株式会社ファイブスターズ アカデミー
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ワークマンには、「頑張ってできても意味がない」という哲学があります。
死ぬほど頑張って四半期の売上目標を達成したところで、そんなことは何の意味もないと土屋は断言します。
会社がやるべきことは、個人の頑張りに頼ることではなく、誰にでもできる仕事として標準化を進めることです。
だから、「短期目標」などは、社員にプレッシャーをかけるだけの無駄な努力でしかないというのです。
社員にプレッシャーをかけてできる程度の「強み」は、数十年に渡ってマーケットで耐えられるような「本物」の強みではありません。
そうではなく、「大きな目標」に向かって社員全体で議論しながら自発的に仕事をしてもらう、これが土屋の理想です。
「しない経営」とは、そこで働く人の立場から見れば「されない経営」ということになります。
つまり、無用な干渉をされないのでストレスがありません。
従業員や加盟店は、自発的に楽しく仕事ができるので結果的に売上がアップします。
本当に理想的な好循環が生まれていますよね。
でも、こんな常識はずれの経営が通用するのは、ワークマンがいるマーケットが競合の少ない「ブルーオーシャン」だからこそ。
作業服の市場規模は全体で約4,600億円。
うち6割が法人相手なので、個人相手は4割しかありません。
法人の方が市場規模は大きいのですが、そこには競争相手が大勢います。
激しい価格競争もあります。
そこでワークマンは、あえて小さいマーケットの方を選んだのです。
「しない経営」とは、言い換えると「捨てる経営」のことでもあります。
ワークマンは拡大志向を捨てて、社員と加盟店、取引先、そして会社を最優先に考える「四方よし」の経営に集中しました。
その結果、ワークマングループの店舗数が880を超えるのに対し、業界第2位の会社は約50店舗。
ダントツのトップです。
しかし、そんなワークマンにも危機感はありました。
今後は、ネット企業との熾烈な競争が待っていると予想されたからです。
そんな時、2年間情報分析に徹していた土屋がいくつかの「異常値」に気づきます。
最初に検知した異常値は、「防水防寒スーツ」でした。
もともと、建設作業者や交通誘導員のために開発されたウェアですが、なぜか売り切れの店舗が続出します。
早速現場に行ってみると、購入しているのはバイクのライダーたちでした。
一般にライダー用の防水防寒着は数万円しますが、ワークマンのは軽量で湿気を逃がす素材を使っているのに上下組で7千円を切る価格設定。
冬場のツーリングには持ってこいの商品でした。
次の異常値は「ファイングリップシューズ」。
厨房で働く人向けに開発した滑らない靴ですが、これが妊婦に売れていました。
保湿性の高い「メリノウールショートソックス」は、登山家の間で大評判。
また、溶接工向けの「綿ヤッケ」は、火の粉が飛んできても燃え広がらないのが受けて、焚き火をするキャンパーたちのSNSで話題に上ります。
ワークマンの製品を、「作業服」ではなく「高機能ウェア」として捉えてみたら、そこに全く別の顧客層が浮かび上がってきたではありませんか。
そこで土屋は、アウトドアウェア中心の新業態「ワークマン・プラス」の展開に踏み切ります。
この時「しない経営」と並んで、もうひとつの柱としたのが「エクセル経営」でした。
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