株式会社ファイブスターズ アカデミー
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日本人は、日本語を捨てようとしているのでしょうか。
大晦日の紅白歌合戦と言えば国民的行事のひとつですが、昨年の出場者のうち名前がアルファベット表記の歌手やグループの割合は4割を超えていました。
でも、これはまだいい方で、書店に並ぶ雑誌名などはほとんどがアルファベット。
日本語は、このまま廃れてしまう運命にあるのでしょうか。
「日本語教」を提唱した言語学者の鈴木孝夫は、日本語ほど素晴らしい言語はないと主張しました。
世界では現在77億を越える人々が約6,000種もの異なる言語を使っているそうですが、使用する人の数が1億を超えるという「大言語」は10前後しかありません。
もちろん、日本語もその大言語のひとつです。
それなのに日本人は、日本語を出来の悪い「欠陥言語」と考えて、明治の開国以来、西洋言語を取り入れなければ世界の文明から取り残されると考えてきました。
明治の初め、初代文部大臣に就任した森有礼(ありのり)は、驚くべきことに英語を国語にしようと主張します。
文豪志賀直哉も、戦争に至ったのは日本語の持つ不完全さと、漢字学習の効率の悪さのせいだと決めつけ、フランス語を国語にすべしと提案しました。
日本語を低く見る風潮は、今に始まったことではなかったのです。
現在でも、「グローバル化」の名のもとに、日本語はますます軽んじられる傾向にあります。
しかし、世界を見渡すと、自国語を大切にしない日本人というのは、世界に例を見ない不思議な民族であることがわかります。
世界中の民族は、おしなべて自国語を大切にします。
それなのに日本人は、なぜ自国語である日本語を粗末に扱うのでしょう。
それは日本が、他国の侵略によって自国語を禁じられるという不幸な歴史を持たないからです。
そのことに触れる前に、その歴史とも関係する日本語特有の厄介な特徴についてお話ししなければなりません。
外国人が日本語を習得する際に大変苦労するのが、「音読み」と「訓読み」。
日本語は、同じ漢字でも2通りの読み方があります。
世界中で、同じ文字に2つの読み方がある言語は日本語だけです。
かつてアメリカの言語学界では、「言語は音声がすべて」という「構造言語学」が主流でした。
L・ブルームフィールドという学者は、「文字というものは人物を写した写真のようなもので、写真にどう写されようが人物に全く変化がないのと同じで、どんな文字を使おうと言語そのものは全く変化しない」と述べています。
この主張が正しいことは、言語の生い立ちを見ればわかります。
人類が最初に編み出した言語は「話し言葉」でした。
その後随分経ってから、話した内容を記録に残す必要が生じ、便宜的な記号として「文字」が生まれました。
「話し言葉」が先で、「文字」が後です。
これが、「話し言葉が全て」と言われる理由です。
ところが、日本語の場合は事情が異なります。
なぜか、ひとつの「文字」に対して、「音読み」と「訓読み」という2つの読み方が存在しています。
これはどういうわけでしょう。
どういう経緯で2つの読み方が生まれたのでしょう。
実は、2つの読み方が生まれた経緯こそ、日本が他国から侵略されなかった歴史と深く関係しているのです。
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