株式会社ファイブスターズ アカデミー
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土屋がもうひとつの柱とした、「エクセル経営」とは一体どんなものでしょう。
作業服がメインだったそれまでのワークマンで、最も重視されたのは経験値でした。
経験が豊富で、加盟店の店長と上手にコミュニケーションがとれるSV(スーパーバイザー)が優秀と評価されていました。
ところが、ワークマン・プラスの客層はこれまでとは全く違います。
過去の経験は役に立ちません。
求められるのは、データを使って店長に提案できる能力です。
そのため社員向けのデータ分析講習を、階層別に何回も開催しました。
もちろん、社長も一緒に受講します。
講習を受けた社員たちはエクセルに夢中になりました。
あるSVは、ひとりで「未導入製品発見システム」を作り上げてしまいます。
店番号を入力すると、その店で扱っていない商品が全て表示されるのですが、他店で売れている順番に出てくるところがミソ。
「この製品を発注しないと、年間で80万円も損しますよ」
そう言われて動かない店長はいません。
また、「サイズ変動発見システム」も在庫の減少に大いに寄与しました。
製品を入力すると、S、M、L、LL、3Lの各サイズの売行き分布図が地域別に表示されるのです。
製造したサイズと、売れているサイズの差は一目瞭然。
データを駆使することで、最も変わったのはSVでした。
気が弱くて店長に強くお勧めできなかったSVが、人が変わったように成果を上げ始めます。
たとえ口下手なSVであっても、彼の言うことを聞くと儲かるということに店長が気づいたからです。
この改革のすごいところは、トップダウンで行われたのではないという点です。
土屋は常日頃から、「私の考えは50%間違っている」と公言して憚りません。
だから、部下は忖度なしに意見をぶつけてきます。
あなたの会社で若手が自分の意見を言わないのは、「管理職は正しい」という不文律があるからではありませんか。
人は誰でもミスをします。
管理職だって例外ではありません。
管理職は全知全能の神ではないのです。
そういう意味では、管理職はもっともっと“スキ”を見せるべきかもしれませんね。
ワークマンの場合、ミスを許す風土も徹底しています。
ワークマンでは、新規店舗はまず直営店として開店し、一定の売上が確保できるようになってからFC加盟店に渡すシステムなのですが、直営店は本社の1年目と2年目の社員が担当します。
この店は「研修ストア」と呼ばれ、驚くべきことに業績は管理されません。
新入社員に売上を期待してもムダ、それより個々の能力を伸ばした方がいいと考えるからです。
人材育成のために売り上げを捨てる。
徹底してますよね。
研修ストアに配属された店長は、データを見ながら小さな実験を繰り返します。
データ分析でわかるのは相関関係だけ。
因果関係はわかりません。
そこで、因果関係を解明するために様々な実験を繰り返すのです。
失敗も大歓迎。
なぜなら、ある命題に対して10個の仮説がある場合、1個の失敗は仮説を9個に減らすことに貢献するからです。
かつての作業服中心のワークマンでは、マネキンを置いていませんでした。
ところが、入社2年目の社員が段ボールなどで簡易マネキンを作り、コーディネートをして目立つ場所に置いてみたところ、これが大ヒット。
今の若手は言われたことしかやらないとよく言われますが、もしかしたらその原因は管理職にあるのかもしれませんよ。
ワークマンのような「しない経営」は無理だとしても、もしかしたらあなたのマネジメントは「しすぎるマネジメント」になっていませんか。
「しすぎるマネジメント」は、部下にとって結構なストレスになっている可能性があります。
今一度、ゴールを確認しますね。
会社が育成したいのは、「失敗しない」部下ではありません。
「自分の頭で考えて自ら動く」部下です。
具体的に言うと、上司に対して「あなたはAとおっしゃいますが、データを見る限りBですよ」と言える人材です。
そして、それを実現するためには、上司もまた「そうか。じゃあBだな」と言えるだけの度量を持たなければならないということです。
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