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5☆s 講師ブログ

世界有数の不平等国(2)

ヨーロッパの方が圧倒的に優れていることは明らかです。
なぜなら、再分配「前」の一人当たり所得が日本よりも大きいからです。
つまり、稼ぐ人が巨額の富を稼ぐことで、国全体の富が大きく増えているのです。

では、日本はどうでしょう。
巨額の富を稼ぐ人がいないので、国全体の富は小さいままです。
そのため、日本の所得再分配政策は、その小さい富を細々と分け合うだけの政策になっています。

なぜ、日本では巨額の富を稼ぐ人が現れないのでしょうか?
その原因は「規制」です。

欧米に比べて、日本は競争が激しくならないよう様々な規制を設けています。
日本は長い間、規制や補助金などで、生産性の低い中小企業や農業を保護することに心を砕いてきました。
言い換えると、日本という国は「競争前の段階での平等」を目指してきたと言えます。
これで日本全体の富が大きくなるはずがありません。

日本の国の富を大きくするためには、生産性の高い仕事をしている人を規制しないことが重要です。
ただし、アメリカはお手本になりません。
あれはやり過ぎです。

アメリカの経営者には超高額所得者が多くいますが、それは自分の報酬額を自分で決められるからです。
コーポレートガバナンスが全く効いていません。
彼らが得ている巨額の報酬は、公正な競争の結果手にしたものではないのです。

ただ、規制をすることの問題点は政治家たちも昔から認識していました。
だから、歴代の首相たちは、一応「規制改革」というお題目をずっと掲げてきました。
ところが、最近になって大きな変化が起こります。

「新しい資本主義」という聞き慣れないキャッチ・フレーズを掲げて就任した岸田首相が、なぜか規制改革の旗を降ろしてしまったことです。
首相の所信表明演説に「規制改革」の文言がなかったのは40年ぶりだそうです。
「新しい資本主義」とは、「競争のない社会」を指すのでしょうか。
だとしたら、競争によって国の富を拡大することを目指した外国の戦略とは正反対です。

岸田首相が最初に掲げたスローガンは、「成長と分配」でした。
その後、「分配を成長の道筋とする」と発言しました。
これは、経済学の観点から言うと順序が逆です。
最初に「成長」がないと「分配」はできません。

さらには「株主資本主義からの転換」もスローガンとして掲げましたが、資本主義というのは株式会社制度で成り立っています。
その株式会社の根幹を成すのが「株主」。
「株主資本主義」を変えるということは、資本主義をやめて社会主義に転換するという意味でしょうか。
理解に苦しみます。

首相がどこまで経済学を勉強しているかわかりませんが、政府の経済方針が発表される度に株式市場が急落するのは、マーケットが不安視している証拠です。

日本の成長率は、欧米よりも遥かに低い水準にあります。
このままでは、ますます少なくなる富を、みんなで分け合うことになります。

今の日本にとって最も有効な処方箋は競争を促すことです。
もし、その競争に敗れて収入が大きく減った人が出た時には、ヨーロッパのように所得再分配政策で救済すればいいのです。

さらには、本人の努力以外の要因、例えば相続財産や親のコネなどで稼いだ所得にもしっかり課税することです。
なぜなら、それは競争で得た富ではないのですから。

2018年のデータによれば、日本には申告所得が100億円を超える「“超超”富裕層」が31人いるそうです。
その全員が給与所得ではなく、分類上「他の区分に該当しない所得」を得ています。
「他の区分に該当しない所得」とは、利子所得、配当所得、株式や土地の譲渡所得などの所謂「資本所得」と呼ばれるものです。

2018年の申告所得の「所得階級別税負担率」(所得税の所得に対する比率)を見ると、全所得が1,500万円を超えると「資本所得」の割合が急激に増えます。

つまり、所得が高額になればなるほど、収入のほとんどが「資本所得」になるということです。
「給与所得」の税率は段階的に高くなっていきますが、「資本所得」の税率の方はある水準に達するとほとんど一定となります。
「給与所得」と「資本所得」の税負担率がほぼ同じなのは、所得が1,200万円以下の時。

1,200万円を超えると、「資本所得」の税負担率は緩やかに18.8%まで上昇していきますが、「給与所得」の税負担率の方は急上昇しますので両者の税負担率は逆転します。
18.8%という負担率は、給与所得者でいうと1,500万円~2,000万円クラスに相当します。

ということは、2,000万円を超える高額所得者の場合、給与所得ならそれなりの高い税金を払わなければなりませんが、資本所得ならボロ儲けということです。
こんなにも「資本所得」に対する課税が優遇されている国は見たことありません。

世界的に見ても異常です。

例えば、利子所得に対する税率を他の国と比較してみましょう。
日本では一律20%です。

これに、2037年までは復興特別所得税が上乗せされるため20.315%になります。
利子所得だけでなく株や投資信託などの金融所得にかかる税率も、儲けた金額に関係なく一律20.315%です。
給与所得の最高税率が55.315%(住民税・復興特別所得税を含む)であることを考えると、いかに優遇されているかがわかりますよね。
しかも日本では、金融所得は他の所得と合算されない「申告分離課税」です。

海外はどうなのか見てみましょう。
アメリカの利子所得は10~37%の「総合課税」です。
総合課税は他の所得と合算されるので、高額所得者にとっては極めて不利です。

しかも、これに州税と地方政府税が上乗せされます。
ニューヨークの場合は州税4~8.82%と市税2.7~3.4%、および税額の14%の付加税が上乗せされます。

イギリスは利子所得の大きさに応じて0~45%の段階的分離課税。
ドイツは26.375%の分離課税(総合課税を選択可)、フランスとスウェーデンは30%の分離課税(フランスは総合課税を選択可)。
海外と比べると、日本の金持ちが圧倒的に優遇されていることがわかりますよね。

ところで、日本の再分配「後」の格差の広がりは抑えられていると先述しましたが、実はここにも大きな問題が存在しています。
しかも2つもです。

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