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5☆s 講師ブログ

日本語教(4)

かつて、鈴木孝夫がアメリカの大学で日本語を教えていた時のことです。
鈴木は、学生たちが非常に攻撃的な態度をとることに驚かされます。
私たち日本人は、外国の話を聞くと「そんな考え方もあるのか」とか、「私たちも見習った方がいい」といった感想を持つことが多いもの。

ところが、アメリカ人学生にはそのような態度は一切見られず、とにかく徹底的な日本批判、相手攻撃に終始したというのです。
アメリカでは、ソ連が人工衛星の打ち上げに成功したとたんに、大学でロシア語学習が一大ブームとなり、なんと月謝免除の措置まで取られました。
その後日本が高度成長期を迎え、日本車や日本製の家電がアメリカ中を席捲すると日本語ブームが起こり、そして現在は中国語がブームとなっています。

アメリカという国は、アメリカの覇権を脅かす国が出てくると、激しく対抗心を燃やしてその国のことを徹底的に学ぼうとするのです。
なぜかというと、その国を叩き潰すためです。
そこには、その国の文化をリスペクトするなどという甘い考えは露ほどもありません。

これはアメリカ以外の国も同じです。
かつて、毛沢東主義の支配下にあった中国でロシア語を6年間学んだという女性が、鈴木の研究室を訪ねて来たことがあります。
ところが、ロシア語の書物を与えてもほとんど読めませんでした。
なぜなら、彼女が学んだロシア語の勉強とは、毛沢東語録をロシア語で暗唱したり、中国の偉大な歴史をロシア語で学ぶというものだったからです。

中国にとってロシアという国は、いつ攻めてくるかわからない危険きわまりない隣国です。
中国に限らず、大陸国家にとって隣国というのは、最も警戒しなければならない仮想敵国なのです。
決して心を許してはなりません。
だから、「お手本」にするわけにはいかないのです。

世界の歴史は、侵略の歴史でもあります。
言語は、侵略の歴史と切っても切れない関係にあります。

使用する人の数が1億人を超える言語を「大言語」というと言いましたが、日常生活で英語を使う国は世界中で50以上、フランス語を社会の重要な言語とする国は約40、スペイン語は約30でロシア語は20カ国あまり。
これらの言語が、なぜこれほどまでに広く普及したかというと、かつてこれらの国々が世界中で植民地支配を展開したからです。
侵略という人類の黒歴史こそが、大言語が普及した真の理由です。

しかし、日本の場合、外国や他民族から武力で支配された経験はありません。
太平洋戦争では敗戦を経験しますが、支配者が日本を植民地にすることはありませんでした。
連合軍の占領下にあっても、支配者の言語が強要されることはありませんでした。

いつの時代においても、日本にとって外国とは警戒すべき仮想敵国などではなく、謙虚な態度で接して何かを学ぶべき「お手本」として存在してきたのです。
そんな国は日本だけです。
古代の漢文、徳川期のオランダ語、そして明治期に始まる英独仏語のすべてが、日本の進歩や発展に多大な貢献をしてくれました。

奈良時代に、唐の都西安を模して平城京が作られたことは習いましたよね。
碁盤の目状に整備された道路など、何から何まで西安そっくりな都市でしたが、ひとつだけ真似されなかったものがあります。
都を囲む強固な城壁です。

日本は四方を海に囲まれていたため、外国を恐れる必要がなかったからです。
柔軟な思考を駆使して、取り入れるべきものと取り入れる必要がないものを取捨選択していたわけです。

でも、現在はどうでしょう。
日本は今や、世界有数の先進国になりました。
もはや、世界に学ぶという立場ではなく、世界に向けて様々なことを発信すべき立場にあります。

しかし、国連など国際会議の場では、自国をアピールするのが下手だとよく言われます。
これからの日本は、世界に向けて日本と、そして日本語の良さを積極的に発信し、日本を理解してもらう努力をするべきではないかと鈴木孝夫は主張します。

そこで鈴木は、日本語という素晴らしい大言語の普及活動のために、「日本語教」という“新興宗教”を提唱しました。
私もこの宗教には大賛同です。

しかし、その一方で、不安に思うこともあります。
最近の日本語の乱れ具合、廃れ具合を目の当たりにすると、この新興宗教の洗礼を最初に受けなければならないのは、他ならぬ私たち日本人なのではないかと。

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