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5☆s 講師ブログ

消費税はどこが間違いなのか(2)

なぜ政府は、法人税率や富裕層の所得税率を、何度も何度も引き下げ続けたのでしょう?
それは、消費税を導入した本当の狙いが、「直間比率の改善」にあったからです。
「直間比率の改善」とは、税収に占める直接税の比率を下げて、間接税の比率を上げることです。

消費税が提案された当初は、政府も導入理由として堂々とこの「直間比率の改善」を掲げていました。
当時、日本における間接税と言えば、酒やタバコ、ガソリン、印紙などにかかる税金だけ。
そのため、日本の税収に占める間接税の比率は、ヨーロッパの国々に比べると圧倒的に低かったのです。
だから、政府は直間比率の改善をできるだけ早く進めようと、消費税を導入する一方で直接税の税率を引き下げたのです。
これが、企業と富裕層に対する直接税である、法人税や所得税の税率を繰り返し引き下げた理由です。
その過程で、貧富の差が拡大することは誰の目にも明らかでした。

しかし、ここまで格差が拡がってしまうと、むしろ元々の狙いは、貧富の差を拡大することにあったのではないかと勘繰りたくなります。
でも、物事はそう簡単には進みませんでした。
そもそも、「直間比率の改善」という名目では世間の支持が得られません。
そこで、政府は別の理由を考えなければならなくなりました。
「財政健全化」などを経て、ついに「社会保障財源の確保」という絶好の言い訳にたどり着きます。
このお題目は、水戸黄門の印籠とするには最適でした。

でも、よくよく考えてみると、新しい税制を導入する理由がコロコロ変わるなんておかしな話ですよね。
さて、消費税導入の経緯はこの辺にして、いよいよ本題の検証に移るとしますね。
消費税は本当に社会保障費に充てられているのでしょうか。

高齢化が進んだことにより膨大な額に膨れ上がった社会保障費は、国民が負担する健康保険料などでは賄いきれず、国は国家予算から医療費や介護給付費などを歳出しています。
2019年の社会保障費の歳出額は34兆円。
これに対して消費税の国税分は19兆4千億。
これだけ見ると全然足りてません。

その不足分は法人税と所得税によって賄われています。
だから正確に言うと、消費税・法人税・所得税の3つの税で、社会保障費を賄っているということになります。
そもそも税金には色がついていないので、消費税を社会保障費に充てていることの証明などできるわけがありません。

しばしば、消費税が「目的税」であるかのように言う人がいますが、これは大間違いです。
目的税であるためには、税法において「○○の措置に要する費用に充てるため、✕✕を課する」と規定されていなければなりません。
ところが、国税には税法上、「普通税」とか「目的税」という区分は存在しません。
地方消費税については、社会保障費の費用に充てる規定(第72条の106第1項)は存在します。
しかし、社会保障費の費用に充てるために課税するという規定がないため、税法上はこれも「普通税」に区分されています。

つまり、消費税は社会保障費に充てられているという主張は完全に誤りなのです。

印籠には何の根拠もないのです。

さらに、財務省が発表した2021年の「国民負担率」は44.3%でした。
国民負担率とは、国民所得に占める「租税負担」と「社会保障負担」の割合のことですが、44.3%の内訳は「租税負担率」が25.4%、「社会保障負担率」が18.9%となっています。

消費税が導入された1989年(平成元年)はどうだったのでしょう。
この30年間でかなり高齢化が進んだわけですから、その分税金で賄う「租税負担率」の割合が増えていたら、消費税が社会保障費を支えていると言えますよね。

では、1989年の国民負担率を見てみましょう。

国民負担率は37.9%で、内訳は租税負担率27.7%、社会保障費負担率10.2%となっています。
なんと、30年間で租税負担率は微減となっているではありませんか。

その上、社会保障費負担率は急増しています。
つまり、支出が増えた社会保障費用を賄っていたのは「税金」ではなく、私たちが負担している「社会保障費」の方です。

あたかも、消費税が社会保障費用を支えるメイン財源であるかのような誤った主張は、一体どこから生まれてきたのでしょうか。
本当に不思議です。

租税負担率が微減しているのは、法人税と富裕層の所得税が減税されたためでしょう。
そのことを考えると、「消費税が社会保障を支えている」というデマが生まれた背景に、何か意図的なものがあるように思えてなりません。

ところで、案外知られていないことですが、私たちが負担している10%の消費税は、国に行く分(国税)と、地方に行く分(地方税)に分けられています。
先ほど「消費税の国税分」とか、「地方消費税」という表現をしたのはそのためです。
消費税率10%の内訳は国税7.8%、地方税2.2%です。

各地方自治体は、地方税収だけでは歳出を賄えないので、国から「地方交付税交付金」を貰っています。
その額およそ16兆円。
一方、消費税の税収は21兆円くらいですから、消費税収入全額を地方税にして、そっくりそのまま地方に渡してしまえばいいのにと思うのは私だけでしょうか。

その方が、「地産地消」の考え方にも合致しますよね。
しかも、そうすれば「地方交付税交付金」をゼロにもできるし、国が地方自治体に対して偉そうな態度をとることもなくなります。
それより何より、今後財務省が税率アップを画策することができなくなります。

ところが、まるで財務省の“まわし者”のように、消費減税どころか消費税の税率をもっと引き上げるべきだと主張する人がいます。
次回はこの「消費税増税論」を検証します。

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