴についてはこんな風にまとめられています。
「東アジアでは自己にとっての目標というのは、他者より秀でることや個性的であることではなく、集団の目標を達成するために何らかの役割を果たすことにある」

なるほど。
だから東アジアでは、個性を発揮することよりも、所属する集団に適応することの方が優先するのですね。

この話を聞いてふと思ったことがあります。
ニスベットの言う西洋人の「別々の機能を発揮する人の集合体」という概念は、まさに今流行りの「ジョブ型人事制度」にピッタリ当てはまりますよね。
ということは、日本人の仕事観や企業観を西洋型に変えない限り、「ジョブ型人事制度」はうまく機能しないということになります。

ジョブ型人事制度を成功させるには、今までの「素人でもチームの一員として貢献できる部分がある」という考え方から、「各分野のプロ職人が集まるチーム」に変えていく必要があります。

口で言うのは簡単ですが、果たしてそんなことできるのでしょうか。
そもそも日本では「プロ職人」と言っても、「企業内専門職」にすぎません。
そのやり方が他の企業で通用するかどうかなんて誰にもわからないのです。

そう考えると、いきなり西洋型の「ジョブ型人事制度」を導入しても、うまく機能するとは到底思えません。
「ジョブ・ディスクリプション」の記述さえしっかりしていればなんとかなるだろう、と考えるのは大間違いです。
本家アメリカのジョブ・ディスクリプションだって、例えば営業職なら「営業及びそれに関連する業務」としか書かれていないそうです。
形だけ整えてもダメなのです。

かつての日本企業は、挙って「成果主義」を導入して大失敗した経験があります。
「成果主義」こそ、プロテスタントかつアングロ=サクソン文化の典型ではありませんか。

同じ過ちを繰り返さないためにも、私たちが今しなければならないのは、チーム員の関係性に十分配慮した、東アジアとプロテスタントかつアングロ=サクソンのちょうど中間をいく、所謂「地中海諸国型」の人事制度を模索することではないでしょうか。

こんな風に書くと、「具体的にはどんな制度ですか?」という質問が飛んできそうです。
自分の頭で考えようとせず、他人に答えを求めるその姿勢こそ典型的な東アジア型ですよ。

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