株式会社ファイブスターズ アカデミー
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日本語のもうひとつの弱点とは、音声面が非常に貧弱なことです。
どういうことかと言うと、単音節の種類が少ないことです。
単音節は、「V(母音)」と「C(子音)」の組合せで作られるのですが、日本語には2通りの組み合わせしかありません。
ひとつは「あ(A)」のように、「V(母音)」だけのもの。
もうひとつは「ま(MA)」のように、「C(子音)」に「V(母音)」がひとつつくタイプです。
日本語には、「V」か「CV」の2通りしかないのです。
ところが、英語の場合は「 spin 」という単語のように、「CCVC」という組み合わせも可能です。
このように、頭にCが2個連続でついたり、音節をCで終らせたりすることも可能です。
これが「 split 」という単語になると「CCCVC」。
まさに自由自在ですよね。
このため、異なる音韻の総数は英語なら45、ドイツ語なら39もあります。
ところが、日本語の場合はわずか23。
これが、日本語は音声面で貧弱だという理由です。
そのため、日本語にはある不便な現象が起こります。
耳から聞こえる音声は同じでも、文字に書き表すと全く違うという、所謂「同音異義語」が数多く存在するのです。
もしかしたらこれが、日本で必要以上にダジャレが横行している原因ではないでしょうか。
この特徴は、外国語には見られないものです。
「いや、英語にだって同音意義の言葉があるだろう」と、思った人もいるでしょう。
確かにあることはありますが、日本語ほど数が多くありません。
なぜなら、そこにはある原理が働いているからです。
フランスの言語地理学者H・J・ジリエロンは「同音衝突回避の原理」という理論を発表しました。
それによれば、言葉というのは常に変化していくものですが、2つの違う意味の言葉が同じ形の音韻になりそうな時は、どちらか一方が姿を消すというのです。
ただし、これには例外があって、それぞれの言葉が使われる文脈が全く違う場合は、耳で聞いても混同される恐れがないので共存できるそうです。
例えば、英語の「 bat 」。
「こうもり」か「バット、棍棒」か、どちらの意味かは使われる文脈からわかりますよね。
ところが日本語では、話し言葉で「かがく」といっても、「科学」も「化学」も似たような文脈で使われたりします。
他にも、音声で「はいすい」と聞いても、「排水」か「廃水」か、あるいは「配水」なのかすぐにはわかりません。
衝突回避の原理は日本語には通用しないのです。
そこで私たち日本人は、相手の話を正しく理解するために、無意識のうちにある工夫をしています。
それは、耳で聞いた日本語を頭の中で文字に変換し、映像として捉えることで、この文脈ではどの文字が最適なのか判断しているのです。
仮に外国語を「ラジオ型」とするなら、日本語は「テレビ型」だと鈴木は言います。
失語症研究の権威である笹沼澄子は、音声レベルで特定の言葉を認識できなくなった失語症患者を日米で比較して、実に興味深いことを発見しました。
アメリカ人患者に、認識できなくなった言葉のアルファベット綴りを、紙に書いて提示しても認識できません。
しかし、日本人の患者に漢字で提示したら、意味が理解できたというのです。
日本人は、日常の言語伝達を脳の中の2ヵ所、すなわち「音声処理」と「映像処理」の2つの部分を同時に使って行っている証拠です。
「テレビ型」とはこういうことです。
確かに私たちは、日常会話でも同じ読み方の単語が複数ある時は、無意識のうちにその漢字を頭に思い浮かべ、文脈を辿ることで最適な漢字の方を選び出していますよね。
瞬時のうちに、かなり複雑なことをやっているわけです。
「だから日本人は優秀だ」などと言うつもりは毛頭ありませんが、日本語で会話するというのは、相当複雑な脳内作業を伴う行為であることは間違いありません。
人間はモノを考える時、必ず母語を使って思考します。
この複雑極まりない日本語を自由自在に操る能力こそが、戦後日本が極めて短期間で復興を果たしたことや、数多くのノーベル賞受賞者を輩出している理由のひとつかもしれません。
それに加えて、鈴木孝夫は外国に学ぼうとする日本人の姿勢を高く評価します。
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