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5☆s 講師ブログ

新聞は消滅してしまうのか(2)

その本とは2015年に上梓された『朝日新聞―日本型組織の崩壊―』です。
著者は「朝日新聞記者有志」。
明らかに内部告発の書です。

これによると、朝日新聞に入社した新人の記者人生というのは、5年に渡る支局勤務の後、本社のどの部署に配属されるかでほぼ決まってしまうそうです。
花形部署は政治部、経済部、社会部の所謂「政経社」。
エリートにとっては「政経社」以外の部署は、出世街道から外れた“掃き溜め”なのだそうです。

いくら何でも“掃き溜め”は言い過ぎだろうと思っていたら、「政経社」以外の部署は給与体系が低く設定されているそうです。
“掃き溜め”は本当でした。

しかし、支局の若手記者が次にどこに配属されるかは、支局長の胸先三寸で決まります。
社員の人事の評価は、13段階という途方もなく細分化された格付けによりランク付けされています。
この評価体系は、社内では“カースト制度”と呼ばれているそうです。

“掃き溜め”だとか、“カースト制度”だとか、およそ報道機関とは思えないくらい差別意識が蔓延っていますよね。
こんな人たちが、いじめだとか人種差別だとか、果ては性差別を批判する記事を書いていたとは思ってもいませんでした。

2021年2月、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森会長が、日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会で「女性理事を選ぶってのは、文科省がうるさく言うんです。だけど女性がたくさん入っている理事会は時間がかかります」と発言しました。
マスメディアは、世界標準から大きく外れる「女性差別発言」であると報道しましたが、当時の新聞や通信社の女性役員比率はたったの3%。
新聞協会や民放連となると、女性役員はひとりもいません。
在京テレビ局の報道・制作部門に至っては、女性の局長さえいないというのが現状です。
女性登用だとか人事の透明性だとか叫ぶのなら、まずは自分たちの組織から始めるべきではないでしょうか。

ところが、業界の女性登用率の低さがネットニュースに取り上げられたとたんに、マスメディアは一斉に「女性差別発言」という表現を「女性蔑視発言」に変えてしまいました。
この瞬間に、森の発言はメディアの女性差別問題とは全くの別物になってしまったわけです。
見事にブーメランを回避したつもりでしょうが、世間ではこのような論法を「詭弁」と呼びます。

朝日新聞の人事制度の話に戻りましょう。
どんなに評価ランクを細分化したところで、そのランクは所詮考課者である上司の主観によって決まります。
そのため、ご多分に漏れずゴマ擦り人間が増えていくことになります。
ところが、朝日の場合はちょっとレベルが違うのです。

なんと、毎日顔を合わせている支局長に、中元や歳暮を贈る若手もいるそうです。
本社の部長クラスが支局に来訪したりすると、もう大変。

夜の宴会では、部長の近くの席が奪い合いになります。
中には休日を利用して上京し、異動を希望する本社部署の管理職の自宅を訪問して、自分の売り込みに精を出す者まで出る始末。
ここまで歪な形の出世競争は、聞いたことがありません。

こんな凄まじい出世競争を展開する中で、絶対に避けなければならないのはマイナス評価。
特に「誤報訂正」は致命傷です。

そのため、誤報であることが明らかであっても、記者は絶対に認めるわけにはいきません。
もちろん、管理責任を問われるデスクも必死で揉み消しに走ります。

朝日新聞は、従軍慰安婦に関する吉田清治証言の誤報問題を、長年に渡り誤報と認めることなく放置してきましたが、朝日の社風を知る者にとっては、これは至極当たり前の日常風景なのだそうです。
しかし、従軍慰安婦問題だけではありませんでした。
2014年、朝日新聞は更なる誤報を発してしまいます。

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