株式会社ファイブスターズ アカデミー
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ここで、ちょっと脳細胞が情報を伝達する仕組みを見てみましょう。
ヒトの脳細胞は、「ニューロン」と呼ばれる神経細胞と、それを維持するための「グリア細胞」からなっています。
ニューロンは、細胞内の電位を変化させることによって情報を伝達するのですが、静止時には「静止膜電位」といって、細胞の内側は外側より電位的にマイナスに保たれています。
ここに何らかの刺激が加わると細胞膜上のナトリウムチャネルが開き、細胞の外からプラスのナトリウムイオン(Na+)が流入してきます。
すると、細胞内がプラスに帯電するので、「脱分極」といって細胞の内と外の電位の逆転現象が起こります。
これが細胞が「発火(興奮)」した状態で、専門用語では「活動電位」と呼ばれます。
この発火(興奮)は、軸索を通じて隣のニューロンに伝達されます。
受け取ったニューロンは同じ様に発火(興奮)することで、そのまた隣のニューロンに情報を伝えます。
このように、情報はニューロンを介して次々と伝達されていくのです。
一方、伝達を終えたニューロンは、次の刺激に備えて再び静止膜電位に戻る必要があります。
そこで今度は、細胞膜上のカリウムチャネルを開いて、細胞内にあるプラスのカリウムイオン(K+)を細胞外に流出させることで、細胞内の電位をマイナスに戻すのです。
このように脳のニューロンは、普段から忙しく細胞膜にあるナトリウムカリウムポンプを作動させて、内外の電位を調整しています。
この調整にも大量のエネルギーが使われています。
では、私たちが何も考えずに、「ボーッ」としている時はどうでしょう。
省エネモードだからエネルギーの消費量は少ないのかと思ったら、意外なことに集中している時よりも多いことがわかりました。
言い換えると、私たちは膨大なエネルギーを注ぎ込んで、わざわざ「ボーッ」としているのです。
なぜなのか、これもわかっていません。
現代の科学で解明できないことを「超常現象」と呼んだりしますが、そういう意味では脳の中で起こることのほとんどは「超常現象」です。
因みに、「幽体離脱」などは簡単に再現できるそうです。
スウェーデンのカロリンスカ研究所のエアソン博士はこのような実験をしました。
まず、ビデオカメラで被験者を背後から撮影し、その映像を立体映写式のゴーグルを通じて、リアルタイムで被験者に見せます。
次に、棒などで1~2分ほど体をポンポンと軽く叩いてみたら、まるで魂が身体から抜け出して背後から自分を眺めているような不思議な感覚が出現しました。
また、スイスのジュネーブ大学のブランクらは、右脳の側頭ー頭頂接合部に電気刺激を与えたら「体外離脱」を経験できたと報告しています。
ラマチャンドランとサンドラ・ブレイクスリーの有名な著書に『脳のなかの幽霊』がありますが、脳はまさに「超常現象」の宝庫と言っていいでしょう。
ただ、脳の働きにはかなりの個人差があります。
イェール大学のフィン博士らは、MRIには必ずその人の脳の「クセ」が現れるので、画像を見ればどの被験者のものか分かると言います。
彼らによると、まるで指紋のようにその人固有の「脳紋」が見てとれるのだそうです。
本当に脳は謎だらけですね。
さて、「ボーッ」とする話に戻りますが、なぜ大量のエネルギーが必要なのか、その理由を解明する手がかりがわかりつつあります。
「デフォルト・モード・ネットワーク」です。
「ボーッ」としている時、脳内の内側前頭前野から後部帯状回、楔前部、そして下部頭頂小葉へと繋がる脳神経の束が活性化することが、fMRIの解析により明らかになりました。
これが「デフォルト・モード・ネットワーク」と呼ばれるものです。
この時、「マインドワンダリング」という現象が起こります。
日本語に訳すと「心の散歩」。
実はこの状態こそ、私たちが何かを「閃く」時と同じなのです。
なんと、閃きは「ボーッ」としている時に起こるのです!
この辺のメカニズムについても、いずれ解き明かされる日が来るでしょう。
いずれにせよ、私たちが一息入れようと仕事や家事の手を止めて、コーヒーを飲みながらぼんやりすることは大変意味のある行為です。
なぜなら、その瞬間も脳は新しい閃きを求めて、今まで以上に活性化しているわけですから。
私たちは考えを改めなければなりません。
「ボーッ」とすることは決して悪いことではないのです。
少なくとも、5歳のチコちゃんに、あれほどこっぴどく叱られるようなことではないはずです。
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