株式会社ファイブスターズ アカデミー
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東大名誉教授の畑村洋太郎は、言わずと知れた「失敗学」の権威。
もちろん、彼の著書にはあの有名な「ハインリッヒの法則」も紹介されています。
アメリカの損害保険会社の技術・調査部の副部長だったハーバート・W・ハインリッヒは、「1件の重大災害の陰には29件のかすり傷程度の軽災害があり、その陰にはケガには至らないもののヒヤリとしたり、ハッとした事例が300件ある」という、お馴染みの論文を発表したのは1929年。
すでに100年近く経っているのに、現在でもこの法則が金科玉条のごとく語られていること自体、事故を防止するのがいかに難しいかを証明しています。
なぜ、事故防止はそんなにも難しいのでしょうか。
それは、サラリーマンなら誰でも経験することですが、悪い報告ほど上に上げにくいからです。
この事実に目を向けずに、いくら「ハインリッヒの法則」を説いたところでそれは無駄な努力というものです。
では、どうしたら悪い報告でも上に上げやすくなるのでしょう。
畑村は、アメリカに学ぶべきだと主張します。
アメリカの組織は、失敗をした個人の責任を問うよりも、その失敗を組織全体で活用することを考えます。
だから、個人の免責を条件にして真の原因をあぶり出す「司法取引制度」が整備されています。
この制度は失敗した当事者に免責、つまり罪に問わないか、あるいは罪を軽減する保証を与え、それと引き替えに真相を語らせるというシステムです。
当然のことながら、内部告発者を守る法律も整備されています。
一方で、意図した失敗や予想できた事態への対策を怠った、所謂「未必の故意」に対しては重罰が課せられることもあります。
一般に「制裁的賠償」とか「懲罰的賠償」と言われる制度です。
日本に足りないのはこの考え方ではないでしょうか。
日本で叱責の対象となるのは、いつも個人です。
組織が対象になることはほとんどありません。
時々、直属の上司が管理責任を問われるケースもありますが、失敗の原因が組織にあるという視点から問題が掘り下げられることは極めて稀です。
日本には、失敗体験を隠そうとする文化があるのかもしれませんね。
思い起こせば私が若手社員だった頃、飲み会は苦痛以外の何者でもありませんでした。
上司や先輩からコンコンと聞かされるのは、終わりのない説教か過去の成功体験。
でも、その自慢話はその人だからこそできたことだったり、その時代だからこそ通用したものばかり。
失敗体験を話す人はいませんでしたが、冷静に考えると失敗体験というのは組織の知見を高めるための「教訓」として大いに役立つはずです。
中には、成功体験よりも多くの教訓が内在しているケースだってあります。
失敗の原因を掘り下げていくことは、同じ失敗を繰り返さないという効果だけでなく、別の失敗の要素をあぶり出すことにも貢献できるのではないでしょうか。
トヨタでは、現場で起こった失敗とそこから学んだ教訓を記録する「失敗ノート」というものをつけている人が大勢いるそうです。
つまり、失敗体験を考察することはリスクマネジメントに繋がるのです。
そう考えると、組織として語り継ぐべきは、「成功体験」ではなく「失敗体験」の方です。
重要なのは「ハインリッヒの法則」の数字を覚えたり、失敗例を体系化する手法を学ぶことではありません。
失敗を個人の問題として片付けるのではなく、組織の問題として捉える姿勢です。
失敗を気軽に開示できる風土を作ることです。
失敗を汲み上げるシステムを作ることです。
もっと言うなら、失敗に至る前の「失敗未遂」を吸い上げるシステムを作ることです。
それが出来ない限り、所詮「失敗学」は学術の世界における“お伽噺”に過ぎません。
ビジネスの「現場」は、学問が想定している「場面」とは異なります。
特に考慮しなければならないのは、失敗に関係した人間が抱えるストレスの問題です。
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