株式会社ファイブスターズ アカデミー

まずはお気軽に
お問い合わせください。

03-6812-9618

5☆s 講師ブログ

GAFAの税逃れ(3)

アップル、アマゾンと見てきましたが、グーグルはどのような節税対策をとっているのでしょう。
グーグルのスキームも、アップルやアマゾンと大して変わりません。

税率が極端に低いシンガポールに本部を置いて、世界中の子会社の利益をそこに集中させます。
ところが、これに真っ向から切り込んだのが東京国税局。

シンガポールの親会社にコンサルタント料を支払っていると言っても、実態がない場合は是正命令が出せるとして、2019年にグーグルの日本子会社である「グーグル合同会社」に税務調査に入りました。
追徴額は、過少申告加算税含め約10億円。

グーグルの場合、アマゾンとは違ってグーグル合同会社は日本の子会社だったため、支払いに応じざるを得ませんでした。
グーグルのように直接サービスを提供するのではなく、サービスの基盤だけを提供する会社を「プラットフォーマー」と呼びますが、このような業種の主な収入源は広告です。

ということは、極端な話、日本に子会社や事業所を置かなくても事業の展開は可能です。
もしそうなったら、日本国内向けに作られた広告であっても、日本企業が支払った広告料はそっくりそのまま海外の企業の収入になってしまいます。
そもそも、世界を跨ぐような事業展開など、誰ひとり想像していなかった時代に作られた税制は実情にそぐわないものとなっているのです。

さて、GAFAの最後を飾るのは、最近社名を「メタ」に変更したフェイスブックです。
ここの手口も似たようなものです。
税率が12.5%のアイルランドに本社を置いて、タックスヘイブンのケイマン諸島に資金を動かします。

フェイスブックは、2014年にイギリスで自社株上昇分も含めて、従業員に一人平均3,866万円を支払ったそうですが、その時イギリスに納めた法人税はたったの80万円。
もはや、「節税」の域を超えているような気がしますよね。

この年、フェイスブックは世界全体の売上が125億ドル、利益は29億ドルでしたが、イギリスの利益は全体の1割程度と見られています。
と言うことは、逆算すると世界中で支払った法人税の総額は800万円くらいということになるのでしょうか。

以上で、GAFAの限りなくブラックに近い税逃れ対策の話は終わりですが、ついでにヨーロッパで大問題になり、イギリスではデモまで発生したスターバックスの巧妙な節税策を紹介しましょう。
スターバックスは、イギリスで700店舗ほど展開していますが、税金はほとんど払っていません。

そのカラクリは「移転価格」という手法にあります。
まず、スイスの子会社がコーヒー豆を輸入します。
それをオランダで煎った後、イギリスの子会社が高値で買い取ります。
高値なので利益は出ません。
だからイギリスに税金を払う必要はありません。

スイスの子会社の方は利益が出てしまいますが、スイスの税率はイギリスの約半分。
他に、税率の低いオランダに知的所有権の管理会社を置いて、そこに高額のロイヤリティーを払っています。
グループ全体の利益をオランダに集中させるのです。
これをイギリス議会が徹底的に追及したため、スターバックスはしぶしぶ税金を払いましたが金額はごくわずかでした。
イギリスは税率が高いため、グローバル企業は挙って徹底的な節税策に取り組んでいます。

2011年にGAFAがイギリスに支払った納税額は以下の通りですが、これを見ればイギリスの税務当局が激怒する理由もわかろうというもの。
アップルは売上9,400億円、利益は3,000億円だったので本来の税額は800億円になりますが、実際に納税した額はわずか1,440万円。
アマゾンは、本社をルクセンブルクに移した影響で納税額はゼロ。
グーグルは本来の納税額310億円に対して、支払ったのは8億円あまり。

フェイスブックは、本来の納税額30億円のところ3,300万円。
つまり、イギリス国民が支払ったお金は税金としてイギリスに還元されることもなく、大半はアメリカの株主の手に渡っていました。

そうです。

巨大グローバル企業が世界中から吸い上げたお金の大半は、最終的に大株主の元に届けられているのです。

昨年宇宙旅行をして話題になったアマゾンの元CEOジェフ・ベゾスの保有資産は、2021年7月末時点で2,110億ドル。
日本円にして約23兆円。
東京都の予算が15兆円ですから、その規模がわかろうというものです。

富裕層が、その資産に見合った税金を払っているのなら納得がいきますが、ニューヨークの非営利報道組織プロパブリカの調査によれば、2007年と2011年のジェフ・ベゾスの払った所得税はゼロだそうです。
また、テスラのイーロン・マスクも2018年の所得税はゼロだったといいます。

ちなみに、イーロン・マスクの場合は、保有するテスラ株を売却する直前の総資産が34兆円に達していました。
もちろん、これは人類史上最高額。
徹底した税逃れ対策が、この富をもたらしたわけです。

プロパブリカの調査によれば、世界の富裕層上位25人の総資産は2014年からの5年間で43兆円も増えたそうですが、納めた所得税の総額はたったの1兆4千億円。
実質的な税率を逆算すると3.2%になります。

一方、アメリカの平均的な世帯は、年間所得の14%を税金として納めているそうです。
こんな理不尽な話があるでしょうか。
思えば、中世ヨーロッパの貴族が毎日遊んで暮らすことができたのは、貧しい農民や労働者から富を搾取していただけでなく、税金を払っていなかったからです。

ジャケット写真にあしらわれた巨大な星条旗のせいで、日本では「アメリカ礼賛の歌」と思われている、ブルース・スプリングスティーン84年の大ヒット曲『ボーン・イン・ザ・USA』。
しかし、その歌詞は怒りと懐疑と、そして哀しみに満ちた実に殺伐としたものです。

「救いのない町に生まれ落ちて
物心ついたときから蹴飛ばされてきた 殴られつけた犬みたいに、
一生を終えるしかない身を守ることに、
ただ汲々としながら俺はアメリカに生まれたんだ。
それがアメリカに生まれるということなんだ」

ブルース・スプリングスティーンがあのダミ声で訴えたのはアメリカ礼賛などではなく、アメリカに生まれたことの「不幸」でした。
「こんなアメリカでいいのか!」というブルースの悲痛な叫びからすでに40年近く経ちますが、格差の方は広がる一方。

OECDから発表された驚くべきデータがあります。
2016年、アメリカの上位1%の人が保有する富は、なんと全体の42.5%を占めています。
上位10%では79.5%。
一方、下位の60%の人々の富は合計しても2.4%にしかなりません。

もう一度言いますね。

上位1%の超富裕層がアメリカ全体の富の半分近くを保有しています。

上位10%だと富の8割。

一方、下位6割の人々の富をかき集めても3%にも達しません。

もはや、アメリカに生まれることは「悲劇」以外の何者でもありません。
私たちはもっと歴史から学ぶべきです。
不幸な歴史が繰り返される前に、一刻も早く手を打つべきです。

初めての方へ研修を探す講師紹介よくある質問会社案内お知らせお問い合わせサイトのご利用について個人情報保護方針

© FiveStars Academy Co., Ltd. All right reserved.